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ほうれん草の冬越し栽培の方法は?品種や収穫のコツを教えて

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ほうれん草の冬越し栽培の方法は?品種や収穫のコツを教えて

ほうれん草は寒さに強く、むしろ寒さにあてると美味しくなる、と耳にします。

ちょうど秋以降スケジュールに余裕があるので、新たな品目として栽培するにはいいのではないか、と家族で検討しています。

具体的にはどのような品種が冬に向いているのでしょうか?

また、寒さに強いとはいえ何かしらの対策が必要なのかと思っていますが、冬のほうれん草栽培や収穫に必要な準備や工夫についても教えてください。

渡會那央

わたらい農場 代表

ほうれん草の真冬の収穫には低温伸長性の品種を選び、トンネルなどを使いましょう

ほうれん草はどのくらいの寒さに耐えられる?


ほうれん草は寒さに強く、暑さに弱い作物です。栽培と発芽に適した温度帯は「15~20℃」ですが、わずか「4℃」でも発芽でき、「氷点下10~15℃」の環境でも生育します。

中間地の露地栽培では秋のうちにまいて収穫するのが標準ですが、品種によってはゆっくり育てて年明けに収穫する事も可能です。

ほうれん草の栽培適温や露地栽培についてはこちらもご覧ください
ほうれん草栽培の温度管理について教えて。特に注意が必要なポイントは?
ほうれん草を栽培したい!露地で育てるにはどうすればいい?ポイントは?



冬の収穫に向く「低温伸張性」とは


ほうれん草は品種と作型(=栽培条件や栽培技術、もしくはその組み合わせ)によってはほぼ一年中収穫できます。中でも特に冬の収穫に適しているのが「低温伸張性」の品種です。

低温伸張性とは、ある程度温度が低い環境下でも生育するタイプのことを指します。

気温がどんどん高くなっていく時期に育てる春まきの栽培スケジュールであれば、「高温伸張性」の品種を選んでください。


ほうれん草が寒さでおいしくなるメカニズム


低温環境にさらされたほうれん草は、寒さで凍り付かないよう株の中の水分を減らし、糖分を増やして自分自身を守ろうとします。

また糖分のみならず、うま味成分である「アミノ酸」が増え、えぐ味のもとである「シュウ酸」は排出されるので、総合的においしく感じられるのです。

冬収穫は夏収穫と比較して「ビタミンC」の含有量が1.5〜2倍に増えるなど、味だけでなく栄養価もアップします。


冬越し栽培に向いている品種


冬越し栽培では「低温伸張性」のほか、「耐寒性」を持つ品種を選んでください。

品種名に「冬」が付いているものや、パッケージに「冬どり」「寒じめ」などの記載があるものが分かりやすいでしょう。

朝霧


「朝霧」(渡辺採種場)は寒さに当てて葉を縮ませる「寒ちぢみほうれん草」の定番品種です。低温でも生育が早く、多収が見込めます。

丸型の葉は深い緑色で肉厚、茎も太く仕上がります。


雪美菜


「雪美菜」(雪印種苗)は、濃い緑色の葉が柔らかで甘いちぢみほうれん草です。

強い抗酸化作用で眼へのダメージを保護し、老化を防ぐとされる天然色素「ルテイン」を多く含みます。


伸兵衛


「伸兵衛」(タキイ種苗)も耐寒性に優れた品種です。

ちぢみ系ではなく立性(たちせい=茎が立つように上方向に伸びる性質)で葉柄((ようへい=葉の一部で、茎から葉の本体の間にある細長い部分)が折れにくく、収穫や出荷作業がしやすいのもポイントです。


オシリス


「オシリス」(サカタ種苗)は低温伸張性の品種で、種まき適期が長く、火山灰土から水田の裏作まで、適応する土壌が広いのも特長です。

立性のため収穫、調製(収穫後の計量や袋詰めなどの作業)も容易で、初心者からベテランまで多くの農家で採用されています。

冬越し収穫のほうれん草の育て方


続いて冬越しで収穫するほうれん草の育て方を解説します。

栽培スケジュールの目安


一般的な秋まきの露地栽培では種まきから約40日で収穫できますが、冬越し収穫の場合は晩秋に種をまき、100~120日ほどかけてゆっくりと育てます。

緩やかに生育するので他の時期のように一斉収穫に追われることもありません。

以下が中間地での種まき・収穫時期の一例です。これをもとに品種や気候などを加味してアレンジしてください。

・10月中旬に種まき ⇒ 1月上旬に収穫
・11月上~中旬に種まき ⇒ 1月下旬~2月いっぱいで収穫



温度調整のためにはトンネル設置が必須


温度を調整するためには畑へのトンネルの設置が必須です。11月中旬以降、翌2月いっぱいをめどにトンネル栽培に切り替えましょう。

畝(苗を植えるために土を盛って作る、細長く直線状の山)に対してアーチ型に支柱を立て、防寒シートなどで覆ってください。

ただしトンネルによって日中の温度が上がりすぎると、ほうれん草が徒長(茎などが必要以上にひょろひょろと間延びしてしまうこと)するおそれがあります。

さらに高湿度の環境はべと病などのリスクも高めるため、被覆資材には穴の開いた「有孔ポリ」がおすすめです。


収穫時期にトンネルを開けて冷気に当てる「寒じめ栽培」


「寒じめ栽培」は、収穫期以降のほうれん草を寒気に当てて味や栄養価を高める栽培方法です。

ほうれん草が収穫サイズに達したら、トンネルのシートの左右を開けて、合計2~3週間ほど低温にさらします。外気5℃、地温5~8℃の頃が目安です。

前半は日中のみ開け、夜は閉めるようにして寒さに次第に慣れさせましょう。後半は終日開けっ放ししにます。

ただし氷点下5℃を下回る日や風、雨、雪の強い日はトンネルを閉めてください。


ほうれん草の冬越しについての注意点


種まき後トンネルを設置するまでの期間で低温が気になるときは、不織布や寒冷紗のベタ掛けで対応しましょう。

特に低温では発芽率が落ちるため、種まき後はベタ掛けすると発芽スピードを早められます。

またちぢみほうれん草にする場合、葉が地面に這うように開き気味になるため、他の品種の倍程度の株間が必要です。

2回目の間引き後に「10~15cm」間隔になるように調整しましょう。

このお悩みの監修者

渡會那央

わたらい農場 代表

長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。

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