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ちぢみほうれん草(寒じめほうれん草)の栽培方法に興味があります

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ちぢみほうれん草(寒じめほうれん草)の栽培方法に興味があります

昨年就農したばかりの農業者です。

農家を引退された方の土地を借りて、ほうれん草の栽培をはじめました。

まだそれほど収量も多くないので、道の駅に出荷したのですが、思ったよりも売れませんでした。

一方で、ちぢみほうれん草の売れ行きがよかったと道の駅の担当者から聞き、うちでも栽培してみようかと考えています。

ちぢみほうれん草は冬の寒さにより糖度が増すとのことですが、普通のほうれん草栽培との違いはどこにあるのでしょうか?

渡會那央

わたらい農場 代表

ちぢみほうれん草は、10日以上寒さにさらすと糖度がアップします

ちぢみほうれん草の特長


まず初めに「ちぢみほうれん草」が、特定の品種名ではないことを知っておきましょう。

収穫前に冷気に当てる栽培方法(寒じめ栽培)によって、意図的に葉を縮れさせたほうれん草のことを「ちぢみほうれん草」と呼びます。

まずはちぢみほうれん草の、味と栄養価の面での利点を説明します。

冷気に当たると糖度が増すメカニズム


ちぢみほうれん草は名前の通り、葉が縮れたような形をしています。

これは低温の環境下での生存戦略として変化したもの。

具体的には、寒さに対抗するために中に含まれる水分を減少させて、糖分を蓄積し凍結を防ぐのです。

糖分だけでなくうま味成分の「アミノ酸」が増加し、一方で苦味の原因となる「シュウ酸」は減少するため、味わいがより豊かになります。


味だけでなく栄養価もアップ


ほうれん草はもともと栄養が豊富な野菜です。

B1、B2、C、Eといったビタミン類のほか、β-カロテン、鉄分、亜鉛、カルシウムなどを含んでいます。

糖度が増すメカニズムと同様、寒さによるストレスがきっかけとなり、ちぢみほうれん草は栄養価もアップ。

特に「ビタミンC」含有量は、春収穫のものと比べて1.5〜2倍になります。


ちぢみほうれん草の栽培特性


次はちぢみほうれん草の栽培上の特徴を説明しましょう。

栽培時期:秋から冬にかけてじっくり育てる


まずは栽培時期についてです。地域と気候によりますが、一般地でのちぢみほうれん草の栽培適期は「12月~2月頃(高冷地は11月〜)」です。

秋まきや春まきほうれん草の場合、種まきから収穫まで、約1カ月というスピードで収穫します。

ほうれん草の生長は暖かい時期のほうがスピーディーで、寒い時期になるとゆっくりになる性質があります。

真冬に収穫するちぢみほうれん草は、秋の終わりから冬のピークまで100~120日ほどの時間をかけ、じっくり育てると良いでしょう。

なお、ほうれん草は最低温度「4℃」でも発芽でき、「氷点下10~15℃」でも育ちます。

温度管理のポイントはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培の温度管理について教えて。特に注意が必要なポイントは?



栽培方法:温度管理のためトンネル設置が必須


ちぢみほうれん草を収穫するには「寒じめ栽培」を行います。

「4℃以下の環境に10日以上」さらすことで、糖度やうま味が向上します。

温度調整はトンネル栽培で行うため、ちぢみほうれん草を育てる際には、必ず畑にトンネルを設置しなければなりません。

トンネルの役割や詳しい設置方法はこちらをご覧ください
ほうれん草を栽培したい!露地で育てるにはどうすればいい?ポイントは?



ちぢみほうれん草の育て方


ここからはちぢみほうれん草の栽培手順について、4段階に分けて説明しましょう。

1、土壌準備、畑作り


まずは種まき前1カ月から半月前をめどに、畑の土壌を整えておきます。

1カ月前に「苦土石灰(くどせっかい=土壌の酸性度を調整する資材)」と「堆肥(たいひ=糞などの有機物を微生物の力で分解した農業資材)」を入れてしっかり耕し、畝(うね=苗を植えるために土を盛って作る、細長く直線状の山)を立てましょう。

2週間前には元肥(もとごえ=栽培開始前にあらかじめ与える肥料)を入れておきます。

土壌作りの方法はこちらをご覧ください
ほうれん草栽培の土はどう作る?土壌調整で気をつける点を教えて



2、播種


土の表面にまき溝を作って種をまきます(=すじまき)。

溝の深さは1cm、種の間隔は2〜3cm程度が目安です。

できるだけ均一になるように種を置き、その後は土をかぶせてしっかり水やりしましょう。

マルチ栽培(地温や土壌水分を高めるために畝をフィルムなどで覆う栽培方法)の場合は、種まき前に土壌を資材で覆っておきます。

同時にトンネルも設置します。

畝に対してアーチ型に支柱を立て、防寒シートなどを被せてください。

播種の手順についてはこちらもご覧ください
ほうれん草栽培の播種する時期はいつ頃?方法やコツも教えてほしい



3、間引きと株間


収穫までに2回の間引きが必要です。

ちぢみほうれん草は中央から葉が開くように広がるので(=ロゼット型)、広めの株間が必要です。

最終的に10〜15cm間隔を確保するように調整しましょう。

間引きのタイミングや間隔についてはこちらをご覧ください
ほうれん草の間引きはどのタイミング?注意点も教えて



4、寒さに当てる頻度・方法


草丈が10〜20cm程度まで育ったら、2段階で冷気に当てます。

温度条件は、外気5℃、地温5~8℃の頃が一例です。

最初は日中のみ、トンネルのシートの左右を1週間から10日程度開けてください。

その後は終日開放します。

合計2〜3週間ほどで、ほうれん草の葉が縮れて厚くなります。

雨や雪が降る日、風の強い日は閉めておきましょう。

冬越し栽培についてはこちらもご覧ください
ほうれん草の冬越し栽培の方法は?品種や収穫のコツを教えて
ほうれん草を冬に栽培すると糖度があがる?品種選びやコツを教えてください



ちぢみほうれん草の品種


最後に、ちぢみほうれん草の品種について補足します。

低温伸長性、耐寒性のある品種を選ぶ


どんな品種でも寒さに当てればちぢみほうれん草になるわけではありません。

ほうれん草は現在ほぼ一年中栽培・収穫が可能ですが、寒い時期に向く品種と、そうでない品種とがあります。

「低温伸長性(ある程度温度が低い環境下でも生育する性質)」や「耐寒性」に優れたものが良いでしょう。


おもな品種例


現在はさまざまな種苗メーカーがちぢみほうれん草の品種を開発・販売しています。

例えば以下のようなものがあります。

・ちりめん法蓮草/中原採種場
・雪美菜(ゆきみな)02/雪印種苗
・寒味(かんあじ)、寒味・極/トキタ種苗
・朝霧、じっくり朝霧、冬霧7(セブン)/渡辺採種場

このお悩みの監修者

渡會那央

わたらい農場 代表

長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。

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