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ピーマン栽培の時期ごとの作業やポイントを教えてほしいです

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ピーマン栽培の時期ごとの作業やポイントを教えてほしいです

家族経営で農家を営んでいます。

この春から一人社員を雇うことになり、人手が増えるので、品目を増やしてみようかと考えています。

家族で話し合った結果、長期的に収穫できると聞いたので、ピーマンの栽培を検討中です。

しかし、作付計画を立てる際に、ほかの作物の収穫期と時期が被るのではないかと不安になりました。

そこで、ピーマン栽培における作業スケジュールが知りたいです。

どのような時期にどのような作業が必要になるのでしょうか。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

ピーマンの露地栽培時期は5~10月、6月頃から長期間収穫可能

ピーマンの植え付け時期を軸に栽培計画を立てましょう


一般的な露地栽培の場合、ピーマンは5月~10月までが栽培時期です。

繰り返し実を付けるので、6~7月頃から長期間にわたる収穫が可能です。

ピーマンはナス科の中でも特に高温を好む夏野菜です。

暑い時期に肥料と水をよく吸って日光を浴び、1株から50~60個収穫できます。

ただし、上手に育てると1株から100個以上の収穫も期待できます。

ピーマン栽培の計画を立てる際に重要なのは、苗を畑へ植え付ける(=定植)時期を守ることです。

寒さに弱いため、定植が早すぎると上手く育ちません。

最適な時期は、一般的には5月です。ただし、暖地で栽培するのであれば4月下旬からでも可能です。

すべての工程はこれを基準に算出します。

それでは、月ごとに必要な具体的な作業について説明しましょう。

2~3月頃(4~5月でも可):種をまく・苗を育てる


種からピーマンを育てる場合、一般的な種まき適期は4~5月頃です。これはピーマンの発芽温度が25℃前後と高めであるためです。

ただしピーマンの苗は、畑へ植え替える大きさに生長するまで、60日程度かかります。

そこで、シーズン中により多くの収量を上げるため、暖かく調整した施設内(播種床に電熱温床線を設置することや、発芽育苗器やヒーターマットなどを準備すること)で2~3月に種まきを始める地域や農家もあります。

また、育苗の手間を省いて購入した苗を植えつけるところから栽培を始める方法もあります。


4月頃:土壌の準備・畑づくり


畑には日当たり・水はけのよい場所を選びましょう。

苗を畑へ植え替える前に必要な準備は、「土壌調整」と「堆肥(たいひ)」「畝(うね)立て・マルチング」「元肥(もとごえ)」の4つです。

堆肥とは、わらや糞(牛糞・豚糞・鶏糞)などの有機物を微生物の力で分解した農業(堆肥化)資材のことです。

畝立ては、植物を栽培する地面に、土を細長く直線状に山を作る(土を高く盛り上げる)作業のことです。元肥とは栽培開始前にあらかじめ畑に与える肥料です。

定植の予定日から逆算して、以下のような手順で進めてください。

1、約2~3週間前:土壌調整、堆肥


畑に石灰などを混ぜ合わせ、ピーマン栽培に最適な土壌phに調整します。

同時に、堆肥も入れてよく耕します。

2、約1週間前:元肥、畝立て・マルチング


約1週間前に元肥として、畑全体に肥料を施用し、120~150センチメートル前後の間隔を目安に土を盛り、畝を作ります。

水はけ・日当たりの良い場所でよく育つので、畝を高めにすると栽培しやすいでしょう。

土を盛って畝をつくることで水はけが良くなります。

このとき畝をビニールなどで覆って(=マルチ、マルチング)おくと、土壌の地温や水分保持量が上がって苗の活着が良くなるだけでなく、病害予防にも役立ちます。

ピーマン栽培に適した土壌についてはこちらをご覧ください
ピーマン栽培の土作りで重要なポイントは?



5月頃:畑へ苗を植え替え、仮支柱を立てる


定植は5月頃が目安です。

低温に弱いピーマンにとって、最低気温10℃、最低地温15℃を超え、朝方に霜が降りる心配のない時期が最適です。

逆にこれよりも早く植えたい場合、ビニールフィルムや寒冷紗および不織布などでトンネル状に覆うトンネル栽培など、ピーマンが寒さに当たらない工夫が必須です。

活着を良くするため、定植は天気の良い日の午前中に行いましょう。

株間は40~50センチメートル、根鉢の表面が地面より少し上になる程度の浅めに植えて、株元に土を寄せてください。

ピーマンは風に弱いので、定植と同時に仮の支柱を1株につき1本立てて、風や水やりで倒れないようにしておくのがおすすめです。

株の近くに垂直に差し込み、一番長い枝の中間を紐などでゆるく縛っておきます。


5月頃:支柱を立てて誘引、わき芽かきする


一番花(一番最初につく花)が見え始めた頃には、生長して分かれた枝を整える(整枝・せいし)の作業が必要です。

先に立てていた仮の支柱に加えて、1株あたり1~3本の支柱を追加で立ててピーマンを固定し、枝が伸びる方向を誘導(=誘引)します。

このとき、果実を収穫する枝以外のわき芽は全部手で摘み取って(わき芽かき)しまいましょう。

残した枝に栄養分を集中させることで、ピーマンが同じ枝になり続けます。

わき芽かきの方法についてはこちらをご覧ください
ピーマンのわき芽の処理方法は?コツや注意点も知りたい



6~9月頃:追肥と水やり、剪定


ピーマンの追肥は、最初は定植の2~3週間後を目安に化成肥料を与えます。2回目以降は、2週間に1度の間隔で定期的に行ってください。

追肥を与えた後は水やりも忘れてはいけません。特に梅雨明け以降の時期は土壌が乾燥しないように水やりに注意します。

ピーマンでは「尻腐れ」(実の下部が腐ったように黒くなる生理障害)果実の発生が見受けられます。

この症状は、カルシウム欠乏が原因で起こりますが、土壌中にカルシウムが豊富にあったとしても、夏場の高温・乾燥により植物体がカルシウムを吸収できず発生します。

したがって、土壌水分不足には注意しましょう。

残した枝以外の枝が伸びてきたらこまめに剪定して、株全体の日当たりを確保しましょう。

雨の日に植物に切り傷を作るとそこから病害が広がる恐れがあります。

剪定作業は晴れている時に行うのがポイントです。


6~10月頃:収穫


肥料と水、日照が十分にいきわたると、肉厚でつやのあるおいしい実が付きます。

開花後(最盛期では)15~20日頃が果実の収穫の目安です(ただし、成り始めはもう少し日数がかかる場合もあります)。ヘタの根元をハサミで切り取って収穫してください。

10月下旬頃まで収穫することができます。

なお、緑色のピーマンを収穫しないでいると、やがて赤や黄色、オレンジ色に変色します。これがカラーピーマンで、その中でも大型で肉厚なものがパプリカです。

実が大きくならない時の対策についてはこちらをご覧ください
ピーマンの実が大きくならない。考えられる要因と対策は?



時期ごとのピーマン栽培のコツと注意点


ピーマンは夏野菜の中でも高温を好む野菜です。

2~3月の育苗は施設内やトンネル掛けなどで、必要な気温・地温を確保するのがポイントです。

また、植え付けの目安は5月です。露地栽培での早植えは避けましょう。

梅雨が明け、気温がぐんぐん高くなる時期に気をつけなければならないのが、土壌の乾燥です。

不要な枝は切り落として、株全体への日当たりも確保しましょう。

さらに栽培シーズンが終わった後、同じ場所でピーマンやナス科の野菜を連作するのも厳禁です。

連作障害を起こしやすいため、3-4年は間隔を空けるのが無難です。

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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