これまで観光農園で働いてきましたが、実家に帰るのと同時に自分の農地を持とうと考えています。
さまざまな果樹を育ててきた経験があるので、いろんな品目を生産したいのですが、まずはレモン栽培に興味を持っています。
レモンであれば、近隣に生産している農家がいないので、洋菓子店や道の駅などへ出荷できるのではないかと考えています。
しかし、レモンは寒さに弱い果樹だと聞いており、今住んでいる地域で栽培が可能なのかどうか知りたいです。
気温が低くても日当たりがあれば栽培できるのか、また寒さに強い種類なら対応できるのか、教えて下さい。
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
レモン栽培が可能な地域は広がりつつある
レモンは寒さに弱い
レモンはインド東部の温暖な地域が原産で、現在ではインドをはじめとしてメキシコや中国、アルゼンチンなどで栽培されています。
柑橘類の中では寒さに弱い果実の一つと言われています。
レモンの栽培にあたっては、
1、最低気温が0℃以上
2、霜が降りない
このような地域が望まれます。
日本では、南関東の太平洋沿岸、瀬戸内海沿岸より南の九州・四国の太平洋沿岸で栽培できます。
レモン栽培の北限はどこ?
近年、温暖化の影響でレモンの栽培可能地域は広がりつつあり、茨城県といった北関東でも栽培した実績が報告されています。
「レモンを植えたけど、実がつかない状態が何年も続いていた。しかし急にある年から実がたくさんなりはじめた」という事例もあるようです。
日当たりや冬の寒風が当たらないかなど、栽培環境や、防寒対策をどれくらい実施するかによっても変わるため北限の正確な区分は曖昧であることが現状です。
気温の目安として、平均気温が15~16度以上で霜が降りない地域がおすすめです。
また冬期の最低気温がマイナス3-4度以下にならない地域が適地としての最低条件です。
栽培条件についてはこちらもご覧ください
「レモンの栽培条件について教えてください」
「レモンの施設栽培における日当たりはどう管理すべき?」
レモンの栽培が可能かどうかの目安
温州みかんは柑橘類の中でも寒さに弱い果樹ですが、レモンよりは強いと言われています。
そのため、温州みかんが育たない地域でレモン栽培は厳しいです。
近隣地域で温州ミカンの栽培が可能かどうかを目安にしても良いでしょう。
寒い地域での栽培の注意点
寒さに強い品種を栽培する
レモンの中で、「リスボン」と「マイヤーレモン」は寒さに強い品種です。
リスボン
耐寒性はレモンの中で最も強く、関東北部でも栽培可能と言われています。樹勢が強く大木となり、とげの発生が多い品種です。
マイヤーレモン
オレンジとレモンの交雑種で、寒さに強いです。別名「菊池レモン」「サイパンレモン」などとも呼ばれます。
とげの発生が少ない品種です。
オレンジとの交雑種のため、一般的なレモンに比べると酸味が少なくまろやかな味です。
品種を選ぶ際に見るべきポイントについてはこちらをご覧ください
「レモンの栽培を考えていますが、品種について特徴を教えてください」
日当たりのいい場所に植える
冬でもできるだけ日当たりが良く、暖かい場所に植えましょう。
また寒冷地で栽培するならハウス栽培がおすすめです。
防寒・防風対策を行う
冬の寒風があたるとレモンの木は弱ってしまいます。寒さや風で葉がたくさん落ちると、体力がなくなり枯れてしまうこともあります。
寒さ対策についてはこちらをご覧ください
「レモン栽培に適した気候について知りたいです」
まずはレモン栽培をはじめよう
レモンはこれまでより栽培可能な範囲が広がりつつあります。
寒さに強い品種を、日当たりのいい場所に植え、防寒・防風対策を行えば、これまでレモンが育ちづらかった地域でも、栽培できる可能性があります。
寒冷地で栽培する方法についてはこちらをご覧ください
「レモン栽培を寒冷地で行うことは可能ですか?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。