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米作りの方法が知りたい!時期や田植えから収穫までの作業は?

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米作りの方法が知りたい!時期や田植えから収穫までの作業は?

これまで野菜を栽培していましたが、近くの水田を借りることができたので、米作りをはじめようと考えています。

水田の元の所有者は高齢で、親族と一緒に暮らすために集落を離れてしまったので、米作りの基本を教わることができませんでした。

まずは自分で食べる程度の収量を確保したいと考えていますが、米を栽培した経験がないので手順や費用、必要な設備などがわかりません。

基本的なことですが、米作りの方法を教えてください。

佐々木茂安

日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント

米作りは時期ごとにさまざまな作業があります。基本情報を押さえながら栽培しましょう

米作りのスケジュール(1年間の流れ)


水田のイメージ図

地域や育てる品種にもよりますが、米の栽培は、植え付ける前年の冬から準備をしておく必要があります。

米作りには、田植え日を起点として、前後に次のような作業があります。

項目

内容

作付計画作成

品種選定や栽培日程等の作成

土づくり

前年作の藁や有機物の分解促進、必要要素の補給、耕盤破砕

種子予措

種子の準備、種子伝染性病害対策、浸種、芽出し

育苗

箱への土入れ、播種、覆土、出芽、緑化、硬化、それぞれに温度管理と水やり

耕起と代かき

耕起後の入水、代かき

田植え

病害虫対策の箱施用剤施用、移植、側条施肥、同時除草剤散布

田植え後

水管理、(植え干し、中干し)
※水管理のあり方で収量・品質がほぼ決まります

施肥

追肥(田植え1ヶ月から45日後追肥)、穂肥出穂前25日前~18日前など

本田防除

斑点米カメムシ、いもち病、紋枯病対策

収穫

収穫作業

乾燥調製出荷

玄米水分15(粳は許容+1)%以下、粒厚選別、色彩選別、重量測定等

検査

外観検査

その他

年間を通じて、畦畔、用排水の補修、管理


作付計画作成


はじめに、どの品種を、どれくらいの面積で栽培するのか、作付計画を作成します。

作付けする品種は、周辺で栽培されている品種や、他の作物を栽培している場合には、農作業の時期が被らない品種を選びましょう。

品種と作付け面積が決まったら、これまでの農事暦などを参考に年間の栽培日程を作成します。


土づくり

水が入っていない田んぼ


まず12月ごろに堆肥散布と溝づくりを行いましょう。

堆肥は一般的な化成肥料とは違い、堆肥中にある成分が植物に吸収されやすくなる形に分解されるのに時間がかかります。

そのため、12月に撒いておくと、春先に肥料の効果が出てきます。

堆肥を散布した後、すぐに自分で耕耘(田を耕すこと)し、土中にすき込みます。

加えて、溝づくりや溝切り(田んぼに水の通り道をつくる作業)もしておきましょう。

この作業を行うと、耕盤に空気を入れるだけでなく、田んぼの水はけを良くし、春先の作業をしやすくする効果があります。


種子予措・育苗


種籾の写真

3月ごろに苗づくりと定植の作業を行います。

まず、病気にかかっていない胚乳の充実した種を確保するため、購入した種籾(たねもみ)を、卵の頭が見える程度の濃度の塩水に入れます。

沈むものだけを選別し、浮くような軽い籾は除去しましょう。この作業を「塩水選」と呼びます。

塩水選の写真

塩水選が終わったら、種籾を消毒しましょう。

種籾を病害から守るため薬剤に漬け込み、1日ほどそのままにしておきます。

その後、種籾を日陰で広げて、自然乾燥させます。

乾燥したら、種籾を発芽させるために、必要な水分を吸収(浸種(しんしゅ))させます。

吸収させる日数は水温によって異なり、積算温度が100度を目安に浸種します。

浸種させている写真

浸種を終えたら、風を当てて種籾を乾燥させ、土入れが完了した育苗箱(種籾から苗を育てるための浅いプランター)に撒きます。

この時、田植機でうまく植え付けられるように、均質に撒きましょう。

育苗箱の写真

種籾を育苗箱に撒いた後は、苗代田(なわしろだ)に並べて、ビニールトンネルで保温する保護苗代や、育苗箱を育苗器に入れて保温し、発芽を促します。

発芽した苗

種まきから10日間ほどで、苗は8センチほどに成長します。

育苗器を使う場合は、発芽した苗に急に強い光をあてると苗が痛むので、予備緑化として1~2日、寒冷紗等で50%ほど遮光します。

草丈が2~3cmほどになったら苗代田や育苗ハウスに移動させて、寒冷紗(かんれいしゃ)をかけて保温します。

緑化が進んだら自然条件の下で約10日間鍛える「硬化」を行いましょう。

寒冷紗で被覆した苗

ビニールトンネルで保温した場合は、気温が上昇し、保温の必要がなくなったらビニールトンネルをはずしましょう。

ハウスからのしずくで、育苗箱の表土に穴が空くことがあるのでご留意ください。

温度や光の不足は、苗が弱く、徒長(伸びすぎ)の原因になります。

徒長苗の場合は、育苗箱を外気にさらし、低温にあてることで、堅く強い苗にします。

なお、低温強風の場合は、葉が焼けることがあるので、予想される場合は被覆しましょう。

また、夜間が根の成長限界である12℃を下回る場合は、深水にして水の水温で保温しましょう。


耕起と代かき

代かきの写真


圃場では、田起こしを行います。

田起こしには、冬場の凝り固まった土壌に酸素を与える役割があります。

ロータリなどで肥料を撒きながら土をかき混ぜ、生育に必要な養分を補給します。

次に代かきを行います。

田植えができる圃場を作るため、田んぼに水を入れ、ハローで土とまぜ合わせて、水の深さにムラが出ないように土の表面を平らにならします。

米作りにつかう水や代かきのコツはこちらをご覧ください
米作りを行うのに、どれくらいの水の量が必要になるのでしょうか?
荒く代かきをした方が元気な稲が育つというのは本当?



田植え


田植え機が田植えをしている写真

田植えまでに苗の状態を確認します。

草丈は12~15センチほど、株元まで鮮明な緑色で、第一葉が3~3.5センチ程度あると良いです。

田植えの作業は、田植え機を使えば手軽に行うことが可能です。

田植えは収量や品質に大きく影響するので、数メートル試し植えをしてから、苗の姿勢や本数、密度の状態を確認し、田植機を調整する必要があります。

また、苗を植える深さも重要です。植付の深さは浅植えにしましょう。

田植えのポイントはこちらをご覧ください
米作りの田植え作業はどのように行うといいのでしょうか?



田植え後と施肥


中干しの写真

苗の根に酸素を入れるために、田んぼから水を抜いて土を乾かす作業をします。

これを「中干し」と呼びます。

春先の施肥の際に、緩効性の肥料を与えていない場合は、追肥(生育中にもう一度肥料を撒くこと)も行いましょう。


本田防除


病害虫の初期防除のために、本田の防除を徹底して行いましょう。

最近では、気候変動の影響で病害虫の発生に応じた適期防除が難しく、病害虫が増殖するスピードが速い場合もあります

突発的に発生してしまうと、緊急防除を行っても間に合わない場合もあるので、効果が長く続く薬剤を使用し、計画的な予防散布を考えましょう。

特に、田植え後のこの時期には、いもち病、紋枯病、斑点米カメムシなどの害虫などを叩いておくと良いです。

※主な水稲殺菌成分の特性一覧
https://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/8a5090096c2b28bc3c6e413c3b26936d.pdf

※主な水稲殺虫成分と適用害虫はこちらhttps://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/f773ae4438688852a1a2cab220348987.pdf

スズメの対策についてはこちらをご覧ください
米作りでのスズメの対策方法を教えてください



除草作業


ドローンの農薬散布

雑草が繁茂しはじめる季節になったら、圃場の環境を整えて雑草が生えにくくする「耕種的防除」と、化学薬剤を使用して防除する「化学的防除」を行いましょう。

耕種的防除は、 まずは作土の掘り起こし(耕起)をしっかりと行い、代かきも行いましょう。

また、雑草の種を残さないように注意することが大切です。

化学的防除としては、最近では、定植と同時に施用する「田植同時・初中期一発除草剤」を使う農家さんが多くなってきています。

一発除草剤の「テフリルトリオン」や「ピラクロニル」は、雑草の発芽を抑制する効果があるため、1年間圃場内の雑草の発生を軽減させることが可能です。

また、畦にも除草の対策をしておきましょう。放っておくと雑草が生い茂り、圃場内に匍匐茎(ほふくけい)が入り込んでくる可能性があります。

畦は「ラウンドアップ」や「バスタ」といった薬剤を使用したり、草刈機を使い定期的に刈り取ります。

ムラなく散布できる農薬散布専用ビークルや、ドローンを使い農薬散布を行う農家もいます。

田んぼに生えてくる雑草の対策はこちらをご覧ください
米作りで生えてくる雑草の対策方法を教えてほしい


収穫

コンバインで収穫している様子

登熟が進み、穂が黄金色になったら、コンバインを使って収穫作業を行います。

早く収穫し過ぎると、青未熟と呼ばれる青い米がたくさん出てしまいますし、遅れると胴割れの原因になるので、注意しましょう。

積算温度がわかれば、稲の収穫適期も予測できますが、最近では 異常気象の影響で、稲の生長が狂うケースがあります。

判断方法でもっとも一般的なのは、籾の黄色化(穂が緑色から黄色に熟すこと)率による診断です。

黄色っぽい籾が90%程度になった状態が収穫時期の目安です。

穂軸から枝が9本ほど生えている稲を10本ほど用意しておき、8本以上が黄色化率を9割超えれば収穫時期だと考えましょう。

また、一部の稲を収穫し、水分計で測る方法もあります。

早生の場合、収穫に適した籾の水分は24%~28%ほどです。

稲の収穫適期についてはこちらをご覧ください
米の収穫時期を教えてください



乾燥調製出荷・検査


収穫した米はそのままだと水分値が高すぎるので、乾燥させる必要があります。

収穫後の調製作業は調製機器(乾燥機・籾摺り機・粒厚および色彩選別機)を使うと便利です。

調整作業

籾摺り機で籾の表面が取り除かれると玄米の状態になります。

米を出荷する際は玄米の状態で出荷することになります。最後に玄米を袋詰めし、出荷しましょう。

心白米を判別する方法はこちらをご覧ください
色彩選別機で心白米を判別する方法はありませんか?



収穫後の作業


荒耕起の様子

収穫作業が終わったら荒耕起(田を荒く耕すこと)をして、土に空気を入れておきましょう。

この作業を行うことで、12月に堆肥を入れる際、効率よく行うことができます。


米作りにかかる費用


米作りの費用にはおもに「種苗費」「肥料・薬剤費」「燃料費」などと、面積に間接的に増える機械等の減価償却費、賃借料があります。

農林水産省が発表している「令和2年産 米生産費(個別経営)」によると、物財費(農機具費、賃貸料、肥料代、農業薬剤など)に労働費を加えた米生産費は、個別経営の農家の場合、60kgあたり1万5,046円、10aあたり12万9,1861円となっています。

米作りに必要な機械はこちらをご覧ください
米作りにはどんな機械が必要なのでしょうか?


種苗費にかかる費用


種苗にかかる費用は、「自分で苗を作る」か「育てられた苗を購入するのか」により変わります。

はじめて米作りをする場合、自分で苗を作るのはおすすめしません。

苗の良し悪しは収量に大きく影響します。初心者の方は、育てられた苗を購入するのがおすすめです。

育てられた苗を購入する場合、「発芽苗」と「硬化苗」によって、費用が異なります。

発芽苗は発芽しただけの苗で、購入後、自分で育苗管理をする必要があります。反対に、硬化苗はすでに育苗管理が終わった苗で、すぐ植え付けることができます。

値段は1箱あたり、発芽苗が400~500円、硬化苗は800~900円です。

育苗箱は10aあたり15~20枚ほど必要になるため、合計で6000~18000円ほど必要になります。


肥料・薬剤費にかかる費用


稲づくりには、堆肥、元肥、殺虫殺菌剤、除草剤が必要になります。

堆肥は種類(牛糞、豚糞、鶏糞など)や地域により値段も変わりますが、牛糞堆肥や豚糞堆肥を購入する場合は1トン4,000円程度。鶏糞堆肥の場合は200kgで3,000〜6,000円程度です。

肥料は時価により変動し、高騰する傾向がありますが、1袋20kg入りで3,000円前後。10aあたり2袋~4袋ほど必要になるので、10,000円ほどかかります。

農薬代(殺虫殺菌剤・除草剤)は、10aあたり、8,000円前後かかります。


燃料費(光熱費)にかかる費用


米作りでは、主にガソリン、軽油、混合油を使用します。燃料価格は変動しますが、農林水産省の統計によると、10aあたり5,000円~6,000円ほど必要になります。

ほかにも、畦畔の除草対策に1㎡あたり63円ほどが必要となり、さらに自動車や建物(作業庫など)にも経費がかかります。

地域によっても金額は変動するので、目安として考えましょう。

米作りのための費用についてはこちらをご覧ください
米作りにかかる費用の目安を教えてほしい

このお悩みの監修者

佐々木茂安

日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント

滋賀県の改良普及職及び研究職を経て、2014年に「佐々木農業研究会」を設立。農業経営技術コンサルタントとして、栽培技術の指導や農業生産者の自己研鑽活動を支援。会員は秋田から愛媛まで80人。日本水稲品質・食味研究会および日本科学者会議(支部は滋賀県)会員

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