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栽培漁業ではサケをどのようにして育てているのでしょうか?

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栽培漁業ではサケをどのようにして育てているのでしょうか?

サケの定置網漁をしている漁師です。

サケは内水面でも海面でも養殖が行われていますが、栽培漁業も研究が進んでいるという話を聞きました。

サケの生態はいまだに不明なことが多いと思うのですが、どうやって栽培漁業で育てているのでしょうか?

私も漁師なので、もしちゃんと資源管理ができるのであれば、協力したいと考えています。

有元操

アリ元技術士事務所 所長

サケの栽培漁業は、遡上してきたサケを捕獲し、採卵し、孵化した稚魚を育て、放流します

サケの栽培漁業


サケ(シロザケ)は放流効果が顕著に現れた魚種です。

水産海洋ハンドブックによると、明治初期からふ化放流事業が実施されてきました。その効果が表れたのは、稚魚の放流が本格化した1970年代以降です。

近年ではシロザケ稚魚13.8億尾が放流され、約2,000万尾が回帰しています。

サケは、淡水域で産卵し、稚魚が海に下り、成長した後に再び淡水域に遡上して、産卵後に死亡します。サケは3~4年で成熟し、9月以降産卵のために北海道や東北地方の母川に遡上し、採卵に用います。

川を逆流するシロザケ

親魚の捕獲方法は、魚道式やウライ式(河川を格子等で遮断し、その一部に捕獲槽を設ける)などで行います。もし、捕獲したサケが未熟な場合には池の中で蓄養し、成熟させてから採卵します。

成熟したメスの腹部の張り具合などから熟度を調べ、腹部を切開し、取り出した卵にオスの精子を直接かけて受精させます。

受精卵は水温8℃前後の湧水で管理します。約30日で発眼し、60日でふ化します。ふ化した仔魚は、さらに60日間屋内(養魚池)で管理します。

サケの卵

孵化した仔魚はさいのう(栄養が入った袋)を持っているため、初期に餌は必要ありません。

孵化から2ヶ月程度で自ら餌を食べる状態まで成長します。仔魚がさいのうを吸収すると遊泳するので、そのタイミングで配合飼料を給餌します。

飼育池で体長4~5cmを目標に飼育します。陸上水槽がない場合は、海中飼育を実施する場合があります。

目標サイズまで育ったら、沿岸水温が5℃以上、13℃以下の時期(3〜6月)に河川へ直接、あるいは輸送して放流します。

サケの稚魚

放流した稚魚は数日から1ヵ月程度で海に下がります。

放流した稚魚は、主に3〜8年後に生まれた川へ戻ってきます。4年魚が最も多く回帰し、回帰魚の平均の大きさは、尾又長65cm、体重3.5㎏前後です。

しかし、近年では来遊数が減少しており、1,900~2,100万尾程度で、回帰率は1~2%になっています。


サケの栽培漁業のポイント


サケの栽培漁業では、稚魚が外海へ移動するタイミングが決まっているため、サケのサイクルに合わせて稚魚の飼育・放流を行う必要があります。

もし、放流時の沿岸の海水温が冷たすぎると稚魚が食べるエサが乏しくなってしまい、温かすぎると稚魚の生育環境に適していないため、稚魚の生残率が低くなってしまいます。

こうした問題を解決すべく、衛星データを活用し、サケの適切な放流時期が分かるシステムの研究も進められています。

栽培漁業の仕組みについてはこちらをご覧ください
栽培漁業はどのような仕組みで行われているのですか?

このお悩みの監修者

有元操

アリ元技術士事務所 所長

国立研究開発法人水産総合研究センター 増養殖研究所の部長や本部の研究開発コーディネーターを歴任。シマアジのウイルス性神経壊死症(VNN)が初めて発生した際に、原因解明し、対策を講じ、シマアジ種苗の生産性を回復させた。博士(農学)、技術士(水産分野)

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