サツマイモの主な病気が知りたい！原因も教えて

YUIME Japan編集部 / 2023.08.16

分析・管理

#サツマイモ #野菜作 #病害虫 #根菜類

文字サイズ

拡大標準

これまで葉物野菜を中心に育ててきましたが、離農する農家さんから圃場を借りられることになったので、新たにサツマイモを育てたいと考えています。

お借りする畑では元々サツマイモを育てていたので、栽培しやすいのではないかと思うのですが、気になることがひとつあります。

それは、数年前にこの圃場で基腐病が発生し、大きな被害を出したということです。

農家さんに聞くと「ちゃんと土壌消毒したから大丈夫」と言っていましたが、ここ数年は耕作放棄地のような状態だったので、本当に大丈夫なのかわかりません。

そこで、サツマイモの葉や茎、根（塊根）の異常が出た場合、症状によって考えられる病気の原因や適切な対策を教えてください。

山川理

山川アグリコンサルツ代表、農学博士

フォローする

サツマイモは土壌病害が多い作物です。消毒と早期発見を心がけましょう

サツマイモの土壌病害の種類と対策一覧

サツマイモが病気になる原因は、カビの一種である糸状菌やバクテリアの仲間の放線菌、ネコブセンチュウによる感染によるものです。

まずは菌やバクテリアによって引き起こされる病気の原因と対処法を紹介します。

ツル割れ病（フザリウム菌）

ツル割れ病は日中に下葉がしおれ、夜になると元に戻ることを繰り返します。

被害を受けた株は早めに抜き取って処分してください。

ベニコマチなど、品種によって非常に病気に弱いものががあります。

防除は定植前の種芋や苗の消毒、土壌消毒が有効です。「ベンレート水和剤」などの農薬を使って対処しましょう。

立ち枯れ病（ストレプトミセス菌）

立ち枯れ病はツルの生育が抑制され、葉が黄色から紫紅色になって枯れていきます。

さらに根（塊根）に黒い病斑ができます。

高い土壌ph条件（5.5以上）だと、発病が助長されてしまうので、過度の石灰資材の使用は控えてください。

発病した圃場では「クロルピクリン剤」による土壌消毒が有効です。

軟腐病（リゾクトニア菌）

軟腐病は病原菌が傷口から侵入し、貯蔵中あるいは輸送時に発病します。

最後は塊根が軟化・腐敗し、アルコール発酵した臭いを放ちます。過湿な土壌で発生しやすい病害です。

防除方法は塊根をキュアリング処理（収穫後の土付きサツマイモを温度・湿度の調整によって貯蔵する方法）することで抑えることができます。

軟腐病の予防方法についてはこちらをご覧ください
「軟腐病（なんぷびょう）とは？原因や対処法を知っておきたいです」

基腐病（ディアポルテ菌）

基腐病は現在も被害が拡大している深刻な病気です。

発症するとすぐに生育不良となり、根（塊根）が黒変して腐敗します。

防ぐ方法は健全な種芋を、過去に基腐病が発生したことのない圃場に定植します。

その後も排水管理などに気を配り、発病を確認したら速やかに二次伝染を防ぐために処分します。

葉や茎がしげる夏以降は要注意で、病気の進行を見逃すと、最悪全滅してしまう恐れもあります。

基腐病の対策についてはこちらをご覧ください
「サツマイモ基腐病の発生原因と防除方法を教えて」
「サツマイモの基腐病が発生した際の対処法は？」

病気は圃場に持ち込まず、収穫後は土壌消毒が基本

サツマイモは土壌病害が多い作物です。

収穫が終わった後は、きっちりと土壌消毒を行い、病気の対策をしてください。

また、病気は種芋や苗によって伝染することが多いので、慎重に健全な種芋を使用し、使う際の消毒も徹底してください。

あとは早期発見を心がけることです。早めに対策を行えば、病気の蔓延を防ぐことも可能です。

ほかのサツマイモの病害についてはこちらをご覧ください
「サツマイモの黒斑病（こくはんびょう）の症状と防除方法を知りたい」

このお悩みの監修者

山川理

山川アグリコンサルツ代表、農学博士

京都大学農学部卒、農学博士。農林省九州農業試験場では、サツマイモやイチゴの新品種を多数育成。1996年日本育種学会賞。1998年農林水産大臣賞。山川アグリコンサルツ代表として、食品関連企業の顧問や地域の活性化アドバイザーとして活躍。千葉大学園芸学部非常勤講師。『サツマイモの世界世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり』など著書多数。

いいね（1）