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レモン栽培における追肥のやり方を知りたい

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レモン栽培における追肥のやり方を知りたい

広島県の山間地域で農業をしています。主に露地野菜を育てていますが、近くの観光農園さんが離農したので、農地を借りて果樹栽培も行っています。

果樹は育てたことがなかったのですが、うちの地域ではレモンの栽培が盛んで、うちでもやってみたいと思っていました。

まだ出荷できるほどの品質にはなっていないのですが、試行錯誤しながら育てていて、いまは自家消費している状況です。

しかし、ここ数年はあまりレモンが実らなくなってしまいました。

最初はあまり気にしていなかったのですが、そろそろ出荷できるだけの品質になるかなと期待していたので、少し気落ちしています。

肥料が原因だと思うのですが、追肥の仕方を間違えたのでしょうか。適切な追肥の方法を教えてください。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

レモン栽培には年に5回の施肥が必要です

レモンは肥料要求量が高い


柑橘の中晩柑類は、たくさんの肥料を必要とします。レモンも柑橘類の中晩柑類と同様に多くの肥料を必要とします。

しっかりと施肥を行いレモンの体力をつける


レモンが多くの肥料を必要とする理由は、一年に何度も花を咲かせる四季咲き性で、果実の着果が良い豊産性のためです。

レモンの樹には絶えず肥料を与えないと、どんどん栄養を消耗していきます。

栄養が少なくなってしまったレモンの樹は落葉しやすくなり、翌年の花付きや実付きが悪くなってしまいます。

そのため、年間を通して充分な肥料を与え続ける必要があります。肥料を与える時期と適切な量をしっかり把握しておきましょう。

土づくりの方法についてはこちらをご覧ください
レモンを栽培する時の土作りについて知りたい
レモンを栽培する際の肥料や施肥のタイミングについて詳しく教えて



肥料持ち(保肥性)がよい土壌に改良しておく


レモン栽培に適している温暖な地域は、同時に雨が多い気候でもあります。

また、レモン栽培が特に盛んな瀬戸内海地域は、段々畑とよばれる傾斜地の果樹畑も多いことから、肥料が雨で流出しやすい傾向にあります。

適切に追肥をしても、雨で流れてしまっては果樹が栄養を吸収できません。そこで、傾斜地では、稲わらなどの粗大有機物でマルチをして肥料成分や土壌流亡の抑制に努めましょう。

また、冬場には腐葉土や牛ふん堆肥などの有機物を投入して腐植含量を増やし、肥料持ちがよい(保肥性が高い)土壌に改良しましょう


施肥の年間スケジュール


レモンは肥料切れを起こさないよう、年5回は追肥をするようにしましょう。

追肥を与える時期は、3月、5月、7月、9月、11月頃が目安になります。


3月

5月

7月

9月

10~11月

肥料のタイプ

緩効性

緩効性

緩効性

緩効性

即効性

施肥量

2割

2割

2割

2割

2割


春肥(3月頃)


レモンが生育(発芽)を開始する少し前に与える肥料です。油かすなどの有機質肥料か、ゆっくりと効果の続く緩効性の化成肥料を与えます。

これから芽が動き出しますので、肥料を与えて充実した新梢にしてくれます。


夏肥1(5月頃)


春肥が減る一方、枝や葉が盛んに伸びていく時期です。また、開花して果実も肥大を始めていきますので、肥料を必要とします。

2ヶ月ほど効果の続く緩効性の化成肥料を与えます。量は、年間施肥量の2割くらいが目安です。


夏肥2(7月頃)


1回目の夏肥の効果が落ちてくるとともに、実がどんどん大きくなる(肥大していく)時期です。

2回目の夏肥は、実を育てるための追肥で、「実肥」とも呼ばれます。

2ヶ月ほど効果が続く緩効性の化成肥料を、年間施肥量の2割くらいの量を与えましょう。


秋肥(9月頃)


秋肥は、夏肥に引き続き実を育てるための追肥です。緩効性の化成肥料を、年間施肥量の2割くらい与えます。


お礼肥(11月頃)


11月になるとほとんどの果実は収穫を終えた頃になってきます。お礼肥は、実を育てて疲れたレモンの体力を回復させるために与えます。

実を育てるのは、樹にとってはとても疲れることです。できるだけ早く消耗した体力を戻すため、即効性がある化成肥料を与えます。量は年間施肥量の2割くらいです。

なお、樹の大きさなどによって、11月に入ってもまだ実がついていることがあります。

実を慌てて取る必要はありませんが、お礼肥として必ず11月中に肥料を与えるようにしましょう。寒くなってくると肥料の吸収が悪くなります。


肥料のやりすぎには注意


レモンは絶えず肥料を与え続けなければなりませんが、肥料のやりすぎには注意が必要です。

一度にたくさんの肥料を与えてしまうと、土中の肥料濃度が高くなりすぎ、根を傷めます。

肥料のやりすぎにより肥料やけがひどい場合には、枯れてしまうこともあるので注意しましょう。

適切な追肥の量とは


上記で、1年間のレモンへの施肥割合を紹介しました。

結果樹(レモンがなっている樹)であれば、10a当たり年間窒素成分で40kgを目安にしています。例えば、窒素10%を含んでいる肥料(20kg入)であれば、10a当たり20袋施用する必要があります。

それを年間5回に分施するので1回あたり、4袋ずつとなります。

一方、未結果樹(まだレモンがなっていない樹)であれば、肥料はもっと少なくしなければいけません。

例えば、苗木を植えた1年目では、1本あたり窒素成分で100g程度の肥料となりますし、窒素10%を含んでいる肥料であれば年間500g施肥することになります。

なお、肥料によって成分の比率が異なるため、皆さんが使用される肥料の成分を確認してください。

肥料が少なすぎたり多すぎたりしないか、木や葉の様子をこまめに観察するようにしましょう。


肥料やけを防ぐために


根に肥料が直接当たると、肥料焼けが起きやすくなります。

幹から近いところに肥料を施すのは避けましょう。肥料は株の周囲をぐるっと囲むように、一番外側の葉に合わせてやりましょう。

根が広がっている大きさは、枝が広がっている大きさ(枝の先端)とほぼ同じです。

肥料は根の先端から吸収されるため、枝が広がっている範囲にまくと効率よく吸収します。

肥料やけが起きてしまったら肥料やけが疑われる場合の対処法として、

1、水をたくさん与えて、肥料を流し出して濃度を薄める
2、植え替えの時期ならば、新しい土でやり直す

という方法があります。

植え替えの時期でない場合、できるだけ土の表面の肥料を取り除いてから、水を沢山与えるようにしましょう。

木の状態がよくなるまで、同じことを繰り返し肥料を流します。


レモン栽培では肥料を絶やさないようにしよう


レモン栽培は肥料切れを起こさないよう、年に5回適切な量の施肥を行いましょう。

また、肥料やけが起きてしまっても慌てずに対処することが大切です。

追肥以外の栽培方法についてはこちらをご覧ください
レモンの栽培方法について教えてほしい

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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