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現在、農家になろうと修行をしています。沖縄出身なので、独立したら地元に帰り、新たにサトウキビを栽培しようと考えています。
農業を学んでいる中で、作物の栽培には水やりの管理やタイミングの重要性に気づきました。
そこで、サトウキビの栽培では、水やりはどれくらい行えば良いのか教えていただけないでしょうか。
基本的なことですが、頻度や適切な量、タイミングを教えてもらえると助かります。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
サトウキビの成長が盛んな夏の時期にたっぷりの水を与えましょう
サトウキビの栽培に適した降水量
サトウキビは年間、約1200〜1500ミリの降水量を必要とします。特に成長期には大量の水を要することもあり、降水量の少ない地域では干ばつに備え、かんがい設備が必須です。
一方で、サトウキビは生育を止めるとき（成熟期）にショ糖が蓄積されるため、成熟期の要水量はそれほど多くありません。
気温と降水量だけを考えると、熱帯の雨季と乾季がある気候が、サトウキビの生育環境に適しているといえます。
サトウキビの栽培方法については、こちらの記事をご覧ください
「サトウキビの栽培方法を教えてください！」
サトウキビの適切な水やり（かんがい）
サトウキビ栽培には、春植え、夏植え、株出し栽培と3つの作型がありますが、どの作型においても7〜9月が水やりの重要な時期になります。
夏の暑くて降水量が少ない時期にしっかりと水やりをすることで、収量の増加にも繋がります。
また、沖縄であれば10月はまだ気温の高い日が続きます。雨が少ない場合は、しっかりと水やりをすることで更に収量が伸びるでしょう。
春植えと株出し栽培は、4月に著しく成長します。したがって、その後の5月に雨が少ないようであれば、ここでもしっかりと水やりをしましょう。
サトウキビの水やりの適量
ポイントは適量の水やりをすることですが、適量は土壌の状態や季節により異なります。
例として、乾いた畑の土が砂質の場合、適量は20ミリほどと少なくて問題ありませんが、粘土質の場合は40ミリほどの水量が必要です。
ただし、砂質の場合は、排水性が良いため乾きやすいです。
例えば、40ミリの水を10アール（1反）の畑にまくためには、40ミリ（0.04メートル）×1反（1,000㎡）＝40㎥（40トン）という計算になります。
また、真夏の晴天時には、砂質の土壌からは1日7ミリ程度の水分が蒸発すると言われています。
その場合、40ミリの水をまいたとしても、40ミリ÷7ミリ／日＝約5. 7日の計算から、晴天日が6日間続けば、畑はカラカラに乾燥した状態に戻ると考えられます。
そのため、乾燥する前に、また40ミリの水やりが必要になるのです。逆に、40ミリ以上の雨が集中して降り続けば、その後晴天が続いても6日間は水やりをしなくて良いと言えるでしょう。
サトウキビの水やり（かんがい）のポイント
収穫量を増やすために大切なのは、降水量が少ない時期にたっぷり水やりをすることです。
ただし、水やりのしすぎも畑の土の栄養が水によって、土壌に流される原因となります。まいた肥料が無駄になってしまうので、適度の水分量を心がけましょう。
また、無駄になった化学肥料は地下水を汚します。その汚水が海岸で湧き出し、沖縄ではサンゴの生育環境に悪影響を及ぼす可能性があるといわれているので、注意が必要です。
畑の土質と降水量から適切な水やりの量を計算して
健全なサトウキビを育てるために欠かせない、水やり。
生育期の7月から9月にたっぷりの水分量を要しますが、雨などの天候や、土の質によってもその土地に必要な分だけ水やりをすることが大切です。
また、適量以上の水やりは土壌栄養の流出と地下水の汚染に繋がります。汚水が流れる海で育つサンゴの生育環境に悪影響を及ぼす可能性もあることは、充分に留意しましょう。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。