最近、国内でもアボカドを栽培している農家がいると聞き、耕作放棄地でアボカドを栽培したいと考えています。
アボカドは、メキシコなど暖かい土地で栽培されているイメージですが、うちの土壌や土地の条件が合っているのか、家族の間で意見が割れています。
しかも、ハウスがあれば良いのですが、うちには畑しかなく、新たにハウスを建てるだけの資金もありません。
露地栽培の条件が適していれば是非ともチャレンジしてみたいのですが、アボカド栽培に適した土壌条件や土作りのポイントを教えて下さい。
最近、国内でもアボカドを栽培している農家がいると聞き、耕作放棄地でアボカドを栽培したいと考えています。
アボカドは、メキシコなど暖かい土地で栽培されているイメージですが、うちの土壌や土地の条件が合っているのか、家族の間で意見が割れています。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
アボカド栽培には水はけ・水もちがよく、弱酸性の土が適しています
アボカド栽培に適した圃場(土壌、立地)の条件
中央アメリカからメキシコにかけての地域が原産のアボカドは、低温に弱く、主に熱帯や亜熱帯で栽培されてきました。
アボカドはクスノキ科ワニナシ属の常緑樹で、樹勢が強く、実生(種からまいて接ぎ木をせず、そのまま育てた)樹では、樹高が30メートルほどにもなります。
通常、栽培用の木は接木(耐病性や耐寒性などの特性を持った台木(根を張っている元となる樹)に、食味や形質などに優れた栽培品種の穂木を継いで、両方の木のよい特性を備えた苗木を作ること)ですが、台木の種類や栽培環境によっては、10メートルを超えます。
しかし、実際栽培するとなると、5メートル以下に樹高を抑えたいです。
アボカドを栽培するのに適したほ場の条件を見てみましょう。
土の水はけ、水もちがよい
アボカドは根が浅く、根域は地上から60センチ以内にあり、重要な役割を果たす根はほとんどが20センチ以内にあります。しかも、アボカドの根は、たくさんの酸素を必要とします。
そのため、排水性の良いことが土の条件になります。
また、アボカドは通気性の良い土で生育が優れます。通気性の良い土は、一方で乾燥もしやすいことから、特に夏場はかん水が重要です。
そのため、排水性がよいだけでなく、同時に水もちがよいことも土壌の条件となります。
土は弱酸性
アボカドの原産地では、pHが中性付近の土壌で栽培しているところもありますが、メキシコ系やグアテマラ系(アボカドは原産地により大きく、メキシコ系、グアテマラ系、西インド諸島系に分けられます)は、イスラエルの石灰質土壌ではクロロシス(葉のクロロフィルが不足し葉の色が黄色から白色になるため、葉脈のみ緑色が残ってはっきり見える状態)を示したとの報告もあります。
日本の土壌は酸性土壌になりやすいですが、5.5~6.5程度の弱酸性土壌であれば問題なく栽培できます。
土壌のpHが高いアルカリ土壌の場合には、硫黄粉末を投入することで改善できます。また、酸性肥料や土壌改良資材のピートモス等を施用すると、pHも下がります。
元肥や追肥の与え方、タイミングについてはこちらをご覧ください
「アボカド栽培の肥料の与え方や季節ごとに注意すべきことは?」
南斜面で、冬場の寒気が滞留しない
アボカドは寒さに弱いため、冬場の最低気温が重要です。
品種にもよりますが、耐寒性のある品種(ベーコン、メキシコーラなど)でも、氷点下4度以下になると栽培は困難です。
そのため、日光がよく当たり、冬場に冷気が滞留しない南斜面の圃場が適しています(特に冬場、北西の風を受けないところがベストです)。
寒い地域での栽培についてはこちらをご覧ください
「寒冷地でアボカドは栽培できる?栽培上の注意点を教えて」
強風が当たらない
アボカドは高木になりやすく、しかも新梢(新しく伸びた枝)が伸びてその先端(昨年発生した枝の先端)に着花するため、幹や枝が強風で折れやすくなります。
栽培する際には、樹があまり大きくならないように、上に伸びる新梢を摘んで、横に伸びていく新梢を残すようにして、樹高が低く抑えられるように調整します。
果実が落ちやすいため、強風の吹く場合には防風林を設ける必要があります。
ただし、防風林との養分競合でアボカドが負けないようにして下さい。
根が横に伸びるスギやヒノキは絶対に植えないようにして下さい。
栽培に適した気温や収穫までの期間についてはこちらをご覧ください
「アボカド栽培に適した気温はどれくらいですか?」
「アボカドの栽培にかかる期間はどれくらい?」
植え付け後の土の管理
ポット育苗された苗の植え付けは、霜が降りる危険がなくなった4月〜5月くらいに行いましょう。
80センチ四方の穴を掘り、元肥としてバーク堆肥20キロ、苦土石灰5キロ、ヨウリン3キロ程度を入れ、掘り取った土と良く混ぜて下さい。
さらに微量要素の入った土壌改良材も一緒に混ぜると良いでしょう。
できるだけ30センチ程度盛土をして植え付けて下さい。アボカドは水が溜まると枯死しやすいため、、盛り土をおすすめします。
定植後は支柱を立てて、敷きわらをします。敷きわらは土の乾燥を防ぐとともに、大雨時に土が流れるのも防いでくれます。
アボカドの植え付けや収穫作業についてはこちらをご覧ください
「アボカドを栽培したい。種と苗木どちらから育てるべき?」
「アボカド栽培における収穫方法や収穫時期について知りたい」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。