私が農業を行っている地域では耕作放棄地が問題となっていて、とくに米農家さんの離農が続いています。
私自身は露地栽培で野菜を栽培していますが、このまま耕作放棄地が広がると地域にとっても良くないので、できれば稲作もやってみようかと考えていました。
しかし、同じ地域の米農家に相談したところ「米作りにはさまざまな問題があるのでやめたほうがいい」と言われました。
稲作は機械化も進んでいて、あまり問題はないイメージをもっていたのですが、どのような問題があるのでしょうか?
解決策があれば協力したいので、教えていただきたいです。
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
米作りは問題が多くある一方で、解決に向けた動きも加速しています
収量が多様な要素に左右される
米づくりは天候の影響が出やすい作物です。
豊作の年と不作の年を比べると、収穫量の差は10アールあたり100キロ~200キロも違うことがあります。
そのため作業の予測を立てることが難しく、経験が浅い農家の場合、栽培管理ができずに、経営不振に陥るケースがあります。
多様な要素の問題の解決策
お米づくりは、日当たりなどの環境、土壌条件、水利の条件のほか、天候の影響、病害虫の発生など、年ごとに環境が変わります。
そのため、生育も毎年変わりますが、収量や品質が高くなるように、手を加えて仕上げることが重要となります。
農業試験場や病害虫防除所では、その年の生育状況、病害虫の発生状況や予測などを紹介しているので、参考にしてみましょう。
農作業事故
農業をされている方は、いつまでも元気な方が多いですが、近年、高性能の機械が開発・利用されているにもかかわらず、農作業事故が増えており、作り手がいなくなったケースも少なくありません。
農作業事故の解決策
農機具を使用することは、事故と切り離せないものです。
そのため、利用している機械でどのような事故が発生しているか、農業大学校などの研修に参加して、どのようなことに注意すべきかを学びましょう。
また、人が乗らないロボット化が進んだ農業機械も、今後想定できない事故があるかも知れません。注意を怠らず扱いましょう。
米価格下落の問題
日本人のパン食が進み、米離れによって米の消費が落ち込んでいます。
1人当たりの年間消費量は1990年に70キロ程度あったのに対し、2015年には55キロにまで減少しました。
それに伴い、米集荷業者の買取価格も年々下落しています。
こうした米価格の下落の影響で気力がなくなってしまったり、経営難に陥り米農家を辞めてしまう農家もいるのです。
米価下落の解決策
一昔前まで、農家は作物を作ってさえいれば、全農が買い取ってくれていました。
しかし、現代の農家は「作る」だけでなく、自ら「売る」ことが重要になっています。
「米余り」がニュースになる一方で、百貨店や高級ホテル、高級レストランでは「良い米」の需要は高いまま、こだわりのストーリーを持って生産したお米を全農の買取価格より倍近い値段で売っている米農家も存在します。
また、主食用の米ではなく、加工用米や飼料用米を生産することも解決策のひとつです。
主食用米に比べると売値は安くなりますが、「水田活用直接支払金」という補助事業を使うと、10アールあたり5万円~10万円程度の助成金を貰える可能性があります。
紹介した問題以外にも、米農家の担い手不足など、人材面での問題もあります。
人材不足の問題についてはこちらをご覧ください
「米作りの高齢化がすすんでいます。担い手不足はどう対策すべきですか?」
まとめ
農地は圃場だけでなく、隣接する圃場や水の環境などが影響します。特に雨水を利用する場合、十分な水を確保できないケースもあり、周辺の生産者や土地の所有者の理解、協力が必要になります。
また、地域で規模を拡大したい農家がいない場合、耕作をやめた圃場は耕作放棄地になります。
耕作放棄には、作りにくい、収量がない、獣害があるなどの何かしらの理由が考えられます。
そのため、周囲の生産者と連携し、規模拡大の計画作成と認定農業者になり、農地の集積化などをはかりましょう
一人で対処できないことは、関係者を含めて、地域全体で対応することが必要になります。
自分が農業を進める上で、仲間を作り、自分の応援隊を作っていきましょう。
このお悩みの監修者
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
滋賀県の改良普及職及び研究職を経て、2014年に「佐々木農業研究会」を設立。農業経営技術コンサルタントとして、栽培技術の指導や農業生産者の自己研鑽活動を支援。会員は秋田から愛媛まで80人。日本水稲品質・食味研究会および日本科学者会議(支部は滋賀県)会員