今年からサツマイモ栽培を始めようと思っている専業農家です。
サツマイモを栽培するためには、肥料の散布に注意するよう先輩農家からアドバイスをもらいましたが、具体的な肥料の効果についても押さえておきたいです。
各種肥料の効果や、散布方法、注意点などを教えてください。
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山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
サツマイモ栽培に使用する肥料の3要素を紹介します。散布し過ぎに注意しましょう
サツマイモ栽培の肥料の種類と効果について
サツマイモの栽培には、以下の栄養素をバランス良く同量に配合した肥料を散布します。
・窒素
・リン酸
・カリウム
サツマイモをはじめとする作物の成長具合は、肥料の使い方によって左右されます。
トラブルや病害の発生率も変動してくるため、各肥料の種類と効果について、確認しておきましょう。
肥料を与える時期や最適な肥料についてはこちらをご覧ください
「サツマイモへ肥料を与える時期を知りたい」
「サツマイモの栽培に最適な肥料について教えてください」
窒素|作物の葉を成長させる
窒素は、作物の光合成に必要な葉緑素を生成する重要な栄養素です。
窒素肥料は「葉肥(はごえ)」とも呼ばれ、作物の生育初期に散布することが効果的です。
茎が伸長して葉を広げていく成長度合いは、土壌に含まれる窒素によって変動します。
また、窒素はタンパク質の元になります。土壌の窒素が不足することで、作物の葉や茎が成長不良を引き起こしてしまうのです。
小ぶりで色が薄い葉が形成されたり、茎の成長が悪くなったりするため注意しましょう。
窒素肥料の与えすぎにも注意が必要です。葉が栄養過多に陥ることで大きく育ち過ぎてしまいます。
作物によっては花や実がならず、害虫の被害を引き起こしやすくなります。
窒素肥料の種類5つ
作物の栽培に使用する窒素肥料5種類の特徴について紹介します。
・硫安
・塩安
・硝安
・尿素
・石灰窒素
硫安(硫酸アンモニウム)
硫安(りゅうあん)は、比較的安価で手に入る窒素のみを含んだ単肥です。施肥すると1ヶ月ほど効果が持続します。
作物の吸収率も良いことも特徴の1つです。
水に溶けて土壌になじみやすいことから、窒素補給やタンパク合成に向いています。
しかし、水に溶けやすい分気温の高い時期や雨が多い時期は有効期間が短くなってしまう点には注意が必要です。
塩安(塩化アンモニウム)
塩安(えんあん)は、アンモニア性窒素を25%ほど含んだ複合肥料です。
土壌に散布すると、水に溶けて副成分の塩素が残るため、繊維作物の栽培に適しています。
硫化水素の発生が少なく、作物の根腐れを防ぐ効果も期待できる肥料です。
硝安(硝酸アンモニウム)
硝安(しょうあん)は、アンモニア性窒素と硝酸性窒素を1:1で配合した肥料です。
水によく溶けて即効性があるため、土壌を酸性化しにくい特徴があります。
起爆性があるため、油と混ぜないように注意が必要です。
尿素
尿素は、窒素を40%以上含む単肥です。
即効性に富んだ特徴があります。
水に溶かして液肥としても使用でき、葉面散布の肥料にも最適です。
窒素の含有量が高いため、散布し過ぎないようにしましょう。
石灰窒素
石灰窒素は、カルシウムと窒素を含む肥料です。
散布当初は、害虫や雑草を防ぐための農薬としての効果を発揮します。
石灰窒素の成分が土壌で分解されると、アンモニア性窒素に変化して肥料としての効果が表れます。
なお、石灰窒素を使用する際は、防護マスクやメガネを装着して、肌に付着させないように取り扱いましょう。
リン酸|作物の開花や結実を促進する
リン酸は、作物の開花や結実を促進する栄養素です。
植物を栽培する際、肥料として使用する頻度が高く、農家では、果実の成熟や品質向上のために重宝されています。
日本は温暖で雨量が多い気候であるため、土壌微生物が活発に活動しやすいことが特徴です。
リン酸を使うことで適切な農業が営まれています。
土壌のpHが酸性にかたよると、植物がリン酸欠乏の状態を引き起こします。
根の伸長や花芽の形成を良くするためにも、リン酸は作物の栽培に欠かせない肥料の1つといえます。
リン酸肥料の種類3つ
作物の栽培に重宝されるリン酸肥料3種類の特徴を紹介します。
・過リン酸石灰
・苦土重焼リン
・熔成リン肥
過リン酸石灰
過リン酸石灰は、速効性と水溶性を持つリン酸肥料です。水に溶けやすい性質から、圃場外へ流れ出やすい肥料です。
流出を防ぐためには、リン酸を保持しやすい腐植を一緒に与えて対策しましょう。
苦土重焼リン
苦土重焼リン(くどじゅうしょうりん)は、緩効的に溶けて効果を発揮する「く溶性」を持つ肥料です。
根や土壌の微生物が分泌する有機酸によって緩効的に溶けるため、長期的に効果が続きます。
熔成リン肥
熔成リン肥(ようりん)は、マグネシウムとカルシウムの含有量が多い肥料です。
苦土重焼リンと同じく「く溶性」を持つため、緩効的に肥料が効きます。
一般的には、元肥として施用する傾向があります。
カリウム(加里)|作物の根を太らせる
カリウムは、作物の根や球根を太らせる効果があります。
サツマイモを含む根菜類を栽培するために欠かせない肥料です。
土壌からカリウムが欠乏すると、作物の葉を縁取るように色が抜けて枯れてしまいます。
また、過剰に施肥するとマグネシウム欠乏を引き起こしてしまうため、与え過ぎに注意しましょう。
なお、作物の栽培で利用するカリウム肥料は以下の2種類です。主に、元肥として使用されています。
・苦土石灰(くどせっかい)
・塩化カリウム
サツマイモ栽培に使用する肥料と土壌の相性
サツマイモは排水性が良く、やや酸度土壌を好む作物です。
肥料の吸収力が強いため、痩せ地でもよく育ち、野菜栽培の後ならむしろ肥料なしの栽培に適しています。
肥料を配合する場合は、窒素を少なく、カリウムが多くなるようにしましょう。
土壌酸度は6前後とし、異端な酸性にならない限り調整する必要はありません。
数値が7に近くなるとイモの色や味が落ちてしまいます。
窒素とカリウムの比率が1対2くらいのサツマイモ専用配合肥料があるので利用すると便利です。
施用量は窒素成分換算で10a当たり2〜4㎏程度になるようにして下さい。
野菜跡地ではツルボケに注意し、カリ肥料だけを与えて下さい。
有機物としては害虫の発生を防ぐため、できるだけ植物性のものを使うことをおすすめします。
土壌の最適なphやつるぼけ対策についてはこちらをご覧ください
「サツマイモを栽培する土壌のphについて知りたい」
「サツマイモ栽培で起こる「つるぼけ」について知りたい」
土づくりの堆肥として牛ふんを使う方法もあります
「サツマイモ栽培での牛ふんの役割や使い方を知りたい」
このお悩みの監修者
山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
京都大学農学部卒、農学博士。農林省九州農業試験場では、サツマイモやイチゴの新品種を多数育成。1996年日本育種学会賞。1998年農林水産大臣賞。山川アグリコンサルツ代表として、食品関連企業の顧問や地域の活性化アドバイザーとして活躍。千葉大学園芸学部非常勤講師。『サツマイモの世界 世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり』など著書多数。