3年前からサツマイモの生産をはじめましたが、今年から新しい品種に挑戦してみたいと思っています。
どんな品種を育てようか情報を集めていましたが、焼き芋で人気になっているのは、甘くてねっとりしたタイプなので、安納芋にしようかと検討中です。
サツマイモを栽培したことがあるので。大まかな流れは理解していますが、安納芋を栽培するのは初めてなので、どんなことに注意して栽培すればいいのでしょうか?
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山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
安納芋の栽培は水はけの良い土壌で初夏に植え付けを行い、秋頃を目安に収穫を行います
安納芋とは
安納芋とは、鹿児島県の種子島で昔から栽培されていたサツマイモの品種です。
通常のサツマイモよりも粘り気があり、わずかにカロテンを含み、甘味が強いという特徴があります。
べにはるかが開発される前は、一番甘いと言われていました。
新しく選抜育成された安納芋には、皮色が薄紅をした「安納紅」、黄色味を帯びた「安納こがね」の2つの品種があります。
安納芋の栽培方法
安納芋の栽培方法は以下のような手順で行います。
・苗の準備
・ほ場の準備
・苗の植え付け
・収穫
栽培方法を詳しく見ていきます。
苗の準備
まず、安納芋の種芋を準備します。
3月末に苗床に種芋を伏込み、十分に潅水をしてからトンネルをかけ、芽が出てくるまで出来るだけ地温を上げます(30℃以上)。
芽が出てからはトンネル内が30℃以上にならない様に換気して下さい。穴あきトンネルを使うと便利です。
安納芋の萌芽性や苗の伸びはべにはるかより良好で、育苗は楽な方です。
長さ35cmほどまで成長したら、地際部5cm位のところで切り取って植えて下さい。
降雨が見込まれる場合は数日間室内で苗を保存することもできます。
種芋についてはこちらもご覧ください
「サツマイモ栽培で種芋の選び方を教えてください」
ほ場の準備
苗の準備と並行して、安納芋を栽培するほ場の準備を行います。
ほ場の準備では、以下の作業を行います。
耕起・・・トラクターなどで作土を掘り起こして反転させること
砕土.・・・耕起の後にハイローなどを用いて土の塊を細かくする作業
砕土は1回ではなく、畝を立てるまで、雑草の発生を見ながら数回行います。
ツルボケを起こしやすい品種ではありませんが、肥沃過ぎるとイモが大きくなって味が落ちるので注意しましょう。
窒素は10アール当たり4kg以内とし、カリ分を多く入れて下さい。
土づくりに関してはこちらもご覧ください
「サツマイモの栽培に最適な肥料について教えてください」
「サツマイモを栽培する際に散布する肥料の効果とは?」
「サツマイモへ肥料を与える時期を知りたい」
「サツマイモを栽培する土壌のphについて知りたい」
「サツマイモ栽培で起こる「つるぼけ」について知りたい」
苗の植え付け
畝の準備が整ったら、苗床から前を切り取り、植え付けを行います。
安納芋の植えつけ時期は霜の心配がなくなって後(5月連休後)に行ってください。
種子島では無マルチです。
その他の地域でも無マルチとすることでイモの過剰な肥大を防ぎ、食味を良くすることができます。
株間を30から35cmほどで水平に植え付けることで芋数が増え、イモの揃いが改善します。
畝間や土寄せ、マルチについてはこちらをご覧ください
「サツマイモ栽培の畝間について悩んでいます。どのくらいの幅にすべき?」
「サツマイモ栽培でのマルチングの効果が知りたい」
「サツマイモ栽培時に土寄せをする意味を知りたい」
収穫
植えつけから栽培までは、天候を見ながら栽培状況を確認しましょう。
無マルチでは、植え付け後150日ほどで収穫適期を迎えます。
収穫は安納芋が濡れないように、必ず晴れた日に行うようにしましょう。
収穫後はすぐに出荷するのではなく、倉庫などで保管をします。
熟成することで安納芋の糖度が増していくので、13~15℃の温度の倉庫で、1カ月以上貯蔵をしてから出荷しましょう。
べにはるかと比べ、貯蔵性が劣るので温度や湿度の管理に気を付けて下さい。
収穫時期を見極める方法についてはこちらをご覧ください
「サツマイモの品種別に収穫時期を見極める方法を教えてください」
安納芋栽培に適した環境
安納芋の栽培が主に種子島で行われてきたのは在来種であるという要因があります。
しかし、最近では兼六という品種が流れていったという説も言われています。
私の畑でも、無マルチの有機圃場で良いものができています。
安納芋栽培時のポイント
安納芋は、古い品種であるため、芋の大きさが揃いにくい欠点があります。
特にマルチ栽培で短い苗を使う時には注意が必要です。
徒長していないしっかりとした苗を水平に植えることでイモのかすを確保して下さい。
サツマイモの一般的な栽培方法についてはこちらをご覧ください
「サツマイモを栽培したい!栽培方法や注意点を教えてください」
このお悩みの監修者
山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
京都大学農学部卒、農学博士。農林省九州農業試験場では、サツマイモやイチゴの新品種を多数育成。1996年日本育種学会賞。1998年農林水産大臣賞。山川アグリコンサルツ代表として、食品関連企業の顧問や地域の活性化アドバイザーとして活躍。千葉大学園芸学部非常勤講師。『サツマイモの世界 世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり』など著書多数。