農家になったばかりで、ほうれん草の水やりについて悩んでいます。
最近は猛暑が続くので、水をたくさん与えるべきなのか、迷っています。
しかも、昨年は葉やけを起こしてしまい、思うような収量が見込めませんでした。
品質が良いほうれん草を栽培するために、水やりのポイントやコツを教えてください。
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渡會那央
わたらい農場 代表
ほうれん草を栽培する際、特に若い苗と葉の成長期には、乾燥しすぎないよう水やりを
ほうれん草は土を乾燥させない時期と乾燥させる時期とがある
ほうれん草は涼しい気候や地域での栽培に適応しており、ある程度は乾燥に耐えられますが、乾燥しすぎると生長が進まない時期もあります。
栽培を始める前に水やりのポイントを覚えておきましょう。
種まき直後から発芽するまで:特に水やりが重要
ほうれん草の栽培で最も水やりが重要な段階は「種まき直後から発芽するまで」です。
「短期間に一斉に発芽させること」が上手にほうれん草を育てるコツの1つです。
そのため種まき後には土壌を湿潤に保って乾燥しないよう、水やりと水分チェックが欠かせません。
種が水分を吸収してカラを破り、苗がしっかり地中に根を張るまでは、毎日水やりしましょう。
ベテランのほうれん草農家の中には、一斉発芽しやすい環境を作るため、種まきの10日ほど前から土壌に水分を与えて十分に耕して備える人もいます。
発芽させるコツについてはこちらをご覧ください
「ほうれん草栽培の発芽のポイントは?芽出し処理についても教えて」
「ほうれん草が発芽しないのはなぜ?上手に発芽させる管理方法は?」
発芽後、本葉3~4枚になるまで:水やりは控える
ほうれん草には水やりを控えたほうが良い時期もあります。
「発芽直後から本葉3~4枚になるまで」です。
この時期に土壌の湿度が高くなると、立枯病(たちがれびょう)や根腐れ病(ねぐされびょう)を引き起こすことがあるためです。
発芽が揃い始めたら本葉3~4枚になるまでは水やりを止めてください。
葉が生長する時期:適度に水やりする
控える時期を経て、再度水やりが重要となるのが、葉の生育期です。
基本的に発芽後は乾燥気味の土壌で育てますが、本格的に葉が生長する時期に水分が不足すると、葉が小さくなったり、苦味が出たりしてしまうこともあります。
とはいえ発芽前ほどたっぷりと水を与える必要はありません。
収穫前:水やりせず土を乾燥させる
葉が揃い草丈が10センチメートル程度まで育ったら、土壌を乾燥させる時期に入ります。
こうすることで葉が厚く、葉の色が濃くなり品質を高められます。
この段階で水やりをしすぎると、出荷時に腐敗してしまうリスクがあります。
ほうれん草の水やりのポイント
それではほうれん草の水やりの方法やタイミングを詳しく解説します。
晴れた日の午前中がベスト
種まき後から発芽後を除いては、基本的に畑を湿潤に保つ必要がありません。
頻度としては「晴れた日に必ず与える」という程度を目安にしましょう。
タイミングは午前中にしてください。夕方になった頃には土の表面が乾く程度が目安です。
雨の日や午後の水やりは、畑が過湿状態になってしまうので控えましょう。
土の表面を確認して、まだ湿っている時には与えないようにしてください。
土壌水分計でのチェックもおすすめ
ほうれん草は成長段階ごとに水分管理が異なるので、土壌水分計(pFメーター)を活用すると役立ちます。
測定部分を土の中に挿入すると数値が表示される機械で、ホームセンターやネットショップでも購入できます。
土の表面の乾燥度合い、ほうれん草の様子に加えて土壌水分計の数値をチェックし、水分の過不足を判断しましょう。
ほうれん草の水やりの注意点
ほうれん草の水やりで注意しておくべきポイントが2つあります。
注意点1 露地栽培では雨よけやトンネルがあると安心
露地栽培では土壌の水分量がかなり気候に左右されます。ハウス栽培と比較すると、均質な水やりや適切な水分管理がやや難しいでしょう。
雨の影響が心配な場合は、雨よけやトンネルを設置して栽培すると安心です。
トンネル栽培の方法についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草を栽培したい!露地で育てるにはどうすればいい?ポイントは?」
注意点2 残った水滴や過度な水分不足は葉焼けの原因にも
水やりの際に葉の上に残った水滴がレンズのように日光を集め、その部分に葉焼け(葉が茶色くなったり、葉の色が抜けたりするようになる現象)を起こしてしまうことがあります。
水は株の根元に与えるようにしましょう。
かん水チューブを使う場合は、畝の両脇に設置して、横から散水するのがおすすめです。
また過度な土壌の水分不足も、葉焼けが起こる原因となります。
基本的な栽培方法や栽培特性についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください」
水のやりすぎが原因で起こるトラブル
最後に水のやりすぎが原因で起こるトラブルを2つ紹介します。
根腐れ
過湿の状態は、根腐れを引き起こす可能性が高くなります。
ほうれん草は「直根性(ちょっこんせい)」といって、根が地中に深くまっすぐ伸びる性質を持っています。
畑の排水が悪いと根が傷み、栄養が吸収できなくなるために枯死(=根腐れ)してしまいます。
根腐れを起こさないためには、水やりに気をつけるほか、排水も見直しましょう。
畝を高くするのも一案です。
べと病
湿度が高い畑には病害虫の発生リスクが高まります。
ほうれん草の最重要病害である「べと病」も、雨が続き湿度が高くなる時期に最も多く発症します。
湿度の高い時期には水やりを控えるほか、密植しない(きちんと間引く)こと、ハウス栽培であればこまめに換気をすることも忘れないようにしましょう。
このお悩みの監修者
渡會那央
わたらい農場 代表
長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。