就農して8年ほどです。
地理的な条件はあまり良くありませんが、埼玉の自然豊かな中山間地域で低農薬による野菜作り(ナス、ブロッコリー、ネギ、ほうれん草などを中心)を行っております。
土作りは、緑肥や籾殻などの有機資材を使用しています。できるだけ抗菌作用の高い健康でフカフカな土にすることを目標にしています。
じつは2年続けて半身萎凋病が発生してしまいました。
被害はナスが大打撃を受けました。
防除のために太陽熱による土壌消毒を行い、残渣処分も丁寧に行いました。
しかし、今後も不安でなりません。
できるだけ農薬は使わずに半身萎凋病を防除する方法や対処する方法を教えてください。
(埼玉県・石本さん/仮名・30代)
五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
もし太陽熱消毒だけだと不安であれば、土壌還元消毒を試してみてください
太陽熱消毒は夏作終了後にビニールを敷いたり、マルチ・トンネルをそのままにして密閉したりするなど、いろいろな方法があるようですが、考え方は基本的にはどれも同じです。
ビニールで密閉し、太陽熱でできるだけ地温を上昇させて病原菌を死滅させることにあります。
この方法で半身萎凋病を死滅させることができるかどうかですが、ビニールを敷き地温を上昇させようとしても、実際には地表から10〜20センチくらいまでしか地温は上昇しません。
以前、プランターの土を透明な大きなビニール袋に入れ、厚さが10センチ程度の「のし餅」のように平らにして真夏の太陽の下に置き、温度を測定したことがあります。
その結果ですが、下部の地温はほとんど暖まりませんでした。
太陽熱消毒を行っても地温が上昇するのは表層部のみですので、これでは十分に病原菌を熱で死滅させる効果を期待するのは難しいかもしれません。
しかし、ウリ類を対象に太陽熱消毒した場合、別の病害が対象ですが、翌年は発病が軽減されたという実証結果が得られました。これは土壌表層部の菌が死滅し、全体の菌密度が低下した結果と考えられます。ナス半身萎凋病でも同様の効果はあるかもしれません。
いずれにせよ太陽熱消毒での効果は、これで十分というわけではないと考えられます。
近年では太陽熱消毒に加えて土壌還元消毒という方法が多く行われるようになってきました。
太陽熱消毒で土壌表面を被覆する前に土壌中に米ヌカやフスマなどの土壌中で容易に分解しやすい有機物を混入し、十分に土壌中に水分を含ませた後にビニールマルチをする方法です。
これは土壌中で微生物が活発に有機物を分解することで土壌を酸欠状態にする方法です。土壌病害だけでなく雑草の発生も少なくなるなどの効果が認められています。混入する量は10アールに1〜2トン程度を目安にしてください。
太陽熱消毒だけで不安でしたら土壌還元消毒を試してみることをおすすめします。