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農作物が萎凋病になってしまった。どう対策すればいいですか?

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農作物が萎凋病になってしまった。どう対策すればいいですか?

露地野菜を中心にさまざまな野菜を栽培していますが、先日近くの農業仲間が萎凋病の被害にあってしまったそうです。

病害虫の予防はしてきましたが、放っておくと元気な植物や土壌にも影響があると聞き、自分の圃場でも気をつけなければいけないと考えています。

防除方法についてはある程度知識があるつもりなのですが、もし萎凋病になってしまった場合、どのように対策すればいいのでしょうか?

李 哲揆

データサイエンティスト

萎凋病の種類や発病した農作物に適した対策が必要です

萎凋病の原因


萎凋病はカビが引き起こす病気で、一度発病すると同じ土地で何度も見られ、何も対策を講じないと圃場が使いものにならなくなる恐れがあります。

また、糸状菌は枯死した植物内でも胞子を作り出すことができるため、生命力が強くやっかいな菌といえるでしょう。

萎凋病と言っても作物により病原菌が異なります。

ネギやトマトの萎凋病はFusarium属菌、ダイズやイチゴの萎凋病はVerticillium菌になります。

病原となる病原菌が異なると、防除法も異なるので、作物や病徴に応じて対処をしてください。

ここでは病原菌別に防除法を紹介します。


萎凋病になった作物の対策方法


作物がすでに萎凋病になってしまった場合、どのような対策が必要なのでしょうか。まずは萎凋病全般における対策をご紹介します。

萎凋病を発症した株は速やかに抜き取り、必ず畑の外で焼却処分を行います。

枯死した植物内でも病原菌は生きており、土壌中に残存し、次作の作物に伝染してしまう恐れがあります。

この対策には土壌消毒が有効です。

また、使った農機具や靴などもしっかり消毒しておくと安心です。

萎凋病が発症した圃場を消毒するには、太陽熱消毒という方法が効果的です。

7月中旬〜8月下旬ごろの最も暑い時期に畑にたっぷりと水を注いだ後、透明のビニールフィルムで表面に隙間ができないように覆い、20〜30日程度放置します。

太陽の熱を利用して土壌の温度を上げることで、萎凋病の病原菌を殺すことができます。

また、土壌還元消毒も有効です。

それでは次に病原菌別の対策を見ていきましょう。

作物ごとの対策方法についてはこちらをご覧ください
トマトが萎凋病に!原因と対策が知りたいです
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フザリウム属菌が萎凋病の原因


ネギやトマトに発症する萎凋病はFusarium oxysporumという菌が原因です。

発生に大きく関係するのは気温と地温で、発病の最適気温は23~30℃、発病の最適地温は25~27℃の範囲ですが、地温が33℃を越えると急速に発病が低下します。

萎凋病を予防のため、事前にできる対策方法をご紹介します。  

萎凋病は土壌伝染性の病害であるため、土壌環境を適切に整えることが重要です。

土壌が極端に乾燥している、または多湿な状態になっている場合、植物が傷つきやすくなるだけでなく、病原菌が育ちやすい環境になり、萎凋病が発症しやすくなります。

特に排水不良地では発病が多くなるので排水施設を設け、土壌含水量を適切に管理しましょう。

萎凋病は土壌phが6.5以下になると発症しやすくなります。植え付け前に土壌診断を行い、必要に応じて石灰などでpHの矯正をするとともに、窒素肥料の過剰な使用は避けましょう。  

また連作を避け、萎凋病菌が感染しないイネ科植物との輪作を行いましょう。同じ作物を続けて栽培すると、土壌微生物の多様性が減り、発病しやすい土になります。

また、抵抗性品種や抵抗性台木を利用することで発病を抑えることもできます。

農薬を使って対策する方法もあります。ベンレート水和剤やトップジンM水和剤(チオファネートメチル水和剤)などがカビの病気に効果があるといわれています。

萎凋病に有効な農薬についてはこちらをご覧ください
萎凋病にかかってしまった農作物。有効な農薬の種類は?



イチゴやダイズの萎凋病


この病気はVerticillium dahliaeという菌によって引き起こされます。

この病気はアルカリ土壌で多発します。

発病適温は20〜25℃、夏季高温時には発病が抑制されます。多湿土壌では発病しやすくなります。

土壌センチュウの発生を助長します。

萎凋病を予防するために


アルカリ土壌で発病しやすいので、石灰の過剰な施用には注意が必要です。

植え付け前に土壌診断を行い、適切なphを保ちましょう。

トマトやナスといったナス科植物との輪作は避け、イネ科植物との輪作を行いましょう。

病原菌であるVerticillium dahliaeはトマトやナスの半身萎凋病の原因としても知られています。

またVerticillium属菌は、微小菌核での生存期間が長いので、輪作期間も最低5~6年程度はみないと効果がないので注意が必要になります。

可能であれば、時々水田化し、病原菌を死滅させると抑制効果が高くなります。

また、病原菌は傷ついた根から感染するので、センチュウの防除を徹底するとともに、移植時の断根は病原菌の進入門戸となり易いので注意して下さい。

その他、前述の土壌消毒を行うと良いでしょう。

このお悩みの監修者

李 哲揆

データサイエンティスト

名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。

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