農業分野の特定技能について詳しく知りたいと思っています。
うちの地域では慢性的に人が足らず、これまで技能実習生を受け入れてきました。しかし、最近技能実習制度の見直しがニュースになっており、新たに特定技能の人材を受け入れようかと検討しています。
特定技能は、特定分野への知識や経験をもった方が取得できる資格だと知りましたが、農業分野ではどのような試験を受けるのでしょうか?
農業について専門的な知識を持っているのであれば、即戦力として期待できるのではと考えています。
具体的な試験内容について教えていただけないでしょうか。
堀口健治
早稲田大学名誉教授
外国人が農業分野の特定技能を取得するには日本語能力試験と農業技術測定試験に合格する必要がある
特定技能に必要な日本語試験と技能試験
農業分野の特定技能として在留資格を得るためには、「農業技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格しなければなりません。
農業技能測定試験とは、全国農業会議所が実施している試験で、農業等に関する知識及び技能を確認・評価する試験です。
また、日本語能力試験では「日本語能力試験」と「国際交流基金日本語基礎テスト」の2種類があり、どちらか一方の合格基準を満たせば良しとされています。
農業の技能試験内容
農業の技能測定試験には、「耕種農業」と「畜産農業」の2種類があります。それぞれ、コンピュータを利用したCBT方式(コンピュータの画面に表示された問題を、マウスやキーボードを用いて解答する試験方式)で試験をおこないます。
耕種農業
耕種農業の試験では、耕種農業一般に関する問題が出題されます。
さらに、稲作・畑作・施設園芸・果樹などの特徴や栽培管理についての問題が出題されるため、幅広い農業の知識が求められる試験と言えます。
また、耕種農業に関する問題だけでなく、農作業などの指示が聞き取れるかなどの聴き取り問題も試験内容に組み込まれています。
畜産農業
畜産農業の試験では、畜産農業全般に関すること、飼養管理や安全衛生等についての内容が試験範囲として出題されます。
こちらも、畜産農業に関する問題だけでなく、日本語の聴き取りに関する問題も行われます。
耕種農業・畜産農業の試験用の学習テキストが全国農業会議所が運営する、農業技能測定試験公式Webサイトで紹介されているので、特定技能に求められるレベルが気になる方は確認してみるとよいでしょう。
農業の技能試験についての概要
受験資格
日本国内で農業分野の技能測定試験を受験するには、下記の条件を満たす必要があります。
1、試験日に満17歳以上であること
2、在留資格を有する者
そのため、特定技能は年齢と身分が証明された者しか受験することができません。
受験可能な言語
農業技能測定試験に対応している言語は、2023年1月時点で、日本語や英語に加えてカンボジア語・ベトナム語・中国語など合計で10種類以上あります。
全国農業会議所が公開している試験用テキストも多くの言語に対応しているため、幅広い国の方に受験機会が与えられています。
実際に、農業技能測定試験は日本国内だけでなく、インドネシアやカンボジアなどでも試験がおこなわれており、毎月合格者がでています。
必要書類
農業技能測定試験では、試験当日も本人確認書類と確認書の提示が必須です。確認書とは予約をした試験のページに、再ログインしたあと「確認」ボタンをクリックして出てくる文書です。そのページを印刷し、試験当日に持参します。
確認書はスマートフォンの画面提示は無効とされており、必ず印刷した確認書を持参しなければなりません。
本人確認書類は、パスポートまたは在留カードと決められています。いずれもコピーは認められず原本である必要がありますので注意しましょう。
在留資格取得の条件や指定書についてはこちらをご覧ください
「特定技能1号の在留資格取得の条件と試験について教えてください」
「特定技能1号の指定書とは?雇用時にチェックすべきポイント」
農業分野の特定技能に関する試験への理解を深めよう
農業分野の特定技能になるためには、「農業技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格する必要があります。
いずれも一定レベル以上のものが求められますが、雇用する側としては特定技能の知識・技術の信頼性にもつながるため、非常に重要な試験と言えるでしょう。
また、農業技能測定試験は幅広い言語に対応しており、多くの外国人に受験機会が与えられています。
農業分野の特定技能に関する試験についてよく知り、特定技能への理解を深めてみてはいかがでしょうか。
漁業における特定技能制度の受け入れについてはこちらをご覧ください
「特定技能制度の外国人材は漁業分野でも受け入れられる?」
特定技能1号の特徴や派遣雇用についてはこちらをご覧ください
「在留資格の一つである特定技能1号について詳しく教えて」
「特定技能1号の受け入れは派遣でも可能ですか?」
このお悩みの監修者
堀口健治
早稲田大学名誉教授
専門は経済学(農業経済学・農業政策)。2002年から2004年まで日本農業経済学会会長を務め、2015年から2022年まで日本農業経営大学校校長。山形県高畠町の屋代村塾および同県寒河江市の葉山村塾の塾長も務めた。