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第1話 代表取締役 上野耕平 「なぜ沖縄で農業の人材派遣を始めたのか? 」

第1話 代表取締役 上野耕平 「なぜ沖縄で農業の人材派遣を始めたのか? 」


沖縄で派遣事業「エイブリッジ」を始めたきっかけ


2020年7月創業の「YUIME」は、IT事業・農業支援事業を行う「エイブリッジ」から、農業支援事業を独立させた会社です。まずは、なぜ「農業」という分野に特化した人材派遣を手がけることになったのか、順を追ってお話ししたいと思います。

エイブリッジは2012年7月に創業しました。

当時、私は上海で事業をしており、帰国後に何をするか検討中でした。本帰国の前に、たまたま沖縄に行ったときのこと。友人から「大手製造業のグループ会社が数百人規模のテクニカルコールセンターを立ち上げるそうなので、人材雇用の会社を一緒に立ち上げませんか」ともちかけられたのです。

事業成功の可能性を見込んだ理由は、その規模です。ひとつ事業所を立ち上げるときに50人程度の派遣が回れば十分やっていける。それで東京に本社、沖縄に支店という形で、エイブリッジを立ち上げることになりました。

ところがその目算は大きく外れました。事業所安定ラインで考えていた50人を大きく下回る10人程度の運用が1年続き、加えて競合他社も日増しに増えていく状況にありました。なおかつ私は上海にいて、直接関われなかった。立ち上げから1年が過ぎたころには、残念ながら赤字が膨らんでしまいました。(現在ではその大手製造業グループ会社のテクニカルコールセンターにおけるエイブリッジのシェアは、同企業内のパートナー企業でNo1の実績を出しています。 ※2020年度時点)

そこで私は、上海の事業を日本人スタッフに任せ、帰国してエイブリッジの社長に就任しました。

最初に手がけたことは、沖縄事務所を任せられる人材のリクルーティングです。しかし、マネジメントのできる優秀な人材がなかなか見つからなかった。

そんなとき、沖縄の友人のひとりである安田氏が江城(えしろ)嘉一君を紹介してくれました。当時安田氏はインド大手ITサービス企業のテクニカルコールセンター運営責任者でしたが、江城君は彼の部下で、たまたま東京から沖縄に帰ってきたばかりだということでした。

私はさっそく翌日に江城君と会って話をしてみると、彼自身も沖縄の派遣のシステムを憂いていました。派遣社員には昇給がなかなかない。だから、何年勤めても待遇は変わらないし、スキルアップもしない。それではワーキングプアを量産しているだけになる。その現状を変えるためには、教育しかないのではないか、と熱く語り出したのです。そして、エイブリッジの責任者に立候補してくれました。

彼の条件はふたつ。ひとつ目は高卒生を対象に派遣の教育システムをつくること。ふたつ目は海外事業への参画。私はその両方を了承し、彼に入社してもらいました。事務兼営業の女性も加わり、3人でエイブリッジは再スタートを切ることになりました。

大東島・大東糖業さんの工場の煙突

手を引く予定だった、南大東島への派遣事業


エイブリッジではそのころすでに、南大東島のサトウキビ製糖業務の派遣事業を始めていました。

南大東島は沖縄本島から約400km東方にあり、サトウキビの収穫シーズンのみ人手を募集します。「沖縄の離島ライフを満喫しながらアルバイトしてみませんか?」というのが売りなのですが、当時は募集人数も少なく、弊社としてはまったく採算が取れませんでした。

江城君はもともとITサービス企業で働いていたこともあり、「高卒生を採用し、社内でIT研修を実施して、IT人材として派遣する。一定期間後、再度研修を行って、能力をステップアップさせる」というプランを考えていました。つまり、採算の取れない製糖関係の派遣事業はこの際だからやめよう、と言うわけです。

しかし南大東島のクライアントである大東糖業からは、「沖縄中の派遣会社にあたったが、どこもやってくれなかった。エイブリッジに派遣を断られたら、南大東島の製糖事業は立ちゆかなくなる」とストップがかかる。クライアントを訪れて詳しい話を聞いた江城君は、「この事業は続けなければいけない!」と考えが変わりました。

南大東島は、珊瑚が隆起してできた島。那覇からはプロペラ機で1時間かかる“秘境の地”です。

もともとは無人島でしたが、八丈島の人が探し当て、断崖絶壁をよじ登って地質調査したところ、「湖があって水がある。水があるということは、サトウキビが栽培できる」ということが分かり、八丈島のサトウキビ栽培を持ってきた島なのです。その後、県内の人材も入植し、沖縄のサトウキビ発祥の島となりました。

サトウキビは沖縄の基幹産業だ

先の大東糖業は南大東島のシンボル的存在で、その工場の煙突には「さとうきびは島を守り島は国土を守る」というフレーズが書いてあります。同企業のみならず、島の農家の皆さんも、自分たちはさとうきびだけを守っているのではなく、南大東島、ひいては日本の国土を守っているのだというプライドを持たれています。私たちもこの思いに応えられるよう、南大東島の派遣事業から手を引かずに黒字転換させるための次の一手を考えることにしました。(構成=堀香織)

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