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初めてのほうれん草栽培で、秋まきがいい理由は?

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初めてのほうれん草栽培で、秋まきがいい理由は?

新米農家で、ほうれん草栽培に興味を持っています。

まだ知識不足なのですが、ほうれん草には春まきと秋まきの作型があり、どちらにすべきか悩んでいます。

うちの農場は夏場は他の野菜の収穫期で忙しく、落ち着いた9月から10月頃に植え付けられるならちょうど良いと考えています。

近所の農家さんに相談したときも「ほうれん草は秋まきがいいよ」とアドバイスをもらいました。

しかし、なぜ秋まき栽培が良いのでしょうか?

渡會那央

わたらい農場 代表

ほうれん草は気温や条件的に秋まきが最も育てやすい

ほうれん草の秋まき品種の特徴


初心者農家がほうれん草栽培を始めるなら、秋まき栽培がおすすめです。

近年はさまざまな作型(=栽培条件や栽培技術、もしくはその組み合わせ)に対応する品種が開発されていますが、春・夏まきの品種はおおむね冷涼地向けです。

細かな栽培管理や大規模な設備投資が必要になる場合も多く、初心者には難しいポイントも多いため、秋まきが基本と考えてください。

秋まきで育てることには、メリットが3つあります。

秋まきのメリット1 中間地での温度条件に最適


ほうれん草は寒さに強く、暑さに弱い作物です。

健康的に発芽し生育する温度帯は「15~20℃」で、「25℃」を超えると発芽せず、生育も進みません。

一方「4℃」での発芽や「氷点下10~15℃」での生育も可能と、低温環境に対しては強い耐性を持っています。

したがってどんどん高温になっていく春よりも、低温に向かっていく秋のほうが、ほうれん草栽培にとっては好ましい時期となるのです。


秋まきのメリット2 比較的ゆっくり生長する


ほうれん草は栽培は短期間で、種まきから約1カ月ほどで収穫できます。

秋まきは春まきよりも生育スピードが緩やかなため、ほうれん草が育っていく様子をしっかり観察できます。

また葉の色が薄いなど不調を見つけた場合には追肥で回復を試みるなど、時間に若干余裕がある分、取れる対策が増えることもメリットの1つです。


秋まきのメリット3 「とう立ち」が起こりにくい


春まきのほうれん草は「とう立ち」が起こらないように配慮せねばなりません。

とう立ちとは「花芽が付いた茎が伸びる」現象のこと。茎や葉が硬くなって食感や味も劣ります。

日長時間(昼間の長さ)の積み重ねと、気温の上昇の条件が揃ったときに発生します。

そのため栽培期間中に日がどんどん長くなる春まき品種は、光と温度の管理が重要で、対策に必要な設備や資材も規模が大きくなりがちです。

秋まき品種のほうがとう立ちが起こりにくいので、初心者農家でも収量が安定する傾向があります。


秋まきほうれん草の栽培の流れ


以上のメリットを踏まえて、秋まき品種のほうれん草を育てるスケジュールの一例を紹介します。

9月:土壌の準備


10月上旬に播種をする想定で、約1カ月前である9月上旬に畑作りを始めましょう。

苦土石灰(くどせっかい=土壌の酸性度を抑える資材)と、堆肥(たいひ=糞などの有機物を微生物の力で分解した資材)を入れて耕してください。

2週間後をめどに、次は元肥(もとごえ=栽培開始前にあらかじめ与える肥料)を入れます。

土作りについてはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培の土はどう作る?土壌調整で気をつける点を教えて



10月上旬:播種


畑に畝(うね=苗を植えるために土を盛って作る、細長く直線状の山)を立て、「まき溝」を作って種をまきます。

播種前日にはしっかり水やりをして、土を湿らせておくと良いでしょう。

深さ1cmほどのまき溝に、1~2cm間隔で種を入れます。

まいた後は土を寄せて鎮圧し、土が乾かないように発芽するまで毎日たっぷり水やりしましょう。

なおほうれん草は収穫適期も短いので、一斉収穫しなければなりません。

播種の段階で畑を数ブロックに区切り、それぞれまく時期をずらしておくと、収穫遅れのリスクを分散し多収が目指せます(=段まき)。

播種作業についてはこちらをご覧ください
ほうれん草栽培の播種する時期はいつ頃?方法やコツも教えてほしい



10月中旬~下旬:間引き・追肥


間引きのタイミングは2回あります。1回目は子葉(しよう=発芽後最初に開く細長い形の葉)が展開した頃、2回目は本葉(ほんよう=子葉の次に現れる丸い葉)が2~3枚の頃です。

概算で1回目は種まきから約1週間後、2回目は約半月後に相当します。

生育状況を見て、必要であれば2回目の間引きの後に追肥も与えましょう。

間引き作業についてはこちらもご覧ください
ほうれん草の間引きはどのタイミング?注意点も教えて



11月上旬~中旬頃:収穫


ほうれん草の品質を高めて出荷時の腐敗リスクを防ぐため、収穫1週間前からは水やりは控えましょう。

種まきから約40日後、草丈20~30cmの範囲で一定のサイズに達した頃に収穫を行います。


秋まきのほうれん草栽培で気をつけること


最後に秋まき栽培の注意点について確認しておきましょう。

晩秋の種まきにはベタ掛けやトンネル栽培を


上記の栽培スケジュールよりもさらに気温が下がる時期に種まきする場合、畝に直接不織布や寒冷紗をかぶせる「ベタ掛け」や、アーチ状に立てた支柱を防寒シートで覆う「トンネル栽培」を取り入れてください(時期の詳細は地域や気候によって異なります)。

耐寒性の高い品種は1月~2月の極寒期でも収穫可能です。

トンネルを適度に開けて寒さに当てながら糖度を高め、ゆっくり育てる「寒じめ栽培」のほうれん草も市場で人気があります。

寒じめ栽培についてはこちらをご覧ください
ちぢみほうれん草(寒じめほうれん草)の栽培方法に興味があります



このお悩みの監修者

渡會那央

わたらい農場 代表

長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。

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