新米農家です。師匠のもとで米作りを学び、独立しましたが、思ったような品質の米を作れていません。
まずはゼロから学び直そうと、近隣の先輩農家さんたちに相談していますが、みんな言うことが少し違うので、どうすればいいのかと悩んでいます。
とくに苗の草丈の状態や、苗を植える深さなど、田植え作業について悩むことが多いので、アドバイスをいただけないでしょうか。
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佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
田植え作業には前準備と段取りが重要です
苗の状態を確認する
田植えの前に、苗の状態を確認しましょう。
まずは草丈(苗全体の高さ)です。草丈は12~15センチほどが望ましいです。
12センチ以下である場合、田植えをすると土の中に埋まってしまいますし、15センチ以上の場合は、植えた後、風などで煽られて倒れてしまう恐れがあります。
もし短い場合はもう少し育苗をするなどの対応をして、長い場合は葉を切断するなどの対処をしましょう。
次に苗の色です。株元まで鮮明な緑色であることが望ましいです。
白っぽい部分が長い場合は、老化や軟弱徒長している恐れがあります。
もし老化している場合は、追肥(箱あたり窒素1グラム)を与えたり、水溶性炭水化物を与えるなどの対策を行いましょう。
苗の下部から数えて最初に開いている葉を確認しましょう。
この葉のことを「第一葉」と呼びます。第一葉は下から数えて3~3.5センチ程度であることが望ましいです。
本圃の準備
本圃(実際に米作りをする田んぼ)の準備の内、苗植えを容易にする作業は代掻きです。
代掻きとは、耕起した圃場に水を張り、土と水を混ぜ込みながら田面を均平にする作業です。
代掻きには田んぼの水漏れを防ぎ、元肥(作付のはじめに入れる肥料)を混ぜ込み、苗が植えやすく、活着を良くする効果もあります。
こうして準備が整ったら、田植機を使って田植え作業を行います。
田植機の設定
田植機は密度(㎡あたりに植える苗の数)や深度(苗を植える深さ)、株あたりの植え付け本数を設定することができます。
たくさん植えれば植えるほど、たくさんの収穫物を得られるというわけではありません。
一般的に、寒冷地になるほど栽植密度(㎡あたりの植え付け株数)を多くし、暖地になるほど少なくします。
密度を多く設定してしまうと、株同士が重なったり、株間の風通しが悪くなったりして、病気の原因になります。
また、苗を植える深さも重要です。
浅すぎる場合は風や水の波立ちで浮き苗(苗が活着せず、水の上に浮いてしまう)が発生し、深すぎる場合は埋め苗(苗が土の中に埋没してしまう)になってしまいます。
基本的な深さは2~3センチ程度です。
苗は浅く植えると分げつしやすく、深く植えると分げつが減ります。
植え付け時の気温によりますが、寒冷地では植え付け後、深水にして苗を風や寒さから守るため浮き苗が発生しやすくなります。そのため、深植えの傾向にあります。
一方で、千葉県などの太平洋側や近畿以南では、植え付け後、浅水管理の方が活着が早く、分げつをとりたいため浅植えが多いです。
滋賀県では、土壌還元害を避けるため、植え干しといって、植え付け後すぐには入水せず、1~2日後根が張りだしたら入水し、除草剤を散布する方法をとる生産者が多いです。
そのため、風害を避けるよう、相対的に苗は短くし、植え込みも浅くしています。
なお、田植えと同時に除草する場合、水深が深くなる傾向があり、深植え傾向にありますが、遅れ穂が発生するなどが問題になるので注意しましょう。
田植え作業は、収量や品質に大きく影響するので、圃場ごとに数メートル試し植えをして、苗の状態を確認しながら田植機を調整する必要があります。
浅植えの場合は抵抗を感じることはありませんが、深植えの場合は手で抜いた際、ある程度の抵抗がある感覚が望ましいです。
植付の深さは圃場条件や代掻きの良し悪しによっても変わるので、その都度微調整をしましょう。
米作りで使用する農機具ついてはこちらをご覧ください
「米作りにはどんな機械が必要なのでしょうか?」
このお悩みの監修者
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
滋賀県の改良普及職及び研究職を経て、2014年に「佐々木農業研究会」を設立。農業経営技術コンサルタントとして、栽培技術の指導や農業生産者の自己研鑽活動を支援。会員は秋田から愛媛まで80人。日本水稲品質・食味研究会および日本科学者会議(支部は滋賀県)会員