3年間農家さんのもとで修行し、今年独立した新米農家です。自分の圃場ではネギを中心に育てています。
先日のこと、同じ地域でネギを栽培している農家さんの畑から萎凋病が発生し、ネギの葉が黄色く萎れてしまったそうです。
萎凋病になってしまった農家さんとは年齢も近く、同じ時期に農家になったので、非常に心配です。
また、明日は我が身なので、自分も萎凋病には注意しなければと考えています。
しかし、萎凋病という病気について、何もわからない状態なので原因や対策方法を教えていただけないでしょうか？
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李 哲揆
データサイエンティスト
ネギの萎凋病は土壌伝染性の病害。すぐに圃場外へ出し、伝染防止に努めましょう
ネギが萎凋病にかかってしまった時の原因と症状
萎凋病は土壌伝染性の病害で、病原菌が根の分かれ目や傷から侵入することで発症します。
萎凋病の病原菌は発育適温25〜28℃であり、初夏から秋にかけて多く発生する傾向にあります。
その他、砂質土壌やphが低い酸性土壌でも多発します。
萎凋病に罹患したネギは、まず下葉が黄化し、病状が進むにつれ下部から湾曲するのが特徴です。また、同時進行で土壌下にある葉や根は褐変し、最終的には腐敗して枯死します。
萎凋病の症状と原因についてはこちらをご覧ください
「萎凋病とは？原因や症状について詳しく知りたいです」
ネギが萎凋病にかかってしまった時の対処法
萎凋病が発症してしまった場合、まず発病株をきれいに取り除くことが重要です。
周囲の株も感染している可能性が高いので一緒に取り除きましょう。植物体に病原菌が残っているので圃場外に出して焼却処分します。
また、管理時に使用していた農機具や手袋、靴なども、感染防止のために消毒しておきましょう。
萎凋病になった作物の対策方法についてはこちらをご覧ください
「農作物が萎凋病になってしまった。どう対策すればいいですか？」
ネギが萎凋病にかからないための予防法
萎凋病にかかってしまったネギは処分するしかありません。
つまり、萎凋病にかからないための予防策が重要になります。
育苗期間中の乾燥と高温に注意
萎凋病対策は特に育苗期間中の管理を徹底する必要があります。
感染源となる根傷みを起こさないよう、乾燥や高温に注意して栽培を管理しましょう。
過湿や乾燥を避ける
土壌水分の急激な変化は根を痛める原因となります。
排水が悪い圃場では排水溝を作るなど、圃場の排水管理を適切に行いましょう。
土壌消毒をし、連作を避ける
一度発病が認められた圃場では、病原菌が土壌中で生存し続け、次作に発症する可能性があります。
発病の疑いのある土壌は必ず作付け前に土壌消毒をおこないましょう。
また、病害管理の基本である連作を避けることも心がけましょう。ネギの一般的な輪作年限は1〜2年です。
土壌phを矯正する
土壌pHが低いと根傷みの原因に繋がり発病を助長させます。
石灰や苦土などを施用することで土壌pHを6.5以上に調整しましょう。
農薬を散布する
前述のとおり、萎凋病菌は土壌中で生残します。
クロルピクリンやダゾメットを用いた土壌消毒により、土壌中の病原菌を死滅させましょう。
また、定植前の株の根布浸漬処理を行うことも有効です。農薬の種類や使用方法を必ず確認のうえ使用しましょう。
ネギの萎凋病に有効な農薬についてはこちらをご覧ください
「萎凋病にかかってしまった農作物。有効な農薬の種類は？」
抵抗性品種はない
2023年7月時点では、ネギの萎凋病に抵抗性のある品種はまだ改良されていません。
しかし、山口大学や東北大学などの合同機関で研究は続けられており、近い将来、抵抗性品種が登場するかもしれません。
このお悩みの監修者
李 哲揆
データサイエンティスト
名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士（農学）を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。