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キジハタの栽培漁業を検討中。どう行えばいいですか?

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キジハタの栽培漁業を検討中。どう行えばいいですか?

うちの地域では、ここ最近、資源管理に力を入れていて、栽培漁業センターでさまざまな魚介類の栽培漁業を行っています。

先日、漁協からどんな魚種の栽培漁業をやってほしいかアンケートを頼まれたので、高級魚の「キジハタ」と回答しました。

キジハタは全国的に水揚げ量が少ないので、市場価値が高い魚なのですが、ほかの地域では栽培漁業で育てている地域もあるそうです。

興味があるので、キジハタの栽培漁業はどのような方法で行えばいいのか、どのような注意点があるのかなどを教えてください。

有元操

アリ元技術士事務所 所長

キジハタの栽培漁業における種苗生産では、口に合った餌を与えることや、衝撃を与えないことが重要です

キジハタの栽培漁業


キジハタは、「アコウ(石茂魚)」「アカミズ(赤水)」とも呼ばれる高級魚で、種苗を育てるのが難しい魚種の一つです。

養殖も行われ、1㎏あたり10,000円以上することもあります。

国内外で精力的に研究が行われた結果、1機関で数十万単位の種苗の生産が可能となっています。

現在、種苗放流は、大阪府、岡山県、山口県、香川県、兵庫県、熊本県、鳥取県、島根県などの府県で取り組まれています。


キジハタの親魚養成と採卵


キジハタは成長すると雌から雄に性転換する特殊な魚種のため、産卵期の前に雄雌を選別後、性比を調整し、水槽に収容し、産卵させます。

選別は外観で判別できない場合、生殖腺の出口に細い管(カニューレ)を差し込み、出てきた生殖腺の中身を見て性別と成熟度を判断します。

親魚の体表にはハダムシが寄生するため、定期的に淡水浴を行い、ハダムシを落とします。キジハタを10分ほど淡水浴に浸け、産卵水槽に移します。

産卵水槽は、機関により異なりますが、おおよそ20~100kl水槽を用います。

水槽に入れる雄と雌の比率を調整し、キジハタを産卵させます。

産卵は、おおよそ21℃以上の水温で見られます。卵は浮上するので、オーバーフローにより、水槽外のネットで受け、採卵します。

卵径は0.5~1.2mm程度、ふ化仔魚も1.5~2.3mmと他の海産魚と比較して、小さいのが特徴です。

受精からふ化までの時間は、水温により異なり、25℃で25時間程度です。ふ化から開口までの時間は、25℃以上で2日間程度を要します。


キジハタの種苗生産


開口して6〜12時間以内に摂餌できないと、10日齢までにほとんど死んでしまいます。

仔魚は視力や遊泳力が乏しいため、確実に餌を食べられるようにすることが重要です。

ワムシの中で小柄なタイ産ワムシ(小型ワムシ)を培養し、孵化したワムシを仔魚に与えます。

仔魚は4〜8日齢になると、水面に張り付いて死亡する浮上死や沈降死があります。

浮上死の対策としては、オイル滴下による水面油膜の形成、沈降死対策としては、バスポンプなどで底層に水流を作り、沈降した仔魚を上に浮上させます。

また、ウイルス性神経壊死症が見られる場合があり、生残率を低下させる大きな要因になります。

ウイルス性神経壊死症の主な感染ルートは、垂直感染です。対策としては、ウイルス陰性親魚での採卵や受精卵洗浄を行います。

キジハタの稚魚は2ヶ月ほどで20~30mmくらいまで育ちます。そのタイミングで、サイズ選別し、小割網(陸上水槽)などに移し、50mm以上まで飼育します。

共食いを防止するため、水槽内にはキジハタが隠れることができるシェルター(コンクリードブロックなど)を設置します。

また、キジハタ種苗には形態異常魚が見られる場合もあるので、対策について研究開発が進められています。

栽培漁業で与える餌や仕組みについてはこちらをご覧ください
栽培漁業では何を餌に与えているのでしょうか?
栽培漁業はどのような仕組みで行われているのですか?



キジハタの中間育成と放流


キジハタの放流は一般的に、50mm以上で行われています。

キジハタは定着性が強く、放流現場に留まることが多いため、湾内および水深の浅い岩礁地帯などが放流場所となります。

放流したキジハタは、3年で全長30cmほどにまで成長し、漁獲対象となります。

回収率は数%ですが、漁獲高が上昇し、天然加入尾数も増加した海域もあります。

現在、回収率を高めるための研究が進められています。

種苗放流が行われている場所や時期についてはこちらをご覧ください
栽培漁業の放流はどのように行われているのですか?

このお悩みの監修者

有元操

アリ元技術士事務所 所長

国立研究開発法人水産総合研究センター 増養殖研究所の部長や本部の研究開発コーディネーターを歴任。シマアジのウイルス性神経壊死症(VNN)が初めて発生した際に、原因解明し、対策を講じ、シマアジ種苗の生産性を回復させた。博士(農学)、技術士(水産分野)

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