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ほうれん草を栽培する土壌phの適正範囲は?

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ほうれん草を栽培する土壌phの適正範囲は?

夏にとうもろこしを育てた畑で、秋からほうれん草栽培を始めようかと考えています。

現在の土壌phは6.0ですが、ここに普通に石灰を入れてほうれん草の種をまいても大丈夫でしょうか?

どれくらいのphが適正範囲なのか教えてください。

渡會那央

わたらい農場 代表

酸性を嫌うほうれん草、ほうれん草栽培に向く土壌phは「6.3∼7.0」

ほうれん草と土壌ph


まずはほうれん草栽培に重要な、土壌phの基礎知識について確認しておきましょう。

ほうれん草が育つのに最適な土壌酸性度は「6.3〜7.0」です。資料によっては「6.0〜」や「〜7.1」も許容する場合があります。

いずれにしても中性(6.0~8.0)の範囲内にあたります。


酸性の土壌ではほうれん草は生育しない


phが「6.0」よりも小さい値を示す土壌は「酸性土壌」です。

ほうれん草は酸性土壌では生育しません。その理由を説明しましょう。

ほうれん草に酸性土壌はNGの理由


ほうれん草が生育不良を起こすのは「ph5.5」以下の環境です。

ph5.5以下では、以下のような事態を引き起こします。

1、土の中にある、生育に必要な栄養分が根から取り入れられなくなる
2、ほうれん草にとって有益な、土壌中に生息する微生物の活動が起こりにくくなる
3、土壌中のアルミニウムがほうれん草の中に溶け出して、毒性が作用しやすくなる



何もしない土は酸性寄りになる


日本の雨水はph5.6程度で「弱酸性」にあたります。

日本は雨が多い気候のため、特に手を加えていない土は、降雨の影響で酸性寄りになる傾向があります。

また溶岩や火山ガスの成分が酸性なので、火山灰が含まれる土は酸性度が高くなる可能性もあります。


酸性土壌に播種するとどうなる?


もし仮に酸性土壌にほうれん草の種をまいてしまった場合はどうなるのでしょうか。

たとえ発芽しても、本葉(ほんよう=発芽後最初に開く細長い形の葉の、次に現れる丸い葉)が2~3枚展開する頃に、黄色く変化してそれ以上は育たなくなってしまうことがあります(=立ち枯れ)。

また、葉先が細長くなる傾向にあります。

このような事態を招かないために、栽培前に必ず土壌調整を行っておきましょう。

播種時期や発芽のコツについてはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培の播種する時期はいつ頃?方法やコツも教えてほしい
ほうれん草が発芽しないのはなぜ?上手に発芽させる管理方法は?



ほうれん草畑のph調整のやり方


続いて、ほうれん草畑のphを調整する手順を3段階で紹介します。

1、土壌分析を受ける


土作りを始める前に、畑の土の状態を詳しく知ることをおすすめします。

土壌分析や土壌診断を受けると、酸性度のほか、残留している肥料成分のバランスや生育障害の原因、その土に農産物を育てる生産力がどれだけあるのかが、数値で導き出されます。

与える肥料成分の配合も、この結果に沿って判断すれば失敗のリスクを減らせますが、一部の土壌だけでなく、何ヶ所かに分けて分析をとることも大切です。

土壌分析は、地域のJAやホームセンターなどで受け付けているので、初めてほうれん草を育てる場合はぜひ相談してみてください。


2、土作りの時期


土作りを行う時期は、種まきから1カ月前を目安にしましょう。

また同じタイミングで、堆肥(たいひ=糞などの有機物を微生物の力で分解した農業資材)を入れても良いです。

完熟堆肥(かんじゅくたいひ=有機物を十分に発酵・分解したもの)を選んでください。

肥料を入れるのはそれから2週間後くらいという農家が多いです。


3、石灰を混ぜ入れる


ph調整のためには、石灰を土壌に混ぜ入れます。

石灰をまく前に、土は十分に耕しておきましょう。

適切な分量を畑全体にまんべんなく散布し、すぐに鍬(くわ)や耕運機などで混ぜ合わせてください。

散布量が少ないと効果がほとんど出ませんので、節約せずにしっかり散布する事が大切です。

石灰は直接肌に触れると炎症を起こすことがあるため、手袋やマスクを装着して作業します。

粉状の石灰の場合、飛散から目を保護するため、ゴーグルを着用すると安心です。

石灰の役割や効果についてはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培で石灰は必要?効果と正しい使用方法は?

基本的な栽培方法や栽培特性についてはこちらをご覧ください
ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください



ほうれん草栽培におけるph調整の注意点


最後にほうれん草畑のph調整を行う際の注意点について確認しておきましょう。

石灰は「苦土石灰」がおすすめ


石灰には、アルカリ度が高い順に「消石灰(しょうせっかい)」、「苦土石灰(くどせっかい)」、「有機石灰」などの種類があります。

アルカリ度が高いほど効果が現れるスピードは速まります。

慣行栽培で一般的によく使われるのが苦土石灰です。

石灰由来のカルシウム成分だけでなく苦土(マグネシウム)も含み、多くの作物にとってバランスが良く、使いやすい農業資材です。

分量は「1㎡あたり100~150g」を基準にしましょう。土壌分析の結果も考慮した上で、最適な比率・量を算出してください。

ほうれん草栽培に適した土壌についてはこちらもご覧ください
ほうれん草栽培の土はどう作る?土壌調整で気をつける点を教えて

このお悩みの監修者

渡會那央

わたらい農場 代表

長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。

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