レモンの栽培を考えている農家です。最近、手軽に育てられる柑橘系の果物としてうちの近所でもレモンの栽培をはじめる農家が増えてきていて、うちでも気になっています。
圃場も空いているので、様子を見ながらやってみようかなと思うのですが、問題は栽培する期間です。
うちは観光農園の経営もしているので、お客さんが多い時期に手間がかかるのは避けたいです。
具体的なスケジュールはどのような感じでしょうか?
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
レモンは温暖な時期によく育ちますが、冬の寒さには気をつけましょう
レモンの栽培時期
レモンは、3月から10月頃までが生育期で、果実が成長します。
一方、新梢は1~3月を除けば伸長します。
しかし、レモンは寒くなると樹の成長がほとんど止まるので、暖かい時期に樹を大きく成長させなければいけません。
花が開花して実を肥大させていく時期でもあるので、レモンの栽培期間の重要な作業は生育期に多くあります。
植え付けは3月
レモンは根や樹が動き始める前の3月に植え付けをしましょう。
根が活発に動くような暖かい時期では、根に与えるダメージも大きくなるため、3月下旬~4月中旬までに植え付けましょう。
時期が遅くならないよう注意が必要です。
また、鉢植えの場合にも植え替え時期は3月下旬頃がおすすめです。
一方で、秋に出回っている苗で秋に植え付けもできますが、植え付け後すぐに寒い時期に入るので、樹が充分に成長できない可能性があります。
そのため、レモンの苗の植え付けは厳冬期を過ぎた春先の3月下旬に行うのがおすすめです。
苗から作苗する方法はこちらをご覧ください
「レモンを苗から栽培する方法について知りたい」
開花時期は主に5月
レモンの開花時期は5月頃から始まり、この時期に多くの白い花が咲きます。
開花時期にはレモンの樹がエネルギーを必要とするため、開花前の段階で樹体内に養分を蓄積しておく必要があります。
春先に新梢が動き出す3月に肥料を与えておきましょう。
また、5月頃から暖かくなり土が乾燥してくる時期なので、水切れをおこさないことも大切です。
レモンの収穫は秋から冬にかけて
レモンの収穫は、早い地域では9月頃から始まります。おおよそ秋から冬にかけてがレモンの収穫時期です。
レモン果実は霜にあたると傷んでしまうことがあるので、品種の違いはありますが、厳冬期の前に収穫が終わることが多いです。
一般的にレモンの収穫までには、植え付けから2、 3年かかるといわれているため、植え付け初年度は収穫はできません。
レモンを収穫する目安についてはこちらをご覧ください
「レモンの収穫時期はいつ頃になりますか?」
露地栽培とハウス栽培の違い
3月に植え付けをしたり、9月頃から収穫をしたりするのが露地栽培の一般的な栽培時期ですが、ハウス栽培ではハウス内を加温することで生育時期を早めることができます。
ハウス内の加温状況により、寒冷な地域であれば、一般的な露地栽培よりも生育時期を少し遅らせたり、温暖な地域であれば生育時期を早めて収穫の旬をずらしている農家さんもいます。
施設栽培には費用がかかりますが、収穫時期を促進することによって本来、店頭に出回っていない時期に出荷でき、希少価値がついてレモンを通常より高値で販売できる可能性もあります。
レモンの一般的な栽培方法についてはこちらをご覧ください
「レモンの栽培方法について教えてほしい」
レモン栽培時期においての注意点
夏は乾燥に気をつける
レモンの栽培時期において、夏場の乾燥には注意が必要です。
レモンは、比較的降水量の少ない地域に適した果樹ですが、夏の高温で土壌が乾燥する時期には水やりが欠かせません。
この時期はレモンの果実が肥大する時期なので、収穫に影響がでないように水切れに注意しましょう。
水管理の目安についてはこちらをご覧ください
「レモン栽培の水管理について知りたい」
最低気温がマイナス3度以下になると枯れる可能性がある
レモンは寒さに弱いため、最低気温がマイナス3℃以下になったり、霜にあたると枯れてしまう恐れがあります。
マイナス3℃以上でも、寒さで葉が落ちてしまうとレモンの木全体が弱り、春までに枯れてしまうこともあります。
特に苗木や幼苗では寒さに弱いのでしっかりとした対策をしておきましょう。
また、冬場の寒さが厳しい地域なら、ハウス栽培を検討してみるのもよいでしょう。
栽培に適した環境についてはこちらをご覧ください
「レモン栽培に適した気候について知りたいです」
「レモンの栽培条件について教えてください」
「レモン栽培に適した温度はどれくらい?」
「レモンが栽培できる地域はどこまでなのか(北限)が知りたい」
レモンの栽培時期を理解しましょう
レモンの栽培時期は、暖かくなる春先から秋にかけてです。暖かい時期に生育期となるため、できるだけ温暖な期間が長いほうがレモンを栽培しやすいでしょう。
そのため、植え付けも春先の3月頃に行い、植え付け後の暖かい期間を長くして、順調な生育をさせることがおすすめです。
一方で、寒さには弱いので、冬場の最低気温がマイナス3度以下になる地域では、ハウス栽培を検討する必要もあります。
レモンの栽培時期を理解し、新しくレモン栽培を始めてみてはいかがでしょうか。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。