沖縄県でマンゴーを栽培しています。
まだ就農して2年目、日々勉強するばかり。今年も無事マンゴーの季節が終わりました。
今年から無農薬栽培に着手したこともあり、虫に悩まされた年でした。
とくにでかいバッタには心から悩まされて毎日格闘しました。
現在はマンゴーの木のケアにあたっているのですが、今度は木にカイガラムシが住み着いていました。
殺虫剤を使えば楽に駆除できるのでしょうが、こんなことで薬品を使いたくはありません…。
現在は、歯ブラシでゴシゴシして手作業で駆除しています。だけどさすがに疲れます。
薬品を使わないで駆除できる、また、対策する方法はないのでしょうか?
(沖縄県・富田さん/仮名・40代)
田中宏卓
九州大学総合研究博物館 協力研究員、愛媛大学農学部 客員研究員
まずはカイガラムシを発生させない、未然に予防することを心がけましょう
カイガラムシは、セミやアブラムシ、カメムシなどの仲間の農業害虫です。
野菜や果樹、さまざまな植物に寄生し、養分を吸汁(きゅうじゅう)して腐らせてしまいます。
発生する原因には、繁殖のほか、風で飛んでくる、衣服などについて持ち込んでしまう、などがあげられます。
カイガラムシがマンゴーに与える被害として、まずは直接の吸汁による樹勢(木の勢い)の衰えが挙げられます。
たいていの場合は樹勢が多少衰えるだけで済むと思いますが、寄生密度が著しく高い場合などには、枝枯れなどを起こすかもしれません。
枝枯れなどが生じた場合は収穫量にもかなり影響するでしょう。
次にあげられる被害としては「スス病」が発生する可能性があります。
寄生しているカイガラムシが「カタカイガラムシ科」や「ワタフキカイガラムシ科」、「コナカイガラムシ科」のカイガラムシの場合、排泄物に含まれる糖分を養分にすることで「スス病」が発生します。
この病気が発生してしまうと、葉や果実が黒く汚れ、マンゴー樹の光合成を阻害してさらに樹勢が衰えたり、果実が汚れて等級が下がったり、果実の汚れをふき取ったりと、余計に労力が必要になるでしょう。
沖縄のマンゴー栽培は、通常はハウス栽培で行われていると思います。
露地栽培でなら野外の天敵(てんとう虫や蜂)などの働きでカイガラムシ密度が抑えられることもありますが、ハウス栽培だと天敵の働きが抑えられてしまうので、無農薬栽培はかなり難しいように思います。
防除のためには、「農薬を使う」「マンゴー樹を適度に剪定する」「相談者さんのようにブラシでこすり落とす」「被害の大きい枝は切り取り適切に処分する」「ハウスの換気をよくしてできるだけカイガラムシの天敵が入ってくるようにする」、などの方法が考えられます。
しかし、これらの手段を試そうとしても、発生しているカイガラムシの種類や発生状況などによっても使える手段は変わってきます。
もっとも良いのは、カイガラムシをまず発生させない、未然に予防することです。
カイガラムシは風通しの悪い場所に発生しがちなので、まずはハウスの風通しを良くすることに努めてください。
カイガラムシが繁殖するのは5~7月なので、この時期に意識して剪定を行い、カイガラムシを発生させないようにしましょう。
沖縄のマンゴーを加害するカイガラムシ類については、1996年に発表された「沖縄県で発生が確認されたマンゴーのカイガラムシ類」という論文で、当時発生の認められたカイガラムシ類がまとめられています。
当時で4科27種のカイガラムシの発生が認められたとのことです。マンゴーにどのようなカイガラムシが発生するか、参考になると思います。
ただ20年以上昔の論文ですので、ここに掲載されていないカイガラムシが発生しているかもしれません。
また一部学名の変わっているカイガラムシもありますのでご注意ください。