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ほうれん草栽培の土はどう作る?土壌調整で気をつける点を教えて

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ほうれん草栽培の土はどう作る?土壌調整で気をつける点を教えて

現在使っていない畑があり、そこでほうれん草栽培を検討中です。

しかし、この区画の土壌がほうれん草の栽培に向いているのかわかりません。

果菜類を中心に育ててきた畑ですが、しばらく休ませていたので、まずは土づくりからはじめなければと考えています。

そこで、ほうれん草栽培に最適な土壌を作るのはどうすればいいのか、また植え付けする段階でのポイントを教えてください。

渡會那央

わたらい農場 代表

ほうれん草栽培に酸性土壌は厳禁、1カ月前をめどに調整を

ほうれん草栽培に適した土壌とは


最初にほうれん草畑を作るのに、最適な場所や土壌について確認しておきましょう。

栽培に向くのは、涼しくて排水性の良い場所


ほうれん草の栽培に向いているのは「涼しくて水はけの良い場所」です。

日本で生産量が多いのは千葉県や埼玉県、群馬県などです。

これは収穫後に常温で保存すると傷みやすい作物であることから、消費量の多い都市の近郊で盛んに栽培されているためです。

冷涼な土地を好みますが、寒い地方や高原地帯などに限らず、全国各地で栽培されています。


酸性の土壌ではうまく育たないので、調整が必要不可欠


ほうれん草は酸性の土壌では生育しません。

ほうれん草が育つ土壌ph(土壌が酸性かアルカリ性かを表す数値基準)は「6.0~7.0ph」程度(=中性)。

これに対し酸性土壌のph値は「5.0~5.5」です。

「5.5」以下の酸性になると必要な栄養素が適切に行き渡らず、微生物の活動も制限されます。

さらに土壌に含まれるアルミニウムが溶け出しやすくなるのも問題です。

アルミニウムがほうれん草に対して持つ毒性が強く作用し、その結果生育を阻害してしまうのです。

日本の土は雨の影響でもともと酸性度がやや高いため、ほうれん草栽培の前には土壌調整が必要不可欠です。

土壌の適切なphや調整方法についてはこちらをご覧ください
ほうれん草を栽培する土壌phの適正範囲は?
ほうれん草栽培で石灰は必要?効果と正しい使用方法は?



ほうれん草畑の土作りの手順


続いてはほうれん草畑の土の作り方について、具体的な手順を説明しましょう。

植え付けの1カ月前:石灰を入れる


まずは「植え付けの1カ月まで」をめどに、土に石灰を混ぜ入れてください。

「苦土石灰(くどせっかい)」を混ぜて耕すことで、土壌の酸性度をほうれん草に最適な範囲へと調整します。


植え付けの1カ月前:堆肥を入れる


石灰と同じく植え付け1カ月前の段階で、堆肥(たいひ=糞などの有機物を微生物の力で分解した農業資材)を入れてください。

堆肥には「完熟堆肥」(かんじゅくたいひ=有機物を十分に発酵・分解したもの)、特に肥料成分があまり含まれていない牛ふんがおすすめです。


植え付けの半月~1週間前:元肥を入れる


ほうれん草は収穫までの期間が短く、追肥(ついひ=植物が生長する途中で不足する栄養を補うために与える肥料)が必須ではありません。

その分、元肥(もとごえ=栽培開始前にあらかじめ与える肥料)を適切に施すのがポイントです。

追肥がないので元肥は緩効性(ゆっくり効果が表れるタイプ)を選んでください。

植物の3大栄養素である窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)が均等に配合されたタイプを基準に、土壌中に多く残っている成分は控えめにするなど、バランスを調整して散布しましょう。

●施用量の一例(1平方メートルあたり)
・苦土石灰: 100~150g
・堆肥:牛ふんなどの完熟堆肥 500-800g
・元肥:緩効性化成肥料 150-200g



ほうれん草畑の畝の立て方


畑に畝(苗を植えるために土を盛って作る、細長く直線状の山)を立てる際の幅やポイントについては以下の通りです。

畝の幅や間隔、高さ


ほうれん草の畝幅は約60~90cm程度が一般的です。

この幅にすることで、株同士が適度な間隔を保ちながら生長できます。

またトンネル栽培(畝にアーチ形の枠を立て、フィルムや不織布などで覆って育てる方法)の資材も設置しやすいです。

畝の高さは5~15cmが基本ですが、排水が心配な場合はこれよりも高めにすると良いでしょう。

25cmほどで高畝栽培をする農家もあります。

畝と畝との間には、幅60~80cmを目安に、作業用通路を確保してください。


畝立てのポイント


良質なほうれん草をたくさん収穫するコツの1つが「一斉に発芽させること」です。

したがって種が均一にまけるように、間隔をきちんと計算して畑作りをするのが重要です。

土壌の水分を保つのにはマルチ栽培(=フィルムやシートで覆うこと)が、気温・湿度や風、直射日光などの影響を軽減するにはハウス栽培、トンネル栽培が有効です。

気温が低い時期には保温のために、不織布など(=被膜資材)をべた掛けしても良いでしょう。

季節や地域によって、マルチやトンネル、被膜資材を組み合わせるのに最適な畝幅を計算してください。

播種する時期や発芽を揃える方法についてはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培の播種する時期はいつ頃?方法やコツも教えてほしい
ほうれん草が発芽しないのはなぜ?上手に発芽させる管理方法は?

基本的な栽培方法や栽培特性についてはこちらをご覧ください
ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください



効率的にほうれん草を栽培するためのポイント


最後にほうれん草栽培の土作りにおける注意事項を確認しておきましょう。

収量アップや安定のためには除草作業と土壌診断がおすすめ


ほうれん草栽培の成功の鍵を握るポイントは、生育過程で草に負けないよう初期段階でしっかりと除草することと、正しい肥料の与え方です。

収穫までの期間が短いので、育てている途中で栄養の過不足を調整するタイミングはほぼありません。

畑の土の栄養バランスをしっかり把握して元肥や堆肥のバランスを判断しましょう。

そのためにも栽培前に土壌診断や土壌分析を受けるのがおすすめです。

地域のJAやホームセンターなどへ相談してみてください。


立枯病や萎凋病対策として土壌消毒を


ほうれん草は土壌病害が起こりやすい作物です。

土壌病害とは、土壌中に存在する病原体が根などから侵入したうえ、作物の中で増殖して起こる病気のこと。

例えばほうれん草では立枯病(たちがれびょう)や萎凋病(いちょうびょう)がその代表例です。

ほうれん草を栽培する前には土壌消毒をするのがおすすめです。

栽培のオフシーズンである夏季、特に梅雨の前後の時期に行うのが良いでしょう。

病害虫の対策についてはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培ではアブラムシをどう防ぐべき?必要な対策を教えて
ほうれん草が萎凋病に感染した場合の症状や対策を知りたい

このお悩みの監修者

渡會那央

わたらい農場 代表

長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。

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