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栽培漁業でマダイを育てることは可能ですか?

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栽培漁業でマダイを育てることは可能ですか?

定置網漁船で漁をしている漁師です。最近、異常気象の影響なのか漁獲量が安定せず、悩んでいます。

漁師仲間のみんなと情報交換をしていますが、その中で「養殖や栽培漁業をやってみないか」という話がでました。

個人的には資源を守りながら漁獲できる栽培漁業に興味を持っているのですが、例えばマダイを育てることはできるのでしょうか?

うちでは、定置網に入ってしまった小型のマダイを放流し、資源管理に取り組んでいるのですが、栽培漁業で資源管理に貢献できるのか知りたいです。

有元操

アリ元技術士事務所 所長

マダイの栽培漁業は稚魚を60〜80mm程度まで育て放流します。また、親魚の管理も必要です

マダイの栽培漁業


栽培漁業は、卵から稚魚になるまでの一番弱い時期を人の手で育て、その後、自然の海に稚魚を放流し、成長したものを獲る漁業です。

「作り育てる漁業」とも言われています。

「最新 水産ハンドブック」によると、マダイの人工種苗生産および放流は、世界に先駆け1960年代以後に日本で開発されました。

1980年代に飼育技術が開発され、1990年代には全国で2,200~2,400万尾が放流されましたが、2000年代は2,000万尾に減少しました。

天然マダイの資源状態が堅調なことや、価格が低迷し、漁業者からの要望が下がったことがひとつの要因になっています。

マダイの採卵には、3年以上飼育された親魚(おおよそ20から100尾)を陸上水槽に収容し、自然産卵により採卵します。

水槽の大きさは種苗生産機関により異なり、30~80KL水槽を用いる場合が多いです。飼育水温はおおよそ15~23℃で産卵させます。

マダイは、産卵期間中はほぼ毎日産卵し、受精卵は水槽内で浮上するため、サイフォンあるいはオーバーフローを利用し、やわらかいネットで受けて回収します。

受精卵は容器(シリンダー等)に入れ、浮上した卵だけをふ化水槽(0.2~1.0KL)に収容します。沈下卵は除去し、流水下で管理し、受精卵はおおよそ2.0~2.5日でふ化します。

ふ化した仔稚魚は、成長に従ってワムシ、アルテミア、配合飼料の順に給餌します。

なお、餌となるワムシやアルテミアは、栄養強化してから給餌します。ワムシは、開口前から給餌し20日目ぐらいまで与えます。

全長が8mmほどまで成長すると、配合飼料を与えはじめます。マダイは12mm前後から共食いし、生残率が低下するため、選別し、サイズごとに飼育します。

ふ化から30日ほどたつと全長10~15mmほどまで成長し、稚魚期に入ります。

多くの機関では、全長が60〜80mm程度に育つまで海面小割生簀等で飼育し、その後、天然海域に放流されます。

マダイの稚魚は大変弱く傷つきやすいので、取り上げや運搬、放流作業は細心の注意を怠らないようにします。

陸上水槽や生簀からの取り上げ時は、稚魚同士が背鰭の棘で目などを傷付けないようにし、必ずバ ケツで海水ごと稚魚をすくいます。

放流場所は沖合や沿岸など地域によりさまざまですが、神奈川県では2020年度より放流を岸壁放流に切り替えました。

これは、沖合で放流された稚魚が、隠れ場に移動する途中で捕食されてしまうことや、成魚になるまで浅場で生活するためです。

岸壁放流の場合、釣り人に漁獲されてしまう危険性は高まりますが、沖合よりも生存率が高まると考えられています。

栽培漁業の仕組みや工程についてはこちらをご覧ください
栽培漁業はどのような仕組みで行われているのですか?



マダイの栽培漁業のポイント


マダイの放流は、全国各地の海域で行われ、東京湾、相模湾、駿河湾、錦江湾、若狭湾、隠岐島などの湾などに数十万尾単位で放流されています。

マダイの人工種苗は鼻孔が連結している特徴があり、天然魚との混獲率の調査に用いられています。放流魚の混入率(天然魚との割合)は、地域により異なり、数%とされます。

鹿児島の錦江湾では、1976年に漁獲量は71トンでしたが、1980年以降100万尾規模の放流が行われ、1991年には213トンになりました。

また、鹿児島県水産試験場報告書によると、1~2歳魚の回収が多いことや湾内での放流効果が高いことも明らかになりました。

一方で、「水産学会誌73巻」によると、近年マダイ種苗の添加効率が低下していることも指摘されており、放流魚が天然資源に与える影響についての議論が必要とされます。

このお悩みの監修者

有元操

アリ元技術士事務所 所長

国立研究開発法人水産総合研究センター 増養殖研究所の部長や本部の研究開発コーディネーターを歴任。シマアジのウイルス性神経壊死症(VNN)が初めて発生した際に、原因解明し、対策を講じ、シマアジ種苗の生産性を回復させた。博士(農学)、技術士(水産分野)

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