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栽培漁業の放流はどのように行われているのですか?

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栽培漁業の放流はどのように行われているのですか?

魚を卵や稚魚から育てて海や内水面に放流する栽培漁業に興味があります。

うちの漁協ではまだ行われていませんが、資源管理に貢献できるので、仲間たちとやってみようかと検討しています。。

仲間には養殖業者もいるので、稚魚を育てるのに問題はないと思いますが、放流についてはまったく知識がありません。

これまでさまざまな魚を獲ってきたので、どんな場所に魚がいるのかはわかりますが、稚魚の放流となると、ほぼ素人です。

そこで、栽培漁業の放流はどこで、どのようにして行っているか教えていただけないでしょうか?

時村宗春

公益財団法人 海外漁業協力財団 技術顧問

適切な大きさに育ててから、人の手によって自然の海に放流します

栽培漁業で放流される魚の種類


栽培漁業では、全国で約80種類以上の魚や貝を放流しています。

それらの中でも放流する数が多いのは、魚だとサケ、マダイ、ヒラメ、クロダイ。甲殻類だとクルマエビ、ガザミ、ヨシエビなどです。

アワビやウニといった付加価値が高いものも多く放流されていて、水産庁の「栽培漁業の現状」によると、令和元年(2019年)の主要個体の種苗放流実績は、ヒラメ17,056,000尾、マダイ9,137,000尾、クルマエビ73,519,000尾、ウニ類63,261,000個になっています。

栽培漁業で育てている魚種についてはこちらをご覧ください
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栽培漁業での放流種苗の大きさ・放流時期


種苗を放流するタイミングは、
・捕食されにくくなる大きさ(小さいと捕食されやすい)
・人工種苗の飼育に必要なコスト(飼育期間が延びると費用がかさむ)
・天然環境に順応するための期間(遅すぎない方がいい)

のバランスを考えて行います。


栽培漁業での種苗放流が行われている場所


栽培漁業では、放流した種苗の生き残りをよくし、円滑に天然の個体と同化することが目的です。

そのために、水産試験場などが、放流に適した場所を見つけようと魚や貝に標識を付け放流を行い、水温や放流方法などさまざまな角度から調査を行っています。

さらに、放流した魚が育ちやすいように、あらかじめ環境を整えた場所に放流する場合もあります。

テトラポットなどを使用し、稚魚が成長しやすい場所や漁礁を設置しているのです。

砂底の浅瀬や河口付近など、稚魚が捕食しやすい餌が豊富にある場所や、稚魚の外敵となる大きな魚が入ってこない藻場や干潟などどに放流することが一般的ですが、魚介の種類により異なるため、最適な場所を知りたい場合は「栽培漁業センター」や、各県の「水産県センター・水産試験場」に問い合わせてみましょう。


放流の実例


栽培漁業の最大の特徴である「放流」は日本中の広い地域で行われています。

北海道の襟裳岬の西海域では、マツカワの栽培漁業が盛んです。1970年代に激減したマツカワを復活させようと、平成18年に栽培漁業を開始し、卵から育てた100万尾の稚魚を放流しました。

するとマツカワの漁獲量は、平成20年に100トンまで回復しています。

マツカワは、砂に潜って身を隠す習性があるので、海底が砂質の場所に放流します。水深は6〜10メートルくらい。3センチ以下の小さな餌を捕食するので、餌が多い河口付近に放流しています。

また、長崎県の有明海では、ガザミやトラフグなどの放流場所を検証した結果、浅場のやや流れのある砂泥域で、放流サイズは5センチ以上が望ましいという結果がでました。

しかしながら、最適な放流場所はまだ実証段階であり、放流された魚は広い範囲に広がっていくため、地域を超えての研究や管理体制に取り組んでいく必要があります。

栽培漁業の仕組みや工程についてはこちらをご覧ください
栽培漁業はどのような仕組みで行われているのですか?



養殖用の稚魚と栽培漁業用(放流用)の種苗について


自分たちで放流用の稚魚を育てる場合には、養殖用の稚魚(種苗)と栽培漁業用の稚魚の違いを理解しておく必要があります。

養殖用の稚魚は、水揚げするまで人が飼育するため、成長が良く、病気にかかりにくく、網にぶつかったりしない、おとなしい種苗が好まれます。

一方で、栽培漁業用の稚魚は、天然海域に放流するので、生き残りのためにも、天然資源に悪影響を与えないためにも、できるだけ天然に近い稚魚が望まれます。

栽培漁業用と養殖用の稚魚の違いについてはこちらをご覧ください
養殖漁業と栽培漁業の違いを教えてください

このお悩みの監修者

時村宗春

公益財団法人 海外漁業協力財団 技術顧問

元独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所長。農学博士。日本の漁業・水産関連の研究だけでなく『韓国の漁業』『東シナ海・黄海の魚類誌』など、東アジアの水産関連の著書も執筆。現在は、太平洋島嶼国等を対象とした漁業支援や研修等を担当。

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