完熟マンゴー(アーウィン種)を栽培して10年ほどになります。収穫の時期は5月末から7月末の2カ月間です。
収穫後はあまり木が成長しないように枝切りを行って、全体に日があたるようにケアしています。
年が明けてからの室温調整には気を使いますが、パイプハウス用の手動開閉式内張りカーテンなどを導入して、きめ細かく対応しています。
しかし、試行錯誤を繰り返していながらも、肝心のマンゴーの糖度はなかなかアップしません。
現在の糖度は12〜15度でバラツキがあります。
私が住む宮崎県の特産「太陽のタマゴ」の基準は糖度15ですが、それをクリアする甘さの果実を作りたいと思っています。
そこで、これからは土づくりに注力しようと考えていますが、肥料の差によってはマンゴーの形も変化してしまう恐れもあります。
現在はパルプチップ、米ぬか、完熟の牛糞堆肥などを加えながら育てています。土づくりの大まかな流れとしては、収穫後から秋にかけて樹勢回復のために肥料と潅水を多めにしています。
その後は、状況を見ながら追肥しています。
現状の土壌を活かしながら、糖度を上げる肥料、施肥のタイミングなどがあれば教えてください。
(宮崎県・吉田さん/仮名・40代)
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
マンゴーの糖度アップには、肥料や土づくりなどの基本に加えて、光合成を最大限にする樹体作りと栽培管理が重要
南方系の果樹の研究を経て、現在は南九州大学で果樹園芸学を教えている前田と申します。
ご相談内容から、土づくりにかなり熱心に取り組まれていることがうかがえます。農作物の栽培において、土づくりは基本ですから、基本に忠実にマンゴーを栽培されているようですね。
糖度を上げるための肥料に関するご相談ですが、温帯果樹の品質を向上するためには、化成肥料にばかり頼らず、有機肥料なども施用した方が良いという話をお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
この理由には、有機肥料に含まれるミネラル等が影響しているのではないかと考えられるからです。
糖度をアップさせるためには、肥料や土づくりももちろん重要なのですが、一連の栽培体系のなかで、光合成を最大限にしていく樹体づくりと栽培管理を行っていくことがベストだと私は考えます。
栽培管理の例として、着果管理が非常に重要になってきます。以下、手順をご紹介しますので参考にしてみてください。
1:出蕾し始めたら花房を外側に誘引し、開花したら花房を引き上げます。
2:幼果ができ始めたら着果管理を行います。マンゴーでは葉果比(果実1つを生産するために何枚の葉が必要か)60程度と言われておりますので、この着果管理は糖度アップには非常に重要であると考えます。
3:摘果後には、玉吊りをして果実に太陽光線を十分に当てるようにします。
4:果実肥大期には、十分な施肥と潅水(水やり)を行うことが重要ですが、その際、肥料と水を吸収できる細根を地表近くに多く張らせておかなければなりません。
そのためにも、圃場には有機物を投入したり、土壌表面への有機物マルチのほか、養分が多い土(客土)の搬入などによって、根がしっかり発達するようになります。
繰り返しますが、肥料と水を効率よく樹体内に取り込めるような細根づくりがカギを握ります。(この点は、ご相談者さまは確実に行っていただいているものと思っています)
上記のような樹体管理を行うことで、効率良い光合成が可能になり、果実の糖度がアップします。
以上、思い当たるポイントについていくつか書かせていただきましたが、ご相談者さまの栽培環境がわからないので、一般的な栽培指導になりますが、何か参考になるところがありましたら、取り組んでいただけたら幸いです。
上記の回答につきまして、何かご不明な点がありましたら、遠慮なさらず編集部までご連絡下さい。以上、よろしくお願い致します。