沖縄に移住して、憧れのマンゴー栽培を始めました。
沖縄はマンゴー栽培が盛んなので、近隣の農家さんたちがいろいろと教えてくれて助かるのですが、気をつけるべき病気や対策については、農家さんによって言うことが違うので、誰の意見を信用すれば良いのかわからなくなってきました。
そこで、マンゴー栽培で注意すべき病害と、対策方法について詳しく教えてほしいです。
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橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
マンゴーの栽培で気をつけるべき病気は炭疽病・軸腐病など、ハウス内のこまめな換気で湿度調整を!
マンゴーによく発生する5つの病害
それではマンゴーの代表的な5つの病気について、症状や問題点を解説します。
炭疽病(たんそびょう)
「炭疽病」はマンゴー栽培で最も注意すべき病害の1つです。
葉や果実に、最初は小さく黒い斑点が現れ、次第に拡大・融合して、進行すると黒く枯れます。
表面が腐敗するほか、葉や果実が落ちることもあります。
厄介なことに、商品として出荷した後の輸送中に進行してしまい、市場や消費者からのクレームにつながる事例が少なくありません。
原因はマンゴーの他にもパパイア、桃、アスパラガス、などにも寄生する多犯性の菌で雨や泥はねなどにより感染が広がります。
軸腐病(じくぐされびょう)
「軸腐病」は、枝の切り口や花梗、果実に症状が出ます。
収穫後、果実の軸(果梗=かこう)の近くで褐色の斑点が現れます。
そこから軟化して腐敗が進み、果実全体を腐らせてしまうことがあります。
ほとんどが収穫後に発生するため、炭疽病と合わせてマンゴー農家にとって対策の重要度が高い病害です。
すす病
すす病は、葉や果実の表面に黒いカビ状の斑点が現れる病気です。
進行すると葉や木が、すすに覆われたように真っ黒になります。原因菌による直接的な害はありませんが、光合成量が減るので樹勢が衰え、果実の品質も下がります。
すす病の主な原因は、マンゴーキジラミやアブラムシ、カイガラムシといった害虫の分泌物です。
灰色カビ病
灰色カビ病は、果実や花、若い枝に灰色のカビが生じる病気です。
マンゴーでは花が咲く時期に発症するため、発症後の薬剤散布などの対処がしづらいという難点があります。
その為、開花前の予防が発生防止の重要なポイントになります。
うどんこ病
うどんこ病は、マンゴーでは花軸(かじく、果梗の元にある軸の部分)全体に白い粉状のカビが生じる病気です。
発病すると開花不良や落花することがあります。
かいよう病
かいよう病はバクテリア(細菌)によって起こる、葉や枝、果実の病気です。
葉には黒い斑点が発生します。果実でも同様の病斑を生じ、やがて融合・拡大して果実の品質を低下させます。
枝は亀裂のような筋状の病斑から、裂けるように損傷していきます。
マンゴーの病気の防除・対策方法
次にマンゴーの病害対策について説明しましょう。
薬剤散布
予防・発生後の対処とも、最も確実な方法は薬剤の散布です。
一番心掛けることは予防です。発生後の対処も大事ですが、予防のタイミングを間違えなければ、かなりの確率で病気も虫も防げます。
特に炭疽病や灰色カビ病、うどんこ病などは、病原菌が寄り付かないように事前に散布するのが一般的です。
また、すす病など害虫の影響で発生するものには、殺虫成分を含む薬剤を使いましょう。
農薬は購入前に成分や用法についてしっかり確認してください。
沖縄県であれば県の栽培防除暦などがあると思います。
栽培する地域の方針や指導の範囲で、正しい濃度や頻度を守って使用してください。
果梗部の熱処理(軸腐病)
マンゴー軸腐病の対策方法の1つに、果梗部の熱処理があります。
軸腐病は果梗部に発生した病原菌の働きにより収穫後に発症するため、これを死滅させれば果実部分への感染拡大は抑えられるのです。
収穫後できるだけ早い段階で、はんだごてや専用器具を用いて果梗部に熱処理を加えるのがポイントです。
ただ、この熱処理、実はかなり熟練の技能が必要と聞いています。
軸だけを熱処理するのが大変難しいそうです。
害虫トラップ
害虫をトラップで物理的に捕獲することも、間接的な病気の予防効果をもたらします。
トラップには、害虫が好む色や成分で誘い込み、粘着物質で捕えるものが多いです。
施設内で害虫が大量発生する予兆がないかをモニターする時にも役立ちます。
マンゴーを加害するアザミウマに対しては黄色のトラップが有効です。当園でも黄色の粘着トラップを使用しています。
病気が発生しにくい環境作り
病害の最大の対策は、ハウスなどの栽培環境を、病気が発生しづらい場所に管理することです。
残渣や雑草を残さない
病害虫の多くは、農業残渣(ざんさ=収穫後に残る葉や枝などの残骸)や雑草を経由して他の植物に感染します。
当園では開花前、花が散った後、摘果の後など最低3回はハウス内を清掃します。
特に梅雨時期のジメジメした環境では残渣にカビが生える可能性が非常に高いです。
また花が散った後は、葉っぱや枝の間に挟まった花ガラなどもできるだけ取り除きます。
そうすることでそこに湿気が溜まってカビが生えるのを防ぎ、病気の発生リスクも下げられるし、虫の繁殖場所や隠れ場所を減らすことができます。
また剪定後の枝や葉はすぐに外へ持ち出します。地面から雑草が生い茂らないよう、まめに抜いたり刈ったりしましょう。
換気などで多湿を避ける
ハウスでの加温栽培が基本となるマンゴーの圃場は、病害虫が好む高温多湿な空間です。
湿度や温度に応じてこまめに空気を換気するようにしてください。
ムシムシジメジメした環境は虫も病気も大好物。
できるだけ発生しづらい環境を作らないことが病虫害予防の第一歩です。
換気扇を取り付ける、送風機などで空気を循環させるのも有効な方法です。
あと夏場に暑いからと言って、夕方に灌水するとハウス内に湿気が溜まり病気を発生させる原因にもなりますので、灌水の時間帯も考慮されると良いでしょう。
道具を清潔に保ちこまめに消毒する
剪定バサミなどの道具に病原菌が付着して感染拡大につながる事例もあります。
使用する農具や器具は常に清潔に保ち、定期的に消毒すると良いでしょう。
次亜塩素酸ナトリウムやエタノールなどの薬剤がお勧めです。
気を付ける病気や虫はいろいろありますが、基本は発生させないように「予防」を心がけることが一番大事かなと思います。
起こってからの対処ではなく、起きづらい環境づくりを大事にしてください。
私は毎日の水やりの時に、できるだけ樹を見て回り、何か変化がないか観察するようにしています。
日々の積み重ねで結構病気も虫も予防できると思っています。
沖縄は熱帯果樹の本場ですよね!
きっと周りに素敵なマンゴー農家さんがたくさんいらっしゃると思います。
交流を深めていろいろ学ばせてもらうことも、栽培技術の向上の近道になると思いますよ!
このお悩みの監修者
橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
前職で仕事に役立てるためにAICに通ったことがきっかけで就農を志す。研修先の香 川県三豊市でアンファーム社長、安藤数義氏と出会い2016年株式会社「アンファー ム」に入社。アボカド産地化に日々奮闘中。アボカドの栽培を通じて地域と農業の魅力発信を行っている。