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大きくきれいな白菜を作るための外葉の手入れとポイントは?

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大きくきれいな白菜を作るための外葉の手入れとポイントは?

畑で白菜の栽培を始めてから、2年目になります。

今年は外葉の成長がいまいちで、葉の肉付きもよくないような気がしています。

外葉の成長が悪いと結球させるのが難しいと聞きましたが、おいしくて大きな白菜を育てるコツがあれば教えてください

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

外葉の役割を理解して、大きくきれいな白菜を育てよう

白菜の品質の鍵を握る、外葉の役割


おいしくて大きな白菜を育てるには、外葉の役割を理解して、生育過程に応じて手入れをするのが早道です。

白菜をきれいに結球させる鍵は、外葉にあるのです。

白菜の外葉の役割には、以下のようなものがあります。

・光合成で白菜全体の成長を促進すること
・霜害や寒さから結球部分を守ること


役割1 光合成で白菜全体の成長を促進する


白菜栽培では先に外葉が広がり、次に結球ができていきます。

植物を生長させるためには光合成が不可欠。光合成は、植物の「葉緑体」で行われますが、実は白菜の結球部分(白い部分)の細胞には葉緑体がありません。

結球に使われるエネルギーは、光合成によって外葉が作り出すのです。

結球が始まるまでに外葉を大きくしておくことが、上手に結球した白菜を収穫することにつながります。


役割2 霜害や寒さから結球部分を守る


外葉のもう1つの役割は、生長して大きくなった後に結球を守ることです。

白菜は北・東ヨーロッパからトルコ高原にかけて自生している野生種から進化したもので、中国へは栽培植物として導入されたと思われます。

白菜は冬野菜で15~20℃の頃によく育ち、結球は15~16℃の時に始まります。

ところが気温が4℃を下回ると、結球はストップしてしまいます。

12月頃の収穫前はぐっと気温が下がり、中間地(温暖地)でも平均最低気温が4℃を下回ります。

この時期に外葉をうまく活用することで、結球が低温や霜に当たる被害を避けることができます。

上手に結球しない場合はこちらをご覧ください
白菜が上手に結球しない理由は?失敗しないためのポイントを教えて



白菜の外葉の手入れ方法


続いて外葉の手入れ方法について説明します。

外葉を大きくするために追肥をする


外葉を大きく育てるために、収穫までに2~3回の追肥が必要です。

肥料切れを起こさないようにしましょう。

追肥の1回目は、苗を畑へ植え替えてから2~3週後を目安にしてください。この頃は新しい根が伸び始める時期です。

追肥では窒素・リン酸・カリウムに微量要素のバランスが取れた化成肥料(鉱物など無機物を原料に、化学的に作られた肥料)を与えます。

目安量は1平方メートルあたり50g程度です(窒素:リン酸:カリ=8:8:8の肥料を用いた場合)。

株の根元に、偏らないようにまきましょう。
参考)施用量の50gは、皆さんが施用する肥料の成分割合によって変わります。

例えば、今回の例では、窒素:リン酸:カリ=8:8:8の割合の肥料を使用していますので、50gを施用するとなると、この50gの中に窒素:リン酸:カリ=4g:4g:4g含まれていることになります。

最初の追肥を散布した後には、「中耕(ちゅうこう)」といって株や畝の間を軽く耕す作業を行います。

これにより除草すると同時に通気性や水の通りを良くし、ふかふかの畑で白菜は元気に育ちます。


傷んだ外葉は取り除く


白菜が結球を始めるのは外葉の枚数が15~20枚に達した頃です。

結球が始まる適温は15~16℃なので、この気温になる頃までに外葉の枚数をできるだけ増やせるように心がけましょう。

葉が土壌を覆って地面が見えないくらいにまでして下さい。

虫に食われていたり、日当たり不足などで傷んだ外葉は、見つけたら取り除きましょう。


収穫時に結球部分を外葉から外す


品種によって必要な日数を経過すると、収穫時期です。

早生(わせ=早く出来る)品種では約60日、中生(なかて=早生と晩生の中間)品種では約80日、晩生(おくて=ゆっくり生長する)品種では約100~120日です。

白菜の頭を押さえて固く締まっていたら収穫時です。

一番外にある数枚の葉を外してから横に倒し、刃物などで根元を切り取って収穫しましょう。


外葉で包むと冬越しできる


12月に入ると気温がぐっと下がり、霜が降りる日もあります。

12月は収穫時期ですが、この時に敢えて収穫せず、畑で冬越しをさせてから収穫する農家もあります。

一般的に水分量が多い白菜は、霜に当たると凍って品質が落ちてしまいますが、外葉を結球に巻きつけてひもなどで固定しておくと、結球を守りながら霜に当てることが可能です。

畑の中で寒い時期を過ごすと、白菜は自分の中にあるデンプンを糖分に変えて甘みを増すのです。

地域の気象条件にもよりますが、畑で冬越ししておくと白菜は2月頃まで収穫できます。


外葉の手入れについて気をつけること


最後に外葉の管理についての注意点を紹介します。

追肥の際に肥料が外葉に直接当たってしまうと、肥料の効果を得られないどころか「肥料焼け(根や葉を傷めること)」を起こします。

追肥は葉の下の株元に、偏りなく散布するように注意しましょう。

また肥料切れが心配であれば、追肥でなく元肥(栽培開始前に土壌にあらかじめ与える肥料)をたっぷりと施しておくのも有効です。

アブラナ科の冬野菜は害虫の被害に遭いやすいのも特徴です。

外葉が展開する前ですが、特に苗の期間に防虫ネットを張るなどの対策をしてください。

畑へ植え替えた後は葉に虫が発生していないかどうかをこまめにチェックして、発見したら取り除くようにしましょう。

白菜によく付く虫と対策方法はこちらをご覧ください
白菜の主な害虫の種類と対策方法は?

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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