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ピーマンの育苗・栽培の温度管理は難しい?気をつける点は?

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ピーマンの育苗・栽培の温度管理は難しい?気をつける点は?

就農1年目の新人農家です。

いまピーマンの栽培を行いながら、より良いものを作ろうと試行錯誤しています。

一番悩んでいるのが温度管理についてです。

特に育苗は細かな調整が必要だと聞き、自分なりにデータを取りながら実践していますが、どういった点に気をつけたら良いでしょうか?

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

ピーマンは温度管理が重要。特に育苗は段階ごとに細かく調整を

ピーマンの栽培適温は20~30℃


一般的にピーマンの生育に適した気温は「20〜30℃」です。

ピーマンは中南米の熱帯気候の地域が原産で、高温を好みます。

日本では夏の暑い時期によく育ち、繰り返し実をつけます。逆に低温の環境では生育が進みません。

冬や春に収穫されるピーマンは、暖房を入れたハウスで栽培されています。

施設内で温度や日照などの条件が揃えば、寒い時期や寒冷地でも育てることができます。

ピーマン栽培で特に気をつけるべき時期・温度


ピーマン栽培では、特に温度管理に気をつけたい時期があります。

最も重要なのは「育苗期」で、種をまいてからおよそ60~70日の間です。

この時期、段階ごとに細かく温度調整することが、良い苗を育てるポイントになります。

また花を咲かせる準備を始める「花芽(はなめ=成長して花になる芽)」の形成期も大切なポイントです。

種まき後約35日頃からがこの時期にあたります。

特に植え付け直前の時期は、温度をこまめに確認しなが丈夫な苗を育てましょう。


育苗期は加温が必須


ピーマンは発芽適温が28~30℃と高く、育苗期の気温は28℃程度、地温は30℃程度が理想的です。

夏から秋にかけて収穫するスケジュールだと、ピーマンにとって育苗期の気温は低すぎます。

温度対策をせずに種をまいてもほとんど発芽しなかったり、発芽までに長期間を要するでしょう。

種まきは、温度調整ができる場所が不可欠です。

室内で装置を使って育苗ポットやトレイを温めたり、トンネルで覆ったりするなどでしっかり対策してください。

ピーマンを育てるのに適した場所についてはこちらをご覧ください
ピーマンにはどのくらい日当たりが必要?日焼け対策のやり方は?



育苗期の温度管理のポイント


具体的にはどの段階で、どのような温度帯に設定する必要があるのでしょうか。

1、 発芽まで


ピーマンの発芽条件は以下の通りです。

・日中の気温:28℃~30℃
・日中の地温:30℃程度
・できるだけ光は当てないように新聞紙などで覆う
・土壌を乾燥させないように毎日水やりする


これらの条件を満たせば、1週間ほどで発芽します。

うまく発芽しない場合は、温度が低すぎる可能性が高いです。

特にまだ肌寒い時期の夜間は、気温や地温が下がりすぎていないか計測してください。

発芽するまでは、夜は気温22℃以上、地温30℃程度になるように努めましょう。


2、 本葉が2枚(種まき後約20日頃)まで


発芽後は、苗が植え替え後の畑の環境に順応するよう、少しずつ気温・地温を下げていくのがポイントです。

本葉(子葉の後に出る葉)が2枚になる頃には、以下の温度を目安にしてください。

・日中の気温:28℃程度
・夜間の気温:22℃程度


セルトレイなどで育てている苗は、本葉が2枚になった頃には一度ポットへ移し替えましょう。


3、 花芽が作られ始める時期(種まき後約35日頃)から本葉が5~6枚(種まき後約55日頃)にかけて

種まき後35日程度がたつと、花芽が作られ始めます。

良い花芽を作るためには以下の温度環境になるように努めてください。

その後もこの温度を維持していきましょう。

・日中:27℃から28℃
・夜間:15℃程度



栽培期の温度管理のポイント


続いて苗の植え付け後の温度管理について、ポイントを説明します。

1、植え替え時期の温度の目安


ピーマンの苗の植え付け時期は「5月中旬」を基準にしましょう。

植え付けのタイミングで特に気をつけなければならないのは「晩霜(おそじも・ばんそう)」です。

晩霜とは、晩春から初夏にかけて降りる霜のことです。

ピーマンは低温に弱いため、晩霜の心配が完全になくなり、以下の条件が揃う頃に畑へ植え付けてください。

・最低気温:10℃以上
・最低地温:15℃以上


晴れた日の午前中がベストです。

また、しっかり根付かせるためには地温を保つことが重要です。

植え替えの数日前に、畝(うね=土を細長く直線状に作った山)をフィルムやシートで覆って保温・保湿しておくのもおすすめです(=マルチング、マルチ栽培)。


2、根付いた後の温度管理


気温が上がる夏頃にはピーマンがぐんぐん育ちます。高温で注意が必要なのは「30℃」です。

発芽には30℃程度が必要でしたが、生育期に30℃を超える日が続くと、花が落ちたり生育が鈍ったりするケースが増えます。

日差しがきつければ遮光ネットや寒冷紗(かんれいしゃ=農作物から虫や風、光などを遮る資材)をかけてください。

雨よけ栽培であれば、熱がこもらないよう、シートをめくって換気するなどして畑が高温になりすぎないようにしましょう。


ピーマンの温度管理の注意点


ピーマンの品種によって適温が異なる場合があります。

栽培する品種のパッケージや地域の指導にしたがって、適切な温度管理をしてください。

またピーマンの育苗は日数だけでなく、加温のための装置や設備、労力などのコストが多くかかります。

総合的に考慮して、購入した苗から栽培するのも一案でしょう。

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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