トマト栽培を新しく始めてみようと思い、トマトが感染しやすい病害について調べています。
トマト根腐萎凋病は一度感染するとやがて枯死させるしとても厄介な病害だと農家仲間から聞きました。
具体的にはどのような症状が出るのでしょうか?
対策方法についても教えてほしいです!
トマト栽培を新しく始めてみようと思い、トマトが感染しやすい病害について調べています。
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李 哲揆
データサイエンティスト
トマト根腐萎凋病は低温期に発生する萎凋性病。晩秋から早春にかけて発生しやすく、発病圃場での栽培が原因となるケースが多い
トマト根腐萎凋病の症状とは
トマトが「トマト根腐萎凋病」に感染すると、その名の通り、根の付近といった株元から症状が進みだし、最終的には株全体を枯れさせてしまいます。
具体的には以下のような症状が見られます。
地上部
初期:トマトの下葉が黄色く変色し萎れだす。夜になると回復し、日中になるとまた萎れるという状態を繰り返す中期:全体的に葉が萎れ、茎が褐色になる。
後期:症状が上位葉に進み、最終的には枯死する
地下部
初期:根が褐変して脱落する。細根の付け根部分に黒褐色の病斑が見られる。中期:褐変が根全体に及ぶ。
後期:主根から地際部の茎も黒褐変、腐敗して脱落する。
発生しやすい時期
トマト根萎凋病の発病適温は10〜20℃であるため、施設栽培では晩秋や春にかけて発生します。
しかし、近年では低温期の作型ではない露地栽培での発生の報告もあります。
トマト根腐萎凋病の発生原因
トマト根腐萎凋病は、ハウスで栽培するトマトに発生しやすいです。Fusarium oxysporum f.sp.raddicis-lyvopersici というカビの一種が伝染源となります。
この病原菌は土壌中で数年から数十年生存するため、過去にこの病害が発生した土壌に植えつけした際に発生してしまうケースがほとんどです。
この病気は低温(10〜20℃)、高湿度で発生しやすいです。
したがって、水管理を行いほ場が過湿にならないよう、保水性や通気性を良くしましょう。
トマト根腐萎凋病の対策方法
トマト根腐萎凋病の感染が確認できたら、すぐに取り除いてほ場の外に持ち出しましょう。
感染した株を放置していると、周辺の株にまで感染を拡大させてしまう可能性があります。
感染拡大を防ぐには早期の発見が重要ですが、トマト根腐萎凋病の症状は下葉から現れ出すので、黄化していないかを定期的にチェックしておくことが重要です。
感染後よりも感染させないための対策が重要
トマト根腐萎凋病は、感染後の回復が期待できないため、感染前の対策を徹底しておくことが重要です。
栽培前に以下のような対策を行っておきましょう。
・種子の乾熱殺菌や薬剤による種子消毒を行う
・育苗には無病土壌を使用する
・ほ場の排水を良好にする
・前作に発病を認めたほ場では土壌消毒を行う
また根の傷から感染する病気のため、根を傷めないように以下の点にも気をつけましょう。
・根を傷つけるセンチュウの防除を徹底する
・土壌水分の急激な変化、土壌の過湿や過乾燥がないように管理する
トマトで萎凋病の登録がされている、ディ・トラペックス油剤やバスアミド微粒剤といった農薬も土壌消毒の手段として有効です。
いずれの農薬も、定植後ではなく定植前の使用のみ認められているので、必ず用法・容量を守って使用するようにしましょう。
根腐萎凋病以外のトマトの病害対策はこちらをご覧ください
「トマトが青枯病にかかった際の症状や対策方法を知りたい」
「トマトが萎凋病に!原因と対策が知りたいです」
「ハウスでトマト栽培をしていますが、灰色かび病が発生しました…」
「トマトが病害に!萎凋病?青枯病?見分け方を教えて」
このお悩みの監修者
李 哲揆
データサイエンティスト
名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。