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ビワは主流の「茂木」以外にどんな品種がある?

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ビワは主流の「茂木」以外にどんな品種がある?

地元の特産品であるビワの栽培に興味があります。

近所のビワ農家さんから話を聞いていると、ビワはデリケートで収穫後の扱いや輸送にも気を配る必要があるとのこと。

ビワの品種で有名なのは「茂木」「田中」ですが、その他にどんな品種があるのでしょうか?

痛みに強い品種などがあったら、それも候補にいれて栽培を検討したいです。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

ビワは「長崎早生」「田中」に加え、近年は新品種も誕生しています

栽培特性からみたビワの品種


ビワの生産量が上位の都道府県(令和5年産)は長崎、千葉、香川、鹿児島、愛媛など、比較的温暖な地域となっています。

栽培特性から見たビワ品種の分類については以下のとおりです。

開花時期


ビワは冬期に花が咲くので寒害を受けやすく、開花の早晩と期間が、品種特性の決め手となります。

一般にビワの蕾が出るのは9月下旬から10月中旬です(品種や栽培地域によって異なります)。

花が咲き始めるのは11月からですが、早生種では10月下旬から咲き始めます。

例えば、中生種の「大房」では、11月下旬から1月上旬にかけて咲いています。

開花終わりは品種によって差があり、早い品種は12月に、遅い品種は2月下旬頃まで咲き続けます。

開花は早生種が短く、通常は30~60日程度の開花期間となります。

ただし、開花は3ケ月以上続く場合もあります。

早生種は開花始めも早く、開花期間も短いため、寒害に最も弱い幼果が厳寒期に当たり、寒害を受けやすいとされています。


収穫時期


ビワの熟期は露地栽培で4月〜6月と長い一方、同一品種であっても栽培地域やその年の天候など環境によって熟期は異なります。

早熟種としては「長崎早生」などがあります。「長崎早生」の熟期は5月中下旬ぐらいで、中生種の「茂木」より10日から14日ほど早い時期に熟期を迎えます。

中生種には「茂木」「大房」などがあり、熟期は5月下旬から6月上中旬です。

晩生種として「田中」「瑞穂」などがあり、6月中旬から下旬にかけて熟期を迎えます。

収穫の目安や追熟についてはこちらをご覧ください
ビワの収穫に適した時期はいつですか?
ビワは追熟すべき?収穫の目安はどこでみる?



寒害


開花時期の早い品種は早く幼果になるので寒害に弱く、開花時期の早晩と耐寒性の差異には密接な関係があり、蕾、花、幼果には耐寒性の品種間差はみられません。

開花の早い品種は寒害を受けやすく、開花の遅い品種は寒害に強いといえます。

ビワ栽培を導入する際は、果実の特性だけで品種を選ばず、寒害に対する影響を十分に検討すると良いでしょう。


ビワの代表品種


代表的な品種に、果汁が多く酸味の弱い「茂木」、果肉が緻密なためやや歯ごたえのある「田中」などがあります。

各品種の旬は短く、店頭には時期により違う品種が並びます。品種名ではなく、産地名で売られていることもあります。

早生種

「長崎早生(ながさきわせ)」

長崎県で1953(昭和28)年に交雑し、育成されました。「茂木」よりも寒害を受けやすいため施設栽培に適した早生の代表品種です。

果実は「茂木」より少し大きく甘みが強いです。果汁多めで独特の風味を持ちます。


中生種

「茂木(もぎ)」

江戸時代に長崎の三浦シオが、中国人通訳からもらった唐ビワの種子をまき、その実生から誕生したとされる品種です。

主に冬季温暖な九州地方で栽培され、日本では最も栽培されています。

ビワの中ではやや小さめで、甘く果汁が多く、果皮はむきやすい特徴があります。


「大房(おおぶさ)」

花は、他の品種に比べると寒さに強く、「田中」より早く出荷できる品種としてビワ産地北限の千葉県での栽培が多い品種です。

果実は大きく果肉はやや硬めで、程よい甘さで控えめな酸味とのバランスが良いです。


「福原早生(ふくはらわせ)」

千葉県の福原氏が1949(昭和24)年に「瑞穂」と「白ビワ」を交配させた品種です。

果実は70~80gの大果であり、中には100gを超える大きな果実もあります。


晩生種

「田中(たなか)」

1879(明治12)年に植物学者の田中芳男氏が長崎から持ち帰った種を、東京の自宅で育成したものです。

花は他の品種に比べると寒さに強く、「茂木」の生産が安定しなかった東日本で定着し、現在では、全国のビワ産地で生産されています。

大粒で糖酸のバランスが良く濃厚で美味です。


「瑞穂(みずほ)」

農林水産省が「楠」と「田中」を交配、育成し、1936(昭和11)年に「瑞穂(みずほ)」という品種名が登録されました。

果実は80〜100グラムほどにもなる大実品種で、主に千葉県で露地栽培や施設栽培が行われています。


「土肥(とい)」

主に静岡で栽培され、「土肥の白ビワ」として知られています。

小ぶりで果肉は少なめだが香りが良く美味です。


新たなビワの優良品種


「なつたより」

長崎県で交雑(長崎早生と福原早生が由来)、育成され2009年に品種登録され出荷数も増加している注目のビワです。

がんしゅ病に比較的強く、果実が大きく果肉はとろけるように柔らかくジューシー。糖度が高く甘みが強いのが特徴です。


「富房(とみふさ)」

千葉県で育成された品種で、1989(平成元)年に品種登録されました。

成熟期は5月下旬から6月上旬で、果実は70g程度の大果です。

食味も良く輸送性が高く、日持ちも良い特徴があります。


「希房(きぼう)」

千葉県で2006年に品種登録された世界初の種なしビワ。

安定的に生産するためには、施設栽培が適しています。

通常、種のある部分が空洞になっていて、柔らかで果汁も多く、程よい甘さを持ちます。


「涼峰(りょうほう)」

2007年に長崎で品種登録された生産量の少ないビワです。

食味が良く果実も大きい特徴があります。

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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