梨の品種「王秋」の栽培のポイントを教えて

YUIME Japan編集部 / 2024.08.29

生産方法

#梨 #果樹、果実的野菜

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両親がやっていた梨園を受け継ぐことになりました。

父に教わりながらこれまで通り栽培を続けて行きますが、あまり経営状況は良くないので、なんとか立て直したいと考えています。

まずは手付かずになっている土地があるので、そこでも梨を作って収量をあげようと思います。

できればたくさん収穫したいので、豊産性があり、大きさにインパクトがある「王秋」が気になっています。

しかしうちの父親は育てたことがないようなので、王秋独自の栽培のポイントについて、教えてください。

前田隆昭

南九州大学　環境園芸学部　環境園芸学科　教授

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王秋は晩生の品種で、花芽が多いため定期的な摘果が必要です

王秋の特徴

王秋は、2003年に登録された比較的新しい梨の品種です。

旬は10月下旬～11月上旬と梨の中ではやや遅い時期に収穫されます。

日本で栽培されている梨の0.6%ほどが王秋梨で、生産量が少なく希少性が高いです。

果実重が650gと梨の中でも大玉であり、風などの影響で果実が落ちてしまう可能性があることから、比較的栽培が難しい品種とされています。

王秋の栽培方法

王秋梨は、他の二ホンナシとの大きな栽培方法の違いはありません。

収穫時期こそ遅いですが、開花時期も他の梨と同じで4月頃に迎えます。

王秋梨に限らず、梨の多くは単体では受粉しないという特徴があり、人口受粉を行うか、相性の良い異なる品種を同じほ場で栽培します。

王秋梨と相性の良い品種には、次のようなものがあります。

・あきあかり
・豊水
・長十郎
・ラフランス
・二十世紀
・ジャンボ愛宕
・甘太
・なつしずく
・あきづき
・南水

多くの農家は、収穫時期が被らない豊水などを同じほ場で栽培し、受粉を促している傾向にあります。

ただし、幸水・新水・愛甘水等とは相性が悪く、受粉しません。

梨の基本的な栽培方法についてはこちらをご覧ください
「梨はどう栽培を始めるべき？基本的な栽培方法から注意点まで知りたいです」

王秋の栽培適地

王秋の主な生産地は鳥取県です。

他には、千葉県や大分県、佐賀県、福島県などで栽培されています。

梨は寒い地域での栽培も盛んですが、王秋の場合は秋でも温暖な気候の場所で育ちやすいです。

収穫期前後の秋に寒くなる地域での栽培は向いていません。

また、果実が大玉であることから、台風の影響で落果の可能性があります。

そのため、強風等の影響の少ない地域が栽培に適しているとされています。

栽培適地についてはこちらをご覧ください
「うちでも育てられますか？梨栽培の適地を教えてください」

王秋栽培で注意すべき病害

王秋は、梨栽培で被害の多い黒班病に抵抗性を持っています。

また、黒星病などの病害は、農薬等の散布で予防可能です。

王秋の栽培では、心腐れやみつ症に注意しなければいけません。

項目	症状	対策方法
心腐れ	梨の芯の部分が茶色に腐敗する	果実が過熟となると腐敗が拡大するため、適期の収穫か早めの収穫を行う。殺菌効果のある薬剤散布
みつ症	果肉の一部が水浸状となり、食味や貯蔵性が低下し、す入り（空洞になってスポンジ状）になることもある	適期収穫

どちらも、収穫後にも出る可能性がある症状であり、商品価値を落としてしまう可能性があります。

過熟を防ぐために、適期・早期収穫の徹底や、薬剤等での防除に努めましょう。

黒星病やその他の病害への対応策はこちらをご覧ください
「梨の黒星病の症状や対策方法について調べています」
「梨の赤星病を初期段階で防止するには、どう対策すればいい？」
「梨が胴枯病に。どう見極めてどう防ぐ？症状や対策を教えて」

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学　環境園芸学部　環境園芸学科　教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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