沖縄でサトウキビ農家をしています。
最近、近所の農家さんが高齢で引退するというので、圃場を借り受けて、作付面積を拡大することにしました。
そんな話を、農業仲間たちに話していたら、どうやら鹿児島でも後継者がいなくて困っている農家さんがいるとのことで、同じように借りようか悩んでいます。
離れた土地でも、人を採用すれば回せていけるのではないかと思うのですが、内地でも高齢化で耕作放棄地が増えてきていると聞くので、サトウキビが栽培できる土地であれば、同じように借り受けてしまおうかと考えています。
サトウキビは沖縄や鹿児島で盛んに栽培されていると思いますが、どの地域まで育てることができるのでしょうか?
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
条件が揃えばサトウキビは本州でも栽培可能で、静岡県などでも経済栽培の実績があります
サトウキビ栽培の北限
現在、サトウキビは静岡県掛川市南部地域でも経済栽培されています。
この地域は日本有数の日照時間を誇る温暖な気候と砂地を持ち、本州の中でも特にサトウキビ栽培に適した条件が揃っています。
例年4月頃に植え付けを行い、11月に収穫するスケジュールで栽培されていますが、気候に大きく左右されるため収穫がない年もあるようです。
収穫したサトウキビは銘柄砂糖「よこすかしろ」として地域の特産品としても有名です。
サトウキビ栽培が沖縄・鹿児島(奄美・熊毛地域)で栽培される理由
サトウキビの2大産地は沖縄と鹿児島で、この2県で国内生産のほぼ100%を占めています。
2021年度の実績を見てみると、生産量の第1位は沖縄県で815,500t(シェア率60%)、第2位の鹿児島県は543,700t(シェア率40%)となっています。
沖縄県では全農家の約70%がサトウキビを栽培しており、製糖業などの関連企業を含めてサトウキビは沖縄県にとってなくてはならない農産業です。
鹿児島県においても関係機関・団体が一体となって増産計画が進められており、サトウキビ栽培は農業において重要な役割を担っています。
沖縄・鹿児島は、土地環境がサトウキビ栽培の条件に非常に適しています。
サトウキビ栽培に必要な条件は、主に4つ。
気温(日光)、降水量(水やり)、地形(土壌)、そして風(乾燥)です。
栽培に適した4つの条件の詳細についてはこちらをご覧ください。
「サトウキビ栽培に適した畑の条件を教えてください」
何かと自然災害の多い沖縄や鹿児島にとって、サトウキビ栽培は土地に適した大切な産業の一つ。なくてはならないものなのです。
本州の産地「高知・徳島・香川」のサトウキビ栽培の特徴
沖縄と鹿児島でほぼ国内生産量の100%を占めているサトウキビですが、実は沖縄県と鹿児島県以外でも栽培している地域があります。
それは、四国の高知県・徳島県・香川県です。
香川県では、温暖で雨量が少ない気候を活かして「和三盆」の原料となる竹糖(竹蔗)が栽培されています。
和三盆は主に和菓子に使われることが多く、上品な甘さやその希少さから高級砂糖として流通しています。
栽培時期は沖縄や鹿児島と異なり、4月頃に植え付けをして12月に収穫を行っています。
香川県と並んで和三盆の名産地とされているのが、徳島県です。
主に、阿讃山脈の南側にある板野郡上板町でサトウキビが栽培されており、阿波の国=徳島で作られることから「阿波和三盆糖」と言われています。
板野郡上板町は山脈の南斜面という好日光条件と水はけのよい扇状地が特徴で、サトウキビ栽培に適しています。
高知県では、温暖で水はけのよい土壌を持つ安芸郡芸西村でサトウキビが作られており、それを加工した黒砂糖が特産となっています。
栽培時期は4月頃に植え付けをして12月に収穫をし、年末にかけて黒砂糖の加工を行うのが江戸時代から続く伝統となっています。
サトウキビの栽培方法や水管理、収穫についてはこちらをご覧ください
「サトウキビの栽培方法が知りたいです!育て方や注意点を教えて」
「サトウキビ栽培の適切な水やりの量とタイミングが知りたい」
「サトウキビの収穫時期と収穫方法を教えてください」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。