花卉をメインに栽培している農家です。
ハウスで花卉を栽培していますが、ハウスが空いているので、果樹を育ててみようかと検討しています。
私の農地は日当たりが良いこともあり、近隣の農家が育てていない熱帯果樹に興味を持っているのですが、その中でも高く売れるマンゴーの栽培に興味を持っています。
しかし、マンゴーどころか、果樹を栽培した経験はありません。
やはり熱帯フルーツであるマンゴーの栽培は初心者には難しいでしょうか?
花卉をメインに栽培している農家です。
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橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
マンゴーは施設栽培で室内を熱帯の温度に保つのが最重要
マンゴーの概要
まずは、マンゴーの基本として押さえておきたい事項をご紹介します。
日本で育てられているのはほぼアーウィン種
日本で栽培されているマンゴーの中で、最も一般的なのはアップルマンゴーの「アーウィン種」です。
アーウィン種は赤い果皮が特徴で、甘みが強く、肉質が柔らかいことから消費者に人気があります。
アップルマンゴーには他にメキシコやペルーなどで栽培されているケント種やヘイデン種といった品種がありますが、国内ではほとんど栽培されていません。
ハウス栽培が基本で施設内温度管理がポイント
マンゴー栽培にあたって、ハウス内での温度管理は非常に重要なポイントです。
栽培適温は20〜30℃で、10℃以下になると木が弱ります。
また、温度条件が適した沖縄でも、多くの農家が雨よけや気温変動対策の目的でハウス栽培を採用しています。
ちなみに露地栽培の北限は沖縄です。本土ではハウスなど、加温措置が必要になってきます。
温度管理や北限については、こちらをご覧ください
「マンゴーをハウス栽培する際の温度管理やスケジュールを学びたい」
「マンゴー栽培の温度管理はどうすればいい?」
「国内でのマンゴーの露地栽培の北限はどこですか?」
収穫は3年目から可能
マンゴーの木は植え付け後、約3年目から収穫が可能になります。
苗木を植えてから1~2年は花実は付けません。
木の成長と根付きを促進させるための期間です。
なお、種からでも栽培可能ですが、その場合収穫まで最低でも7~8年必要です。
マンゴー栽培の流れ
次にマンゴー栽培のざっくりとした流れについて説明します。
1、土や鉢などの準備
まずは適切な土や鉢の準備が必要です。
マンゴーは水はけと通気性の良い弱酸性の土を好むため、赤玉土(あかだまつち=火山灰由来の赤土を砕いた、排水性・通気性に優れた土)と腐葉土(ふようど=葉が微生物やバクテリアによって発酵・分解されたもの)とパーライト(火成岩から作られる土壌改良材で排水性を良くする)を「6:3:1」の割合で混ぜた土がおすすめです。
販売されているマンゴー専用の土を利用しても良いでしょう。
鉢植えの場合は、鉢のサイズは10号以上が目安です。
専用用土や土づくりについてはこちらをご覧ください
「マンゴー栽培には専用用土が必要?最適な土や準備方法は?」
2、苗植え(植え替え)
1年目の3~5月に苗木の植え付けを、2年目は同時期に植え替えを行いましょう。
最終的に100ℓ鉢くらいの大きさまで植え替えをしてポット栽培をされるのがおすすめです。
根を傷つけないように注意し、苗木の根元の土をしっかりと押さえて空気が入らないようにします。
その後、たっぷりと水やりをして、根付きを促進させます。
3、仕立て
続いての工程は仕立て・誘引・剪定です。
マンゴーは自然状態では枝分かれしません。
放っておくと上方向にどんどん伸びていくため、若木の段階で仕立てておくのが重要です。
まずは1年目の8~9月頃、主幹(木の幹)を40〜50cmの高さで切り戻します。
ここから新しい主枝(しゅし=主幹から分かれる大枝)を3本伸ばます。
そして主枝は20〜30cmで切り戻し、亜主枝(あしゅし=主枝から分かれる枝)を発生させます。
切り口には必ず癒合剤を塗布してあげてください。
4、水やり・追肥
マンゴーで特に水やりに注意が必要なのは「植え付け1年目の根がしっかりと定着するまで」と「3月から10月にかけての開花・果実の肥大期」です。
反対に、11月から翌年の3月にかけては、水やりを控えることで花芽分化しやすくなります(乾燥ストレスを与える)。
追肥のタイミングは「1年に3〜4回」、1~2月、4~5月、8~9月(お礼肥=収穫後時期に与える肥料)が良いでしょう。
3大栄養素が等分、もしくはリン酸がやや多めに含まれた「5-7-5」の緩効性化成肥料(効き目がゆっくりで、化学的原料から作られた肥料)がおすすめです。
マンゴー専用肥料もあります。
肥料や施肥の方法についてはこちらをご覧ください
「マンゴーの肥料はどう選ぶべき?適切な施肥方法も知りたい」
「マンゴー栽培で、糖度をアップするにはどのような肥料を与えるといいですか?」
5、花吊りと虫による受粉
花はその重みで垂れて枝が折れるのを防ぐため、上向きに紐で固定する「花吊り」も必要です。
マンゴーの受粉は主に虫、特にハエやハチによって行われます。
受粉を助けるため、施設内にハチの巣箱やハエを呼ぶ仕掛けを設置する農家もあります。
筆などを使う人工授粉も本数が少なければ可能ですが虫媒をおすすめします。
6、摘果・袋がけ・収穫
果実が実り始めたら摘果を行いましょう。
栄養分や日光を集中させるため1つの枝に1〜2個を残し、他の果実は切り落とします。
6月から8月にかけてがマンゴーの収穫期です。
果実の色が変わり、果実の重さで落果するようになった時がベストです。
地面に落ちないよう、色が変わり始めてきたら果実に袋やネットを掛けて吊り下げておきましょう。
袋がけには日焼けや害虫被害を防止する効果もあります。
ネットを使用する場合は、ブドウ用の傘を日焼け防止に使用されると良いでしょう。
7、誘引・剪定
収穫後の9月には、上方向に伸びる枝を根元から切り、果実のついた枝を軽く切り戻して傘状の樹形に整えてください。
生長が止まる11月頃までに2芽伸びるのが理想です。
2芽伸びた後、十分に緑化した新梢(しんしょう=今年伸びた枝)を水平方向に誘引し、翌シーズンの花芽分化を促します。
マンゴーの病害虫防除の方法
マンゴー栽培で注意すべき病害には、炭疽(たんそ)病、軸腐(じくぐされ)病、灰色かび病などがあります。
またカイガラムシ、コナダニ、アザミウマといった害虫がよく見られます。
防除には薬剤散布が最も効果的です。薬剤以外では、害虫トラップなども役立ちます。
病害虫の発生や感染拡大のリスクを低減するためには、換気などで多湿な環境を避ける、開花後の花ガラの除去や剪定後の不要な枝や葉をハウス内に残さないよう適宜掃除をしてください。
注意すべき病気についてはこちらをご覧ください
「マンゴー栽培で特に気をつけるべき病気は?」
このお悩みの監修者
橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
前職で仕事に役立てるためにAICに通ったことがきっかけで就農を志す。研修先の香 川県三豊市でアンファーム社長、安藤数義氏と出会い2016年株式会社「アンファー ム」に入社。アボカド産地化に日々奮闘中。アボカドの栽培を通じて地域と農業の魅力発信を行っている。