ハウスの有効活用のため、冬場のほうれん草栽培について調べている新米農家です。
この地域は11月でもハウス内なら最低気温10℃ほどなので、11月中旬の種まきを予定しています。
ほうれん草発芽のための温度条件は実際のところどんなものでしょうか?
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渡會那央
わたらい農場 代表
寒さに強いほうれん草は冬でも発芽可能ですが、春夏は要対策!
ほうれん草の発芽適温は15~20℃
ほうれん草は寒さに強い作物です。発芽や栽培で気をつけなければならない温度帯も低めの傾向があります。
播種時に気をつけるべき温度は「4℃」と「25℃」
まずは発芽のための温度条件について確認しておきましょう。
「15~20℃」の間であれば、発芽率は比較的安定しています。
例えば東京都の月間平均気温では、10~11月と3~4月がこの気温帯にあります。
そして「4℃」が発芽可能な最低ラインです。さらに発芽後はもっと低温の環境でも生育できます。
逆に高温で注意したいのは「25℃」です。
これを超えるとほうれん草は発芽しにくくなり、30℃以上になると発芽率は極端に落ちます。
生育適温は「10~20℃」
なお、生育段階に適した温度帯は「10~20℃」です。
寒さに強いほうれん草は、氷点下10℃前後の環境でも枯死することはありません。
ただし暑さには弱く、25℃を超えると生育が鈍ります。
上限温度については発芽と同じと覚えておくと良いでしょう。
ハウスやトンネルを利用すれば冬場の栽培も可能
ほうれん草は露地に種を直まきで育てられますが、ハウスやトンネルを利用して最低温度以上を保てば、冬でも発芽・栽培は可能です。
ちなみに近年市場でも人気のある「ちぢみほうれん草」も、12月~2月が旬です。
トンネル内で育てて収穫サイズにまで達したほうれん草を、トンネルのシートをめくり上げて一定の間、外気に当てるという方法で栽培(=寒締め栽培)されています。
トンネル栽培の方法についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草を栽培したい!露地で育てるにはどうすればいい?ポイントは?」
低温期には耐寒性の高い品種を選ぶ
続いては、温度を意識した品種選びのポイントについて詳しく説明しましょう。
栽培時期に応じた品種選びの重要性
ほうれん草にはさまざまな品種があり、年間を通じて栽培可能です。
ただし上手く発芽させるためには、栽培時期の温度に適した品種を選ぶことが第一です。
特にまだほうれん草栽培に慣れていない農家には、気温条件も整っており、育てやすい秋まき品種がおすすめです。
その理由についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
特に冬まき、春夏まきの場合は温度対策が必須
秋以外の品種では、発芽適温の上限・下限から外れる日の発生確率が多いため、注意が必要です。
冬に種をまく場合は、耐寒性、低温伸長性(ていおんしんちょうせい=ある程度温度が低くても生育する性質)に優れた品種を選びましょう。
その上で気温や地温を調整できるハウスやトンネル栽培とするのが一般的です。
春・夏にほうれん草を出荷している農家は、高原などの冷涼地で、ハウス栽培を行っているケースが多いです。
そうした農家は、ハウスに遮光素材を使ったり、散水装置などを備えたりして、施設内の高温対策を十分にしています。
発芽などの温度対策についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草栽培の温度管理について教えて。特に注意が必要なポイントは?」
冬まきにおすすめの品種例
冬まき品種の一例には、「クロノス」(サカタ種苗)や「冬ごのみ(タキイ種苗)」、寒ちぢみほうれん草の「朝霧(渡辺採種場)」などがあります。
種子のパッケージに記載された適作型(=その品種に適した地域ごとの栽培スケジュール等の目安条件)の欄をよく確認して、検討してみてください。
冬越し栽培に向いている品種についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草の冬越し栽培の方法は?品種や収穫のコツを教えて」
ほうれん草の発芽についての基礎知識
最後にほうれん草の発芽の重要性や、発芽率を上げるコツについても確認しておきましょう。
おいしいほうれん草をたくさん収穫するコツは「一斉発芽」
ほうれん草は畑に種を直まきして栽培します。
また種まきから収穫までは約1カ月と非常に生育サイクルが早く、発芽後、一株ごとに細かな手入れをする工程はありません。
基本的には追肥も不要です。
したがってできるだけ短期間で発芽を揃え、多くの株を均等に健康的に育てていくのが、成功の秘訣です。
そのためにも、温度管理を含め、発芽率を低下させる要因はできるだけ排除しておくことが大切です。
発芽しない5つの主な要因についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草が発芽しないのはなぜ?上手に発芽させる管理方法は?」
春に種まきする場合には「芽出し処理」も有効
ほうれん草の種子は硬い殻で覆われており、発芽が難しいとされる理由の1つはこの点にあります。
芽が殻を突き破りやすくする処理(=芽出し処理、催芽処理・さいがしょり)を行うことで、発芽率を上げられます。
容器に張った水の中に種子を漬けてじっくり水を吸わせ、その後、冷蔵庫内の涼しい環境で休ませて殻を十分に柔らかくするのです。
現在では催芽処理がされて販売されているものも多くあります。
「プライミング加工」や「エボプライム処理」と記載があります。
発芽させるポイントについてはこちらをご覧ください
「ほうれん草栽培の発芽のポイントは?芽出し処理についても教えて」
基本的な栽培方法や栽培特性についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください」
このお悩みの監修者
渡會那央
わたらい農場 代表
長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。