ほうれん草は、いろいろな時期に栽培できることや寒さに強いと聞いて、栽培しようかと検討していますが、不安に感じていることがあります。
それは、生育の温度管理のことで、どのように管理すればいいのかわかりません。
ほうれん草栽培の温度管理について、特に気をつけるべき点や、季節ごとに必要な温度対策について知りたいです。
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渡會那央
わたらい農場 代表
ほうれん草は寒さに強く暑さに弱いので、栽培時期に適した品種を選びましょう
ほうれん草の栽培適温は15~20℃
まずは、ほうれん草栽培の温度管理の基礎知識について解説します。
ほうれん草栽培でポイントとなる時期・温度
ほうれん草が健康的に育つ温度帯は「15~20℃」。日本の平均気温でいうと、4月、5月、10月頃の気候がこの範囲にあたります。
基本的に冷涼な地域に向いており、高温には弱い性質を持っています。「25℃」を超えると生育が進みません。
夏に収穫されるものは高冷地が産地という場合が多いです。
発芽時期に気をつけたい温度
ほうれん草の発芽適温は「15~20℃」です。
発芽できる最低温度は「4℃」と低いため、秋まきや冬まきでも育てることが可能です。
逆に高温の限界は「25℃」。これを超える環境では発芽率が低下します。
発芽させるコツについてはこちらをご覧ください
「ほうれん草栽培の発芽のポイントは?芽出し処理についても教えて」
「ほうれん草が発芽しないのはなぜ?上手に発芽させる管理方法は?」
「ほうれん草を上手く発芽させるための温度条件とは?」
生育期に気をつけたい温度
生育期のほうれん草の適温は「10~20℃」です。
さらに「氷点下10~15℃」という厳しい寒さでも育つことが知られています。ただし0℃を下回ると根は伸びません。
発芽時期と同様、生育期も高温の限界は「25℃」です。
栽培上の特性についてはこちらもご覧ください
「ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください」
「初めてほうれん草を栽培しようと考えていますが、注意点を教えて」
栽培時期によって最適な品種が異なる
ほうれん草は現在、いろいろな作型(=栽培条件や栽培技術、もしくはその組み合わせ)で年中市場に出回っています。これは季節に応じた品種が豊富に開発されているためです。
ほうれん草の品種には「高温伸張性」と「低温伸張性」の2種類があります。
低温伸張性、耐寒性に優れた品種
秋まき栽培では「低温伸張性」の品種を選びましょう。ある程度温度が低くても生育するのが「低温伸張性」です。
また特に晩秋や冬に収穫する場合は、低温に耐える「耐寒性」の指標も確認しておくと良いでしょう。
秋冬の栽培に適した品種には以下のようなものがあります。
・「クロノス」(サカタ種苗)
・「スーパーヴィジョン」(トキタ種苗)
・「チェックメイト」(住化農業資材)
・「弁天丸」「福兵衛」(タキイ種苗) など
高温伸張性、耐暑性に優れた品種
反対に、春まきや夏まきなど比較的暖かい時期の栽培には「高温伸張性」や「耐暑性」の性質を持った品種がおすすめです。
春夏の栽培に適した品種には以下のようなものがあります。
・「サンホープセブン」「晩抽サンホープ」(カネコ種苗)
・「ジャスティス」(サカタ種苗)
・「ジョーカーセブン」「ジョーカーX」(トキタ種苗)
・「タフスカイ(タキイ種苗) など
種まき時期別 温度管理のポイント
それでは最後に、種まき時期ごとに必要な温度管理について解説しましょう。
春まき:とう立ちに注意
ほうれん草は春まきだと「とう立ち」が起こることに注意が必要です。
とう立ちとは「抽苔(ちゅうだい)」とも呼ばれ、花芽が付いた茎が伸びる現象のことを指します。
ほうれん草に「とうが立つ」と、茎や葉が硬くなったり、味が悪くなったりして商品価値が下がってしまいます。
とう立ちは日長時間(昼間の長さ)の積み重ねと、気温の上昇よって起こります。最も気をつけたいのは夏至前後。
5月下旬から6月上旬に種をまくスケジュールなら対策は欠かせません。
とう立ち対策には遮光ネットや不織布のベタ掛けなどの方法がありますが、ほうれん草栽培に慣れないうちは、まずは秋まき品種の栽培から始めたほうが無難でしょう。
とう立ち対策についてはこちらもご覧ください
「ほうれん草を栽培するのに日当たりは重要ですか?」
夏まき:高温対策が不可欠
近年の気候変動の影響で、日本でも夏場に高温の日が続くことが増えました。夏まき品種では高温対策が必須です。
まずは種まきの時、発芽が鈍る25℃以上にならないよう、畑に遮光ネットや不織布を掛けてください。
特に発芽後から本葉が6枚になるまでの段階は、急に高温日に当たったのが原因で枯れることがあります。
遮光率は30~50%程度のものを選びましょう(地域の気候や栽培する月などによって異なります)。
ハウス栽培では屋根に遮光ネットを使うのもおすすめです。ハウスの屋根に散水チューブを取り付け、高温になったら屋根から水をまいて施設内の温度を下げる仕組みを取り入れている農家もあります。
遮光資材は掛けっぱなしにするとかえって日照不足になり、徒長(茎などが必要以上にひょろひょろと間延びしてしまうこと)のおそれがあります。発芽後は夕方には遮光資材を外すようにしてください。
水やりのポイントはについてはこちらをご覧ください
「ほうれん草の栽培で行う水やりのポイントは?」
秋・冬まき:トンネル栽培を活用
栽培が低温期にかかる秋冬まきでは低温対策が重要です。一例として中間地で収穫が年明けになる栽培スケジュールであれば、11月下旬から2月いっぱいまではトンネル栽培に切り替えると良いでしょう。
2月下旬以降は気温が上がってくるので、トンネル内の温度が上がりすぎないように換気をしたり裾を開けたりして調整します。
資材は穴のあいたポリフィルムが便利です。トンネル内の温度が上がりすぎず、換気の手間も省けます。
冬越し栽培や露地栽培に関してはこちらをご覧ください
「ほうれん草の冬越し栽培の方法は?品種や収穫のコツを教えて」
「ほうれん草を栽培したい!露地で育てるにはどうすればいい?ポイントは?」
「ちぢみほうれん草(寒じめほうれん草)の栽培方法に興味があります」
このお悩みの監修者
渡會那央
わたらい農場 代表
長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。