北海道で専業農家をしている3代目です。
北海道の涼しい気候を活かし、父の代から稲作を中心にさまざまな野菜を栽培しています。
最近とても気になっているのは、地球温暖化の影響もあって、北海道でも年々気温が上がっていること。
2030年までには今よりも年間の平均2度気温が上昇するとも言われています。
気温が上がれば農作物にも被害が出始めると考えられるので、農家にとって死活問題です。
でも待っているだけでは何も解決しないと思うので、三代続いた農家をこれからも継続していくため、ほかの作物にチャレンジするのはどうかと考えています。
そこで私が目をつけたのはアボカドです。
アボカドはアメリカなどからの輸入品が多いですが、最近は国産も徐々に増えていると聞きました。
熱帯果樹なので暖かい気候が向いていますが、耐寒性の品種もあるそうなので、北海道産のアボカドにチャレンジしてみようと思っています。
ただ、アボカドへの挑戦は初めてで、周りにも作っている人がいないので、わからないことだらけ。
どう栽培したら良いのかわかりません。
おすすめの品種や北海道という寒冷地域での栽培方法についてアドバイスいただけないでしょうか?
(北海道・ 田窪遼さん/仮名・30代)
けんゆー(上原賢祐)
けんゆー(上原賢祐)
温暖化で暖かくなりつつあるが、北海道でのアボカド栽培はハウス栽培がベターです
アボカドの栽培は、栽培地域、品種、栽培方法がポイントになります。
まず栽培地域について。
北海道でアボカド栽培に取り組まれたいということですが、確かに温暖化の影響で熱帯果樹の栽培地域が、南から北へじょじょに上がっていると言われています。
しかし、北海道での露地栽培はまだまだ越冬が難しいのが実情。栽培するなら、ハウス栽培がベターでしょう。
ハウス栽培には、暖房や地熱利用などの加温設備が必要ですが、その分、費用もかかります。
しかし、北の地域で栽培すると、南の地域で発生する害虫被害がとても少ないという大きなメリットがあります。
無農薬栽培もやりやすいですし、販売時のブランド化にもつながる点は、北海道ならではの強みとなるでしょう。
次に品種についてです。
ハウス栽培の場合は特に品種に制限はないと思いますが、やはり安全を考えて質問者さんも仰っている耐寒性の高い品質をある程度選ばれた方が無難です。
アボカドの場合は「メキシコ系」という系統の品種が一番おすすめです。もしくは、メキシコ系統の遺伝的要素を含む交配品種でもいいですね。
アボカドは熱帯果樹の中でも耐寒性がある作物ですが、その中でも「メキシコ系」や「メキシコ系のハイブリット種」は特に耐寒性に優れています。
マイナス4度~6度程度まで耐えると報告されている品種も存在しているんですよ。(ただし、若木の間は、耐寒性が低い場合があるので、最初の2年程度は極低温(0度)にさらさないようにすることが望ましい)。
例えば、メキシコ系には、「メキシコーラ」「ウィンターメキシカン」などがあり、メキシコ系統のハイブリット種は「ベーコン」「フェルテ」などがあります。
それ以外にも、「エッティンガー」「メキシコーラ グランデ」「スチュワート」も耐寒性品種という点でおすすめです。
ハウス栽培の場合は、耐寒性の品種に限らず多くの選択肢があると考えていますので、グアテマラ系の品種なども食味の良さからおすすめできます。
接木苗は、購入して翌年にすぐ開花して結実する可能性が高いですが、木が小さいうちは、収量も少なくなるので、ある程度、木を大きくして枝葉を増やす必要があります。それが約2~3年かかると思われます。
最後に栽培について。冒頭でもお伝えしましたが、北海道の地ではハウス栽培などの施設栽培が良いでしょう。
アボカドの木は他の果樹に比べて成長が早く、ハウスだと空間的制限があるので、なるべく低木管理が必要になります。
そのため、鉢植え栽培や枝の誘因管理を行ない根域の制限をすることで、樹上が高くなりすぎず、コントロールも容易になります。
北海道で多くの果樹を育てた日本熱帯果樹協会の代表理事である米本仁巳氏によると、鉢植えのポットの容量は300リットルで10年以上は栽培が可能であると報告されています。
ポットの容量をこれ以上大きくすると、樹上管理が大変になります。さらに、土質は排水性の優れたものがよく、潅水量も必要な点はご注意ください。
アボカドはたくさん花を咲かせますが、受粉率はそれほど高くありません。
そのため開花時期には、ミツバチやマルハナバチなどを導入して受粉させる必要があります。「ゆす村農園さん」で苗木を購入する際にその辺りの情報がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
開花時期は品種や栽培地域によっても異なりますが、ハウス栽培であれば2月あたりには開花するでしょう。
その時期は、平均気温が20度程度(最低でも17.5度)になるようコントロールしてください。夜間の加湿も必要です。
北海道は寒いからと諦めず挑戦する相談者さん同様、米本氏も6年程前に北海道にてアボカドなど多くの果樹栽培を行っています。
今や北海道では、バナナやマンゴーも生産されています。質問者さんのアボカド栽培が、北海道の大地で成功することを心から願っています。