就農して2年目の新米農家です。
今年はピーマンの栽培に挑戦してみようと考えていますが、ナス科の野菜を育てるのは初めてです。
いま不安に感じているのが、水の管理についてです。
昨年は猛暑日が続いた影響で、育てていた作物に水を多めに与えていたところ、根が酸欠になってしまったのか、いくつかの株がダメになってしまいました。
ピーマンも暑い時期に育つので水やりが必須だと思いますが、どの程度したら良いのでしょうか?
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今年はピーマンの栽培に挑戦してみようと考えていますが、ナス科の野菜を育てるのは初めてです。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ピーマン栽培で特に水やりが重要なのは育苗期と高温期です
ピーマン畑は乾燥・多湿状態にならないよう水の管理が必要
ピーマンは暑い時期にぐんぐん伸びる夏野菜です。
定期的に追肥を与えて適度に剪定を行うと、夏から秋の長期にわたってたくさんの実が収穫できます。
水やりにも、いくつかの大切なポイントがあります。
ピーマンは乾燥と多湿の両方に弱い作物です。
根が浅いので、特に生育初期には土壌が乾燥しないようにしましょう。
水分が不足気味になると生育が悪くなるほか、咲く花の数が減ったり、落花したりします。
また、水不足になるとカルシムが欠乏し、果実に「尻腐れ」と呼ばれる生理障害が発生するリスクが高まります。
しかし、逆に水を与えすぎるのも良くありません。
苗の時期に水を与えすぎると、ヒョロヒョロと伸びる徒長(とちょう)苗になってしまいます。
また、生育期に水をやりすぎると、根腐れの原因にもなります。
さらに、過湿状態の畑では、病気も発生しやすくなります。
種まきから定植(=畑への植え替え)段階では「土壌を乾燥させないこと」が重要で、根の活着が確認できて以降の生育初期は「水を与えすぎないこと」が重要です。
この切り替えポイントを頭に入れて、栽培に当たりましょう。
生長段階別、ピーマンの水管理の手順とポイント
それではピーマンの生長段階ごとに、水やり作業のポイントを説明します。
種まき後から植え付け前まで
種まき、育苗期は、水やりが重要な時期の一つです。
種まき後は発芽まで、土の表面を乾燥させないようにしてください。ジョウロなどでまんべんなく水を与えましょう。
根が伸びるとその分、水分を吸収する量も増えます。
どのくらいの量と時間で乾燥するのかを観察しながら、与える量や頻度を調整してください。
乾燥に注意といっても、光が少なくなってくる夕方から夜間にかけて水を与えすぎると逆効果です。
徒長苗や根腐れを起こしてしまいます。「午前中にたっぷりと水やりをして、夕方に表面が乾いていない程度」にしましょう。
植え付けから根が活着するまで
続いて、植え付け時とその後の数日間についてです。
ピーマンは根が浅いため、活着(=新しい根を伸ばして土に根付き、順調に生長し始めること)がうまくいくかどうかが、重要なポイントの1つです。活着には十分な水が不可欠です。
植え付け時は、苗を植え付けた場所に土を寄せ、少し固めた上からジョウロ等で水やりをしても問題はありません。
さらに活着しやすくするためには、「ポットの土壌」と「植え穴」の両方を湿らせておいて、苗を移すのもおすすめです。
土壌から空気中に水分が蒸発するのを防ぐために、畝(うね=植え付けるために細長く立てた山)をフィルムなどで覆って栽培する「マルチ栽培」もおすすめです。
そして、完全に活着した後の生育初期は、水やりについてそれまでほど神経質になる必要はありません。
梅雨のシーズンはどうする?
湿度が高くなる梅雨のシーズンには、毎日の水やりは不要です。
また雨が続く日には、地面からはね返る雨滴(水)に注意が必要です。
もし土壌中に病原菌が潜んでいた場合、はね返りによって葉の裏などに付着し、病害をもたらし、被害を拡大する恐れがあるためです。
雨が気になる場合は、雨よけ栽培などで対策しておくと安心でしょう。
梅雨明け後の高温期に水不足の状態が起こると、ピーマンに生理障害が起こるリスクが増えます。
下部が黒ずんだ果実は「尻腐れ」という生理障害を起こしています。
病気ではないので、1つ見つけても他の株に感染する心配はありません。
尻腐れ果の原因はカルシウム不足ですが、もし土の中に十分なカルシウムがあっても、水不足で吸い上げられなかったというケースも考えられます。
もし、尻腐れ果が見受けられたら果実は取り除いて、様子を見るため株元に水を与えてみてください。
ただし水が多すぎるの(過湿状態)も、カルシウム吸収を阻害する要因になります。
収穫期に土の表面が常に湿っているような状態は避けましょう。
日焼け果としりぐされ果の見分け方についてはこちらをご覧ください
「ピーマンを栽培していますが「日焼け果」と「しりぐされ果」の見分け方を教えてください」
ただし水やりしすぎることも、病害発生の一因に
水不足も要注意ですが、逆に水やりが過剰だと、病気も発生しやすくなりますので注意してください。
病気は多湿な畑を好む
病害は多湿な畑を好みます。斑点病や黒枯(くろがれ)病、炭疽(たんそ)病などの病原菌はカビです。
ハウス栽培では施設内の湿度が上がりすぎないように、換気に努めましょう。
また植え付け時には、狭い間隔での植え付けは避けてください。
密植栽培になると多湿になりやすいです。生育期には余分な葉や茎を残しすぎないよう、こまめにカットしましょう。
ピーマン栽培で注意すべき病害についてはこちらをご覧ください
「ピーマンの半身萎凋病はどのような病気ですか?」
「ピーマンの斑点病を抑える方法が知りたい!畑の水はけの悪さが原因だと思うのですが…」
畝を高くして水はけをよくするのもおすすめ
水やりの方法のほか、畑の水はけの状況もチェックしておきましょう。
畝の高さを40cmほどにするピーマン農家もあります(=高畝栽培)。
こうすることで土への日当たりや風通しが向上するとともに、余分な水分も抜けやすくなります。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。