水稲農家の2代目です。
田んぼの一部を転用し母が野菜中心の家庭菜園をやっていたのですが、母も高齢となりここ数年は手つかずでした。
そこでその場所をイチジク畑にできないかと思っています。
まずイチジクにはどんな品種があるのか、それぞれの品種の特徴や、育てる上での違いなどを教えてください。
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田んぼの一部を転用し母が野菜中心の家庭菜園をやっていたのですが、母も高齢となりここ数年は手つかずでした。
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橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
日本で栽培される主なイチジクの品種は「枡井ドーフィン」「早生日本種(蓬莱柿:ほうらいし)」の2つ
イチジクの品種についての基礎知識
まずはイチジクの品種数や、国内で栽培されている主な品種について知っておきましょう。
世界では700以上、日本では200以上の品種がある
イチジクは「クワ科イチジク属」の小高木落葉果樹です。
世界各地で栽培されており、品種数は700種類以上ともいわれています。
その中でも日本では、200種類ほどの栽培実績があります。
イチジクは品種によって、果実のサイズや色、形、味が異なります。
また品種によって収穫時期が異なることに注意が必要です。
日本の2大品種「枡井ドーフィン」「早生日本種(蓬莱柿)」
日本のイチジクの2大品種が、「枡井(ますい)ドーフィン」と「早生日本種(わせにほんしゅ)」です。
早生日本種は別名「蓬莱柿(ほうらいし)」と呼ばれることもあります。
この2つで日本のイチジク市場の約9割を占めており、うち8割は枡井ドーフィンです。
育てやすさや日持ちのしやすさの面で優れているためで、他の品種はほとんど市場には出回っていません。
その他の品種の販売先は多くの場合、農園現地やオンラインの直販ショップ、地域の飲食店などに限られています。
低温期には耐寒性の高い品種を選ぶ
続いては、イチジクの品種の選び方について説明しましょう。
収穫時期:「夏果」「秋果」「夏秋兼用品種」の違い
イチジクは収穫時期によって「夏果(かか・なつか)」「秋果(しゅうか・あきか)」「夏秋兼用品種」の3つに分類されます。
夏果の収穫は6~7月頃、秋果の収穫は8~10月頃が1つの目安です。
夏果・秋果と兼用種とではそれぞれ実の付き方が違うので、剪定方法も異なります。
また、例えば枡井ドーフィンは本来は夏秋兼用種ですが、「収穫は秋のみにする」といった方針で育てる地域や農家もあります。
気候条件:品種により耐寒性の程度が異なる
イチジクはもともと、現在のアラビア半島南部が原産の亜熱帯性植物で、暖かい環境を好みます。
品種によっては日本の冬の低温や霜はイチジクにとって大敵になります。
したがって品種選びでは、品種ごとの耐寒性に注意しておきましょう。
2大品種のうち耐寒性がより高いのは早生日本種です。
比較的気温の低い日本海側や東北でも栽培されています。
一方、寒さに弱い枡井ドーフィンは、和歌山県や愛知県、大阪府など、本州でも比較的温暖な地域が主な産地です。
イチジク栽培におすすめの品種
それでは品種ごとの特徴について解説しましょう。ここでは、2大品種を含む全6種類をピックアップしました。
枡井(ますい)ドーフィン
枡井ドーフィンはイチジクの国内シェアの8割を占める、日本のイチジクの代表格です。
1909年に種苗業者である桝井光次郎がアメリカから持ち帰ったことから、この名が付きました。
栽培は比較的容易で、日持ちや輸送に強いことから、日本で最もポピュラーなイチジクとなっています。
缶詰やジャムなどの加工品としても良く使用されています。
・果皮は緑色で、果肉はピンク色
・甘味はやや少なくほのかな酸味
・他の品種と比較すると果実サイズはやや大きめ
・夏秋兼用種で秋収穫をメインにする農家が多い
早生日本種(蓬莱柿)
蓬莱柿は枡井ドーフィンが日本に伝来する前から栽培されていました。
日本原産なのか国外品種なのかはっきりわかっていない品種です。
「日本イチジク」とも呼ばれています。
耐寒性に優れ比較的寒冷な地域でも育つため、現在は中国地方から九州北部を中心に栽培されています。
日持ちがあまりしないため、関東や東日本など産地から離れた市場では、見かけることが少ないかもしれません。
・やや白味がかった果皮で、熟すと果実の尻の部分が星形に割れる
・平均糖度は枡井ドーフィンよりも少し高い
・果実サイズはやや小ぶり
・秋果専用種
ビオレソリエス
ビオレソリエスは「幻の黒イチジク」「黒いダイヤ」などと呼ばれる品種です。
フランスが原産で、日本での栽培はまだ難しく希少性が高いため、高級なイメージでブランド化できる点が特徴といえるでしょう。
・果皮は黒味が強く裂けにくく、果実は濃い赤色
・香り・味と共に強くて濃厚、食感はなめらか
・糖度20度を超えるものもある
・秋果専用種
バナーネ
バナーネはバナナに由来する名を持つイチジクです。
その名の通り、バナナを思わせる色や形、食感がポイントです。
イチジクの中でもサイズが大きく、夏果で200g以上、秋果ではその半分程度の重量になります。
糖度が増す秋果をメインに収穫します。
・果皮は黄緑色で、果肉は淡いピンク色
・ねっとりした食感で、味の評価も高い
・ 果実は他の品種と比較してやや大きめ
・夏秋兼用種で秋収穫が多い
ブラウンターキー
名前の通り、見た目が茶色っぽいのがブラウンターキーという品種です。欧米でよく栽培されています。
イチジクの中では寒さに強い品種です。
果実は小さめですが収穫期間が長く、収量の面でも優れています。
ジャムやドライいちじくなどの加工にも向きます。
・ 果皮は褐色で、果肉は赤色
・ 強い甘味と酸味があり、濃厚な味わい
・果実は小ぶり
・夏秋兼用種
ザ・キング
ザ・キングは「王様」の名を冠した黄緑色のイチジクで、6〜7月が旬です。
希少価値がありますが収穫期間がやや短く、耐寒性もやや弱いので栽培難易度は高めといえるでしょう。
・ 果皮は鮮やかな黄緑色で、果肉は赤色
・皮ごと食べられ、味はさっぱりとしている
・果実サイズは40~180gと大きめ
・夏果専用種
このお悩みの監修者
橋本純子
株式会社アンファーム 栽培担当
前職で仕事に役立てるためにAICに通ったことがきっかけで就農を志す。研修先の香 川県三豊市でアンファーム社長、安藤数義氏と出会い2016年株式会社「アンファー ム」に入社。アボカド産地化に日々奮闘中。アボカドの栽培を通じて地域と農業の魅力発信を行っている。