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ピーマンの実が大きくならない。考えられる要因と対策は?

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ピーマンの実が大きくならない。考えられる要因と対策は?

今年からピーマンを育てていますが、実が大きくならない株がいくつかありました。

同じ環境で栽培してもこのようなことが起こるのでしょうか?

今年は概ね良い出来だったので、来年もう少し作付け面積を広げる予定ですが、同じ失敗はしたくありません。

難しいかもしれませんが、できる限り均一に大きな実を収穫するために、できることがあれば教えてください。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

肥料や日照が適切かどうかを見直し、実の付けすぎにも注意しましょう

大きなピーマンの実を収穫するのに必要な3つの要素


ピーマンは比較的高温の環境を好み、夏期に順調に生長し繰り返し実を付けるのが特徴の野菜です。

緑色のピーマンは果実が完熟しないうちに収穫したもので、いわば育ち盛りの段階の果実です。

ピーマンの実を大きく育てるには、「日光」「肥料」「水分」の3つが不可欠です。

ピーマンの実を大きくする要素 ①日光


まず1つ目は「日光」、日当たりです。

ピーマンが鮮やかな緑色なのは、「クロロフィル(葉緑素)」を含んでいる証拠です。光合成は「二酸化炭素と水を原料に、光のエネルギーで養分を作り出す反応」のこと。十分な養分が植物を生長させ、果実の食味を良くします。

よって曇雨天の日が多く日光が足りなくなると、その分光合成量が抑えられてしまいます。


ピーマンの実を大きくする要素 ②肥料


2つ目は「肥料」です。ピーマンは栄養素を多く必要とする作物です。

植物の生長や花芽(はなめ=成長して花になる芽)の形成、実の発育などには、「窒素」「リン酸」「カリウム」が欠かせません。ピーマンは、これらの栄養素を肥料から吸収します。

肥料を与えることでピーマンが順調に育ち、収量アップを目指すことができます。

ピーマン畑の土づくりについてはこちらをご覧ください
ピーマン栽培の土作りで重要なポイントは?



ピーマンの実を大きくする要素 ③水


3つ目は「水分」です。水分は根などから吸収した栄養素を、植物全体に運ぶ役割を果たします。

また水は光合成のためにも不可欠です。

水不足が起こると、栄養素が株全体に行き渡らなくなったり、光合成がうまくいかずにピーマンの生育不良につながります。


ピーマンの実が大きくならない原因


それでは実が大きくならなかった場合、どのような点に注意して改善すべきなのでしょうか。

実が大きくならない原因① 同時に実を付けすぎている


まずは「株に同時に多数の実がなりすぎていないか」をチェックしてください。

1株に同時に付く果実が多いと、その分養分が分散してしまいます。果実どうしが限られた養分を奪い合い、十分なサイズに達しない実があったのかもしれません。

またピーマンは若穫りする作物です。開花から約15〜20日後の収穫適期を逃した果実は、赤や黄色に変化して完熟果(=カラーピーマン)になります。

色がついても品質には問題ありませんが、株にとっては負担となります。

カラーピーマンを収穫したいのであれば、栽培期の後半や終盤からがおすすめです。早い段階から色付き果実を付けすぎないよう、収穫スケジュールを立てましょう。


実が大きくならない原因② 日当たり不足


実のつき方には特に原因がなさそうであれば、「株が日当たり不足でなかったか」を振り返ってみましょう。

もともと植えた場所の周囲に、日陰の元になる背の高い建物や作物はなかったでしょうか。

植え付け間隔が狭くなかったか、わき芽の管理をしっかり行ったのか、も重要なポイントです。


実が大きくならない原因③ 肥料が適切でない


最後のチェック項目は「肥料の与え方」です。植物の栄養素には、それぞれ以下のような役割があります。
・窒素(N) 葉や茎を大きくする
・リン酸(P) 花や果実のつきをよくする
・カリウム(K) 根や茎を丈夫にする


果実を大きくする役割を持つ栄養素は「リン酸」です。

例えば窒素成分の多い肥料ばかり与えていると、葉や茎だけが生い茂って、実が必要とする栄養分が足りないという事態に陥ってしまいます。


ピーマンを大きく育てるポイント


最後にピーマンを大きく育てるポイントを解説しましょう。

1、日当たりのいい場所に植える


まずピーマンを栽培するには、日当たりのいい場所を選びましょう。

ピーマンには、日を当てることが望ましいため、畑の周囲に日光を遮る建物や背の高い作物がある場合は、栽培場所を見直してください。

植えつける株間の目安は「40~50センチメートル」です。これよりも狭くならないようにしてください。

また、わき芽を処理せず伸ばしたままにしていると、株の中で栄養が分散するだけでなく、過剰に茂った葉が光の到達を妨げてしまいます。こまめにわき芽を取り、剪定するようにしましょう。

わき芽かきの方法や育てるのに適した場所についてはこちらをご覧ください
ピーマンのわき芽の処理方法は?コツや注意点も知りたい
ピーマンにはどのくらい日当たりが必要?日焼け対策のやり方は?



2、肥料と水をしっかり与える


ピーマンの追肥は1回目を「苗を植え付けてから2~3週間後」に、2回目以降は「2週間ごと」を目安に、定期的に与えます。
したがって、以下のように肥料計画を立てるのがベストです。

①元肥(もとごえ=畑へ苗を植え付ける前に土壌に散布しておく肥料)には窒素成分を多く配合し、苗や株を順調に育てる
②追肥(ついひ=植物が生長する途中で不足する栄養を補うための肥料)にはリン酸成分を多く配合し、たくさんの実を大きく育てる


養分をしっかり吸収させるため、水の管理も重要です。夏場、実がなるとピーマンの水分吸収量も多くなりますので、土壌の表面の乾き具合を見ながら朝と夕方に水やりをした方が良い時もあるでしょう。

あくまで、土壌の乾き具合をみながら、水やりするときはたっぷりやるように心がけて下さい。

土壌をマルチング(畑を細長く直線状に山(畝)を作り、ビニール等の資材で覆うこと)して栽培すると、水分の蒸発を抑える効果も期待できます。


3、こまめな収穫と摘芯で、実に栄養を集中させる


収穫時にも、実を大きく育てるコツがあります。

収穫は果実の大きさ・重さを基準にして、どんどん進めてください。品種により異なりますが、例えば中型種であれば長さが「6~7センチメートル」、重さが「30~40グラム」程度です。

収穫期でも生長旺盛で茎が伸びすぎてしまうのであれば、摘芯(てきしん=茎の生長点を摘み取ること)するのも有効です。

2~3節で摘芯するようにすると、先端に運ばれる栄養分を、果実のつくポイントに集中させることができます。

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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