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レモン栽培で発生する害虫について知りたい

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レモン栽培で発生する害虫について知りたい

新しくレモンを育ててみたいと思い、最近話題のレモンの品種が気になっています。

しかし、これまでレモンの栽培はしたことがなく、中でも害虫が発生する点が心配です。

レモン栽培で注意すべき害虫の特徴や駆除のタイミング、注意点などについて教えてください。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

レモン栽培の害虫はこまめな観察で、被害の早期発見を心がけよう

レモンの栽培で注意すべき害虫


発生する時期やレモンに及ぼす被害は害虫によって異なりますので、症状に合わせて対処できるようにしておきましょう。


アザミウマ


5月中旬〜9月中旬に確認され、黄色や灰褐色、黒色を帯びる体長1mm前後の細長い害虫です。主な被害は以下の通りです。

・新葉が湾曲したり、奇形葉を生じたりする
・葉に白っぽい小斑点を生じ、次第に褐色を帯びたり、かさぶた状に変化したりする
・果皮が褐色を帯び、かさぶた状や凹凸状になる


アザミウマの発生源は、チャや防風垣のマキやサンゴジュです。これらから圃場への飛来が多いです。マキやサンゴジュを刈り取った後などは、大量に圃場に飛来する場合もありますので、注意しましょう。


アブラムシ

アブラムシの写真

4月〜6月・9月中旬〜10月中旬に確認される害虫です。直接被害と間接被害があり、群生して加害するため、果樹の生育が著しく悪くなります。

アブラムシによるレモンへの被害は、以下の3つです。

・「モザイク病」や「すす病」の媒介
・新芽や葉裏などに寄生して、汁液を吸って加害する
・葉を巻いたり、コブ(虫えい)を作ったりする


アブラムシには多くの薬剤が効果的ですが、繁殖力が強いため長期的に効果が持続する浸透移行性剤を利用しましょう。


エカキムシ

エカキムシの写真

5月下旬〜8月にかけて発生するミカンハモグリガの幼虫です。葉の中にもぐって、白く絵を描くように食害しながら移動する特徴があります。

レモン栽培における主な被害は以下の通りです。

・葉肉の部分が蛇行状に食害(表面から見ると、食害部分が白く見える)
・大量発生による葉肉全体の食害・樹勢が衰弱する
・葉の変形や枯死、早期落葉がみられる


エカキムシの幼虫がいる食害跡の先端を押しつぶして退治しましょう。葉の中にいる害虫であるため、浸透移行性剤も効果的です。


カイガラムシ

カイガラムシの写真

5月下旬〜9月下旬に発生する、繁殖力旺盛な害虫です。アブラムシと同様に直接的被害と間接的被害を及ぼします。

カイガラムシが引き起こすレモンへの被害は以下の通りです。

・カイガラムシそのものが美観を損ねる
・吸汁により樹勢に悪影響を及ぼす
・新梢や新葉の発生が悪くなり、枝枯れを起こす場合もある
・カイガラムシの排せつ物に「すす病」が繁殖することにより、光合成が妨げられる
・「こうやく病」を誘発する


カイガラムシの成虫は、歯ブラシなどでこすり落として退治しますが、レモンを傷つけないように注意してください。

カイガラムシの幼虫は5〜7月にかけてダントツ水溶剤、アドマイヤー顆粒水和剤などを月2〜3回程度の割合で散布しましょう。農薬はカイガラムシの成虫や卵にはあまり効果がありません。

一度農薬を散布しても卵が孵化して幼虫になる頃、つまり1回目の農薬散布から1週間~10日後に2回目の散布をする方が良いでしょう。

農薬散布は、同じ系統(下記参照)の薬剤を連用すると害虫に抵抗性がつきますので、系統の異なる農薬をローテーション散布しましょう。 

農薬は、有効成分の化学構造や作用の特徴によって系統に分類されています。例えば、上記に記したダントツ水溶剤やアドマイヤー顆粒水和剤はネオニコチノイド系に分類されます。また、物理的阻害剤としてマシン油乳剤などもカイガラムシの防除に使用されます。その他の農薬の系統としては、有機リン系、カーバメート系、合成ピレスロイドなどがあります。



カミキリムシ(幼虫・成虫)


幼虫は1年中、成虫は5月中旬〜9月中旬にかけて警戒するべき害虫です。通称「テッポウムシ」とも呼ばれ、侵入部分からはオガクズ状の虫糞が見つかります。

なお、カミキリムシによるレモンへの被害は以下の通りです。

・枝や幹の中の食害により、樹勢が衰える
・強風時に枝や幹が折れやすくなる


カミキリムシは、樹勢の衰弱した幹に産卵する傾向があるため、樹勢を強くすることが予防になります。枯れ枝を放置せずに、樹皮の荒れている(剥がれたり、めくれたりしている)枝は剪定時に取り除きましょう。

食害された場合は、糞の出ている所が侵入口なので糞を取り除き、針金などでつついて、中の幼虫を取り出してください。


カメムシ


4月〜10月にかけて見られる吸汁性害虫です。レモンに限らず、他の柑橘類でもよく被害を受けます。主な被害は以下の通りです。

・未熟の果実の吸汁部分が変形したり、落果したりする
・熟した果実の吸汁部分が腐敗したり、異臭を放ったりする
・新芽の葉が奇形になったりする


こまめに観察し、発生が少ない場合は箸でつまんで取り除きます。殺虫剤を散布する際は、発生に合わせて散布しましょう。


コガネムシ(幼虫・成虫)


6月〜9月にかけて植物を加害する甲虫類です。以下のように幼虫による被害と、成虫による被害があります。

幼虫:根を食害する、大発生すると苗だけでなく樹木でも枯れることがある
成虫:葉を食害する

成虫は、木を揺すると落下して死んだふりをするため、虫取り網などで素早く捕まえます。土中から幼虫を発見した際も、すぐに取り除きましょう。


コナジラミ

コナジラミの写真

5月~9月に発生する吸汁性害虫です。アブラムシと同様に直接的被害と間接的被害を及ぼします。主な被害は以下の通りです。

・幼虫の排せつ物によって「すす病」が発生する。また、「ウイルス病」を媒介することもある
・葉裏に寄生して汁を吸い、葉の葉緑素が抜けて白いカスリ状になる


葉裏をよく観察して、寄生していないことを確認しましょう。発生した場合は殺虫剤を散布しますが、一度の薬剤散布ではなかなか退治しきれません。発生に応じて防除しましょう。


サビダニ


7月〜8月が多発時期となる害虫です。レモンをはじめとする柑橘系の果樹については、果実の表面が灰褐色のサビ状になる「ミカンサビダニ」の発生に注意しましょう。

サビダニには、梅雨明け直後の薬剤散布が効果的です。前年にサビダニが大量多発した圃場なら、梅雨前に薬剤散布をしておきましょう。


ハダニ


5月〜9月に多発生する吸汁性害虫です。主に梅雨明けから夏にかけて多発する傾向があります。主な被害は以下の通りです。

・葉裏に寄生して汁を吸い、針先でつついたような白い小斑点を生じる
・白い小斑点の数が多くなると、白いカスリ状にまとまって見える
・葉色がさえないことから美観が損なわれる


ハダニは水に弱いため、定期的に葉裏に散水して予防することは可能ですが、ハウス栽培などの雨が当たらない環境下では、被害の進行が速いため注意が必要です。

応急処置的に対応する場合は、殺虫剤を散布しましょう。


ハマキムシ


4月〜11月の期間に発生する害虫です。発生期間が長く、葉や芽などを食害するため、定期的に薬剤を散布する必要があります。

葉を巻いたり、つづり合わせたりして葉を食害するため、美観が損なわれてしまいます。

ハマキムシの幼虫は、葉の中に潜んでるため被害葉ごと摘み取りましょう。薬剤を使用する場合は、スミチオン乳剤などが効果的です。


アゲハチョウの幼虫


4〜5月・7〜8月・9〜10月と、発生時期は種類によって異なります。物理的刺激や天敵に襲われると、受けるとオレンジ色の臭角を出して臭いを放ちます。

アゲハチョウの幼虫による被害は、新芽や若い葉(柔らかい葉)が食害されることです。 特に、植え付けたばかりのレモンの苗木で発生した場合、新芽・新葉が食べつくされてしまいます。

よく観察して早急に捕殺しましょう。植えたばかりの苗木では、葉をすべて食べつくされることがあります。そのような場合、樹勢も衰えますので気をつけましょう。


アオバハゴロモ

アオバハゴロモの写真

5〜9月にかけて発生する吸汁性害虫です。淡い緑色を帯びた三角形状の羽をもつ10mm前後の大きさをしています。

アオバハゴロモによって引き起こされる被害は以下の通りです。

・大量発生による樹勢の衰退
・果梗部分の寄生による落果
・幼虫の洗浄分泌物の付着による美観の損失


アオバハゴロモは、毎年同じ場所に発生しやすいことが特徴です。冬の剪定時には余分な枝を取り除きましょう。発生が多い場合は、殺虫剤を散布してください。


ホコリダニ


5〜10月に発生し、レモンを含む柑橘系では、主に幼果に寄生します。

果実のヘタ付近がほこりをかぶったように変化し、やがて実全体が灰白色のコルク状になってしまいます。

ホコリダニの成虫は、体長が0.2mm前後ととかなり小さいため、症状が出てから発生に気づくケースがほとんどです。

毎年発生を繰り返す多発生園では、開花後、花弁が落ち出す頃から定期的に薬剤を散布して防除しましょう。


バッタ


6月〜11月上旬にかけて発生し、葉が食害されます
葉においては若い葉が被害を受けやすく、不規則に食べられて穴が開きます。樹勢の衰弱に繋がる可能性があります。

初夏にさしかかった段階で、葉に小さな穴があいていないか観察しましょう。バッタを見つけたら取り除いてください。


害虫によって発生するレモンの病気と対処方法


ここからは、害虫が原因でレモンに発生する病気と対処法について紹介します。

・すす病
・モザイク病


すす病


植物の葉や茎、花、果実などの表面に黒い「すす」(菌糸)が生える病気です。激しく汚れているように見えるため、果実品質を落とし、葉が被害を受けている場合は、光合成ができずに生育が抑制されてしまいます。

密植を避けて余分な葉を取り除き、風通しを良くして湿度を下げましょう。一定期間、窒素肥料を控えて、過繁茂を抑制することも方法の1つです。


モザイク病


アブラムシやハダニ、アザミウマなどの害虫がウイルスを運ぶことで発生します。

したがって、害虫の飛来を未然に防ぐことが大切です。幼木の段階から防虫ネットなどで防止しましょう。

特に、光るものを嫌うアブラムシの習性を利用して、シルバーマルチを圃場に敷いたり、アルミホイルを株元に敷くのもおすすめです。また、黄色を好むので、例えば、高性能粘着トラップ(ホリバー;黄色)などを圃場につけるのも良いかもしれません。

また、モザイク病のウイルスは感染するケースがあるため、剪定ばさみやスコップ、手袋などは定期的な洗浄・消毒を心がけましょう。

レモン栽培でおすすめの農薬についてはこちらをご覧ください
レモン栽培で使う農薬の種類や特徴は?

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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