新たな品目としてほうれん草の栽培を検討しています。
しかし、近くの先輩農家さんたちに相談したところ、ある人には「追肥はいらない」と言われ、他の人には「追肥はするべきだ」と言われました。
作型や土壌などで状況は異なると思うのですが、どんな場合に追肥を与える必要があるのでしょうか?
肥料も高騰しているので、追肥の費用を抑えることができれば嬉しいのですが…。
新たな品目としてほうれん草の栽培を検討しています。
しかし、近くの先輩農家さんたちに相談したところ、ある人には「追肥はいらない」と言われ、他の人には「追肥はするべきだ」と言われました。
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渡會那央
わたらい農場 代表
ほうれん草は基本的には追肥なしで栽培可能です
原則ほうれん草に追肥は要らないが、例外的な状況もある
同じ葉菜類(ようさいるい=葉を食べる作物)である小松菜や水菜と同様、ほうれん草は栽培期間が短く、スピーディーに育ちます。
比較的肥料を必要とする野菜ですが、気をつけたいのは追肥ではなく、「種まき前の土作り」と「元肥(もとごえ=畑へ種をまいたり、苗を植え付けたりする前に、あらかじめ土壌に与えておく肥料)の量や配合」です。
追肥を使うのは秋冬まきが多いが、基本は不要
ほうれん草には、春まき品種と秋まき品種があります。
追肥の必要性は土壌の状態や生育の様子によっても異なりますが、一般的に追肥を使うのは秋まきのほうが多いでしょう。
というのも、秋まき品種はどんどん温度が低くなっていく時期に育てるため、春まきと比較すると生育スピードが緩やかになるためです。
秋まきであれば、生育状況を見て追肥すべきか判断できるだけの時間があります。
秋まき栽培についてはこちらをご覧ください
「初めてのほうれん草栽培で、秋まきがいい理由は?」
春夏まきで追肥が要らない理由
逆に春夏まきは種まきから収穫までが短いため、追肥を与えたとしても、その効果が現れるまでに収穫を迎えてしまうことが多いです。
なおほうれん草の種まきから収穫までの日数の目安は、以下の通りです。
・春まき 約30日で収穫
・夏まき 約25日で収穫
・秋まき 約40~60日で収穫
・晩秋まき 約60~120日で収穫(寒じめ栽培など)
ほうれん草は追肥よりも元肥が重要
したがってほうれん草栽培では、追肥よりも元肥の優先度が高いと考えてください。
追肥の準備よりも種まき前の土壌チェックと元肥設計を入念に行ったほうが、おいしいほうれん草がたくさん穫れる結果となりやすいでしょう。
元肥を含めたほうれん草の栽培方法はこちらをご覧ください
「ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください」
生育状況や気候により必要になる場合もある
ほうれん草には基本的には追肥は不要ですが、必要となる2つのケースについて紹介しましょう。
CASE1.雨などで元肥が流れてしまったとき
1つ目は「雨などで元肥が流れてしまったとき」です。
雨の日が続くなどで種まき前に畑にすき込んだ元肥が流されてしまった場合、必要な栄養が土壌から失われていることになります。
この栄養不足を補うために追肥が必要です。
また台風などで株の一部が損傷している場合にも、追肥で回復できる場合があります。
CASE2.葉の色が薄いなど、明らかに生育が良くないとき
2つ目は「葉の色が薄いなど明らかに生育が良くないとき」です。
健康で栄養価が高いほうれん草は、濃く鮮やかな緑色をしています。
葉の色が薄いのは、窒素不足の典型的なサインです。
追肥によってこの不足を補ってください。
ただし病気など別の理由で葉が変色している可能性もあります。
まずは病気でないかをチェックしてから、追肥を検討してください。
ほうれん草への追肥の与え方
ほうれん草の追肥を与える時期と、量や散布方法について説明します。
追肥を与える時期
追肥を与える時期は「本葉(ほんよう=発芽後に最初付く子葉の後に現れる丸い葉)が2~3枚開き、2回目の間引きが終わった頃」が目安です。
種まき日を基準にするのであれば「おおむね2週間たった後」と覚えておくと良いでしょう。
固形肥料の分量と与え方
固形化成肥料を使う場合、即効性タイプの肥料を選び、以下の分量を参考にアレンジして与えてください。
・10m2あたり 窒素成分が40〜60gになる量
必要量をほうれん草の株の周囲にまき、その後水やりをして肥料を土壌に浸透させます。
根元に直接肥料が触れないように注意が必要です。
液体肥料の分量と与え方
液体肥料は、固形よりも高い即効性が期待できます。
以下の分量をアレンジしてください。
・所定の倍率の水で希釈し、じょうろなどで根元に注ぐ
また葉面散布に対応している場合は、霧吹きや散布用の機械で直接葉に吹きつけます。
いずれも肥料のパッケージにある注意書きをしっかり目を通し、正しい量や使い方を守りましょう。
基本的な栽培方法や栽培特性についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草の栽培の大まかな流れと、うまく育てるコツや注意点を教えてください」
追肥なしで上手に育てるためのポイント
最後に、高品質なほうれん草をたくさん収穫するためのポイントを説明します。
ほうれん草の栽培前には土壌診断を受ける
繰り返しになりますが、ほうれん草栽培では追肥よりも元肥が大事です。
さらに元肥の効果を最大にするためには、土壌の状態をよく知っておく必要があります。
土壌診断を受け、土に残っている栄養分などをきちんと把握した上で元肥や堆肥(たいひ=枯葉やわら、糞などの有機物を発酵させた資材)を混ぜ込みましょう。
その際、堆肥に含まれる肥料成分も忘れずに計算してください。
肥料による窒素過多になると、病害虫の発生リスクが高まります。
ほうれん草栽培の土作りについてはこちらをご覧ください
「ほうれん草栽培の土はどう作る?土壌調整で気をつける点を教えて」
ほうれん草の連作は難しい
ほうれん草も同じ場所で栽培すると連作障害を起こし、さらには「土壌病害」を引き起こすおそれがあります。
土壌病害とは、連作によって土壌中に増えた病原菌が、植物に侵入・繁殖しやすくなるために起こる病気のこと。
ほうれん草で最も気をつけるべき「べと病」も土壌病害の1つです。
同じ場所ではネギやにんじん、豆類などとの輪作をおすすめします。
連作についてはこちらをご覧ください
「ほうれん草の栽培で連作をするにはどうすればいい?」
このお悩みの監修者
渡會那央
わたらい農場 代表
長野県八ヶ岳のふもと標高1100mの高冷地 小海町で農業に携わり11年。3月〜11月まで、主にほうれん草を栽培・出荷し、そのかたわら花豆の栽培・出荷も行っています。 『人づくり、土づくり、ものづくり 耕福農業』を理念に、人が育つ環境づくり、野菜が育つ環境づくり=土づくり・堆肥づくりに注力し、エコファーマーの認証も取得し、安全安心でまごころ込めた野菜づくりを行っています。