ホタテの養殖をしている漁師です。ホタテは年によってバラつきがあるものの、天然も養殖も豊漁の状態が続いていて、今のところ安定して漁獲できています。
しかし、このような状態がいつまで続くかわかりません。昭和の初期には漁獲量が激減して、北海道や東北の漁師は大ダメージを受けたと聞いたことがあります。
そのため、北海道や青森などでは稚貝を放流する栽培漁業を行って、資源管理を行っていると聞きましたが、私もなにか貢献できるのであれば、参加したいと考えています。
ホタテの栽培漁業とはどのような作業を行っているのか、詳しく教えていただけないでしょうか。
有元操
アリ元技術士事務所 所長
ホタテガイの栽培漁業(地まき放流)は、採苗器で幼生を採集し、海中に吊るしたネットで育て、放流します
ホタテガイの栽培漁業
ホタテガイの天然での稚貝発生量は、変動が大きく、天然資源に依存していた1970年以前は大きく変動しました。
しかし、スギの葉にタマネギ袋をかぶせることで、ホタテガイの稚貝を大量に採苗できるようになりました。
その稚貝を海底に放流し、数年後に漁獲する方法(地まき放流)により安定した漁獲が得られるようになりました。
国内では、ホタテガイは輸出拡大の重点品目で、ブリ、タイ、真珠などと同じように輸出がとても期待されている魚種です。
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「栽培漁業で獲れる魚を教えてください」
ホタテガイの栽培漁業の流れ(地まき放流による漁獲)
ホタテガイの地まき放流による漁獲では、まず採苗器(二重になった特殊な網)を海中に設置し、稚貝を採集します。
採苗器で収集した約1㎝の稚貝を、延縄に垂下したパールネットに移し、3~6cmの大きさまで育てます。
成長したら、そのまま海底に放流します。放流してから漁獲までは 2〜3年を要します。
地まき放流は、北海道のオホーツク海沿岸、猿払、稚内、枝幸等で行われ、全国の9割以上を北海道で漁獲されています。
放流漁場を4~5区画に分割することで、年ごとに順番に漁獲する「輪採」を行い、資源が維持され、安定的に漁獲されています。
ホタテガイの栽培漁業の注意点
ホタテガイを漁獲する海域では、ヒトデなどの食害生物の除去が必要です。
また、稚貝の生息密度の調整も行われています。その結果として、稚貝が親貝となり自然発生貝も分布するようになりました。
地まき放流は、青森県の野辺地、むつ市、東通村などの海域にも波及し、1994年以降は25~34tと安定した漁獲が行われています。
しかし、生産量の増大に反比例して魚価は低迷しました。
最近では、生産の増大とともに、採苗不良や稚貝のへい死などの問題があり、その対策が必要とされます。
このお悩みの監修者
有元操
アリ元技術士事務所 所長
国立研究開発法人水産総合研究センター 増養殖研究所の部長や本部の研究開発コーディネーターを歴任。シマアジのウイルス性神経壊死症(VNN)が初めて発生した際に、原因解明し、対策を講じ、シマアジ種苗の生産性を回復させた。博士(農学)、技術士(水産分野)