去年から畑の面積を増やしたのですが、繁忙期に人手が足りなくなり、大変な思いをしました。
最近、近所の農家が外国人を雇い、とてもよく働いてくれると話していたので、どうやって採用したのか聞いたところ、特定技能の外国人を受け入れているとのことでした。
うちでも採用してみようかと話し合っているところなのですが、気になっているのは仕事の範囲です。
農作業だけだと仕事がない時期もあるので、ほかの仕事も依頼できるのかが知りたいです。
うちには加工場もあり、収穫した野菜を加工して販売しているのですが、外国人にどこまで業務をお願いできるのでしょうか?
堀口健治
早稲田大学名誉教授
農業分野で特定技能外国人に依頼できるのは「耕種農業」と「畜産農業」
特定技能制度における「農業」とは
特定技能制度の「農業」分野とは、農業の深刻な人手不足緩和を目的とした在留資格の一種です。
農業分野における外国人労働者数は年々増加しており、2022年度で43,562人。
そのうち、全体の2割に当たる8,765人が特定技能を含む専門的・技術的分野で就労しています。
※参考:農林水産省「農業分野における外国人材の受入れ」
特定技能1号は在留期間の上限が通算で5年となっており、要件を満たせば2号へ移行できます。
特定技能2号は在留期間に制限がなく、家族の帯同も可能です。
特定技能1号・2号についてはこちらをご覧ください
「特定技能1号とは?農業や漁業でも雇用できますか?」
「在留資格の一つである特定技能1号について詳しく教えて」
「特定技能1号と2号の違いについて教えてください」
在留期間や継続雇用するにはこちらをご覧ください
「特定技能1号で5年の在留期間が満了したら、帰国しなければならない?」
「人材確保で利用増加の特定技能制度。外国人が就労できる在留期間は?」
農業分野で従事できる業務内容
特定技能の農業分野では、「耕種農業全般」もしくは「畜産農業全般」に従事できます。
・耕種農業全般…栽培管理、農産物の集出荷、選別等
例)施設園芸、畑作・野菜、果樹
・畜産農業全般…飼養管理、畜産物の集出荷、選別等
例)養豚、養鶏、酪農
また、同じ農業者の下で日本人が普段から従事している関連業務にも、付随的に従事することが可能です。
・関連業務…加工・運搬・販売の作業、冬場の除雪作業等
農業分野における特定技能の注意点
特定技能外国人が農業分野で活動する場合は、以下の点に注意が必要です。
・耕種農業全般と畜産農業全般の、両方に従事することはできません
・業務内容には、栽培管理または飼養管理の業務が必ず含まれていることが必要です
・関連業務にのみ従事することはできません
(例)
× 農産物の選別業務のみに従事させる
× 畜産物の運搬業務のみに従事させる
「農業」分野の特定技能外国人の受け入れ方法
特定技能外国人を受け入れるには、受け入れ機関(特定技能所属機関)が省庁で定められた要件を満たす必要があります。
具体的には以下の4点です。
1、外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
2、受け入れ機関自体が適切であること
3、外国人を支援する体制があること
4、外国人を支援する計画が適切であること
そのほか、国別に定められた手続きが別途必要になる場合がありますので、まずは専門家に相談することが望ましいでしょう。
雇用するための条件や書類についてはこちらをご覧ください
「特定技能1号の在留資格取得の条件と試験について教えてください」
「特定技能1号に該当する職種が知りたい。どの作業を任せていいの?」
「特定技能制度の雇用契約と労働条件とは?」
「特定技能制度を使って外国人を受け入れたいが、労働保険の加入が必要になるの?」
「特定技能外国人を受け入れたい!雇用するのに必要な書類は?」
農業分野における特定技能と技能実習の違い
特定技能と技能実習はどちらも外国人を雇用する在留資格という点では同じですが、制度の内容は大きく異なります。
まず特定技能は、農家の人手不足を補う「労働力」が目的です。
一方で技能実習は、日本の技術やノウハウを習得してもらい、母国の経済発展に役立ててもらう「国際貢献」が目的です。
業務範囲においても、特定技能ではメイン業務とそれに不随する業務が従事可能である一方、技能実習では業務の範囲や時間が制限されています。
加えて技能実習の就労期間は原則3年までですが、特定技能は2号へ移行すれば半永久的に在留が可能です。
昨今では技能実習から特定技能へ移行する外国人が増えており、特定技能外国人を受け入れやすくなっていますので、事業所に適した受け入れ方法を検討してください。
特定技能制度と技能実習制度の違いについてはこちらをご覧ください
「特定技能制度と技能実習制度の違いを教えてください」
このお悩みの監修者
堀口健治
早稲田大学名誉教授
専門は経済学(農業経済学・農業政策)。2002年から2004年まで日本農業経済学会会長を務め、2015年から2022年まで日本農業経営大学校校長。山形県高畠町の屋代村塾および同県寒河江市の葉山村塾の塾長も務めた。