近隣の農地を借りることができ、そこが思ったより広かったので、アボカドの栽培をはじめようと情報収集しています。
アボカドは熱帯果樹のため、気候や温度の問題があると思いますが、ハウスを立てるほどの余裕はないので、露地で育てようと思います。
一応、市内の道の駅ではアボカドが出品されているので、うちの近くでも育てることはできると思うのですが、肝心の栽培方法の知識が乏しい状態です。
近くの果樹農家さんから話は聞いているのですが、人によって微妙に育て方が違うようで、何が正しいのか迷っています。
アボカドを栽培するうえで注意すべきポイントなど、アドバイスいただけないでしょうか。
橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
アボカドの栽培は温暖な環境で冬の低温と風に気をつけて栽培しよう!
アボカドの栽培期間
アボカドの収穫までの期間は、種は8〜10年ほど接ぎ木苗では3〜5年ほどです。
接ぎ木苗の場合、翌春から花がつくことがありますが、幼木は花を咲かせることで、体力を使ってしまい植物自体が弱ってしまうため、2、3年間は摘蕾してアボカドの樹の成長を優先させましょう。
アボカド収穫までの期間の主な作業では、剪定と施肥作業があります。
収獲ができるまでの詳細な期間についてはこちらをご覧ください
「アボカドの栽培にかかる期間はどれくらい?」
アボカドの栽培適温
気温
アボカドの生育適温は15〜30℃です。
亜熱帯果樹であるアボカドは、国内の柑橘の栽培適地と重なります。
熱帯果樹と思われることも多いアボカドですが、耐寒性のある品種も存在し、品種によっては−6℃まで耐えられるものもあります。
露地栽培の場合、栽培する地域の厳冬期の最低気温が何℃まで下がるのかを確認し、その地域の寒さに合った耐寒性の品種を選定しましょう。
栽培に適した気温や育てやすい品種についてはこちらをご覧ください
「アボカド栽培に適した気温はどれくらいですか?」
季節
アボカドは暖かい環境を好む果樹なので、遅霜が降りなくった春から梅雨明けまでに定植するとよいでしょう。
種を播種するのもこの頃が良いです。
栽培中の季節では、冬の寒さ以外にも夏の高温と乾燥にも注意が必要です。
気温が35℃以上なると樹勢が弱まることがあります。
夏は日差しが強く、新芽や枝が日焼けしてしまうことがあります。
そのため、ハウス内では遮光する、開口部を増やして風通しを良くする、など暑さ対策が必須になります。
寒冷地
アボカドは低温と霜を避けなければならないため、寒冷地ではハウスで加温して栽培する必要があります。
特に、アボカドが幼木のころは耐寒性が十分に発揮されないので、寒さで枯死させないように注意しましょう。
露地栽培の場合は、冬囲いは必須になります。定植して最低2年は冬囲いをするのが望ましいです。
また冬場の冷たい乾いた北風も樹勢を弱らせます。
防風ネットなどで風を防ぐのも冬対策の一つのポイントになります。
鉢で栽培している場合、冬の日中は外に出してもよいですが、霜が降りる、気温がマイナスになるような夜は室内へ移動するのが良いと思います。
寒冷地で栽培する上での注意点や品種はこちらもご覧ください
「寒冷地でアボカドは栽培できる?栽培上の注意点を教えて」
「寒冷地の北海道でアボカドの栽培に挑戦したい!栽培方法や品種を教えて」
アボカドの植え方
種の植え方
アボカドの種は、果肉を洗い薄皮をとってから植えます。植える際に、果肉が残っているとカビの原因となるためしっかりとっておきましょう。
種は上下があるので、とがっている方を上にして植えます。
アボカドの苗を植えるときには、根はりが充実しているか確認することが大切です。
ロングポットに播種した場合半年から1年で根は充実して張るようになります。
根がしっかり張っていないようであればポットのまましばらく育ててある程度の大きさまで成長させてから植え付けるのもよいでしょう。
アボカドを種から育てる方法はこちらをご覧ください
「アボカドを栽培したい。種と苗木どちらから育てるべき?」
土
アボカドは水はけのよい環境で弱酸性の土壌を好みます。
水はけが悪いと根腐れがおきることもあるので、土壌環境を整えてあげましょう。
ポットで育てる場合には、土壌に空気の層を入れるように軽石などを混ぜて排水性の良い環境にして栽培するのがおすすめです。
露地栽培をする際には、緩やかな傾斜のあるところが水はけがよく適地と言えます。
栽培に適した圃場の条件や肥料についてはこちらをご覧ください
「アボカドの栽培に適した土壌の条件や土づくりのポイントは?」
「アボカド栽培の肥料の与え方や季節ごとに注意すべきことは?」
アボカドの栽培方法
アボカドの栽培方法にはいくつか種類があります。それぞれの栽培方法について解説していきます。
水耕栽培
アボカドは水耕栽培でも育てることができます。
根の下部を水につけておくことで、発芽しある程度の大きさまで育てられます。
しかし、水耕栽培では収穫まで育てるのは難しいです。
そのため、実をつけ収穫までおこないたいのであれば、発芽・発根をした早い段階から土に植え変えるのがおすすめです。
土に植えかえる時にも根が折れたりしないよう十分気を付けて植えかえてください。
もしくは最初から種を直接土に植えるのもおすすめです。
当園でも最初は水耕で播種して土に植え替えていましたが、現在は種は直接ポットに播種しています。
根域制限栽培
鉢や防根シートを使い、根の広がる範囲を制限する方法です。
樹形をコンパクトに作ることが出来、また収穫できるまでの年数も若干ですが縮まります。
但し、ハウス内での栽培に向いている方法です。
露地栽培
アボカドは、低温と風に注意すれば露地栽培をすることも可能です。
自然災害の影響を直に受けるのがデメリットではありますが、比較的ローコストで始められるのはおすすめのポイント。
実際に、静岡県での栽培例もあります。
栽培する場所の冬場の最低気温を調べ、それに合った耐寒性のある品種を育てたり、防風林の活用をするなどの工夫をして栽培を始めるようにしましょう。
露地栽培の条件や気をつけるべき病害虫などはこちらをご覧ください
「アボカドの露地栽培を始めたいので、特徴や注意点を教えてください」
水やり
アボカドの生育にはたくさんの水が必要です。
水やりはこまめに行い乾燥させないようにしますが、水のかけすぎによる過湿にも気をつければなりません。
特に、夏は高温による乾燥、冬は水のかけすぎによる過湿に注意が必要です。
排水性の良い場所であれば加湿は起こりづらいですが、土質によっては梅雨の長雨などで根が傷むこともあります。溝を掘るなど、排水性を上げる圃場作りをおすすめします。
剪定
アボカドの剪定は、仕立てのための剪定は基本必要ないと思います。間引き剪定は必要になります。
当園の場合はまず花が咲き終わった後に結実していない枝を風通しを良くするため、間引いたり、地面についている枝を切ったりします。
徒長枝や逆行枝なども切ります。
必要であれば適宜風通しの確保のために枝を間引きます。
但し夏の強い日差しで枝が日焼けして樹勢が落ちないよう、切りすぎに気を付けてください。
光合成のために葉を残すことが大切なので、葉や枝をできるだけ残しつつ、重なり合う空間を減らして日光が全体に入るように剪定します。
肥料
アボカドの施肥期間は、春・夏・秋です。
しっかりと施肥を行うことで、栄養成長と種族維持の生殖成長のバランスを保つことができ、アボカドは元気に育ちます。
樹が大きくなるにつれて施肥量を増やし、開花が多い場合にも多めに施肥をします。
降雨がないと肥料の効果が表れにくいので、施肥後に乾燥が続くようならかん水をしてあげるようにしましょう。
施肥の時期や追肥についてはこちらをご覧ください
「アボカド栽培の肥料の与え方や季節ごとに注意すべきことは?」
アボカド栽培についての理解を深めアボカド栽培を始めよう
亜熱帯果樹であるアボカドは、温暖な環境を好みますが、寒さに弱い特徴があります。
露地栽培の場合、冬場に気温0℃以下になる環境では育てることが難しいので、ハウスで栽培する、耐寒性のある品種を育てるなどしなければなりません。
また、アボカドは弱酸性で水はけのよい土壌での栽培がおすすめです。季節ごとに適切な水やりをして、乾燥や過湿状態をさけるよう栽培しましょう。
アボカドの栽培はほかの果樹と同様、栽培する場所の気候や土質などの違いによって、気を付ける点が変わってきます。
自分が植えようと思う場所、育てたい品種の特徴などを考慮して、まず植えてみることをおすすめします。
百聞は一見に如かず。
自分で育てながら、いろんな発見をしていくのがアボカド栽培の魅力だと思います。
是非アボカドの沼にハマるチャレンジをしてみて下さい!
着果の年数を短縮する方法についてはこちらをご覧ください
「アボカドを栽培する際、苗木から植え付けると何年で収穫できる?」
このお悩みの監修者
橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
前職で仕事に役立てるためにAICに通ったことがきっかけで就農を志す。研修先の香 川県三豊市でアンファーム社長、安藤数義氏と出会い2016年株式会社「アンファー ム」に入社。アボカド産地化に日々奮闘中。アボカドの栽培を通じて地域と農業の魅力発信を行っている。