いまはブリ養殖をしていますが、たまにニュースで取り上げられるマグロ養殖が気になっています。
設備投資などもあるので、ひとりで始められるわけではありませんが、漁師仲間たちとうちの漁協でも行えないかと話し合っているところです。
しかし、マグロ養殖は海面養殖だと思うので、うちの海域が適しているのかわかりません。
近くにマグロを養殖している漁師はいませんが、本来はどのような海域で行うべきなのでしょうか?
いまはブリ養殖をしていますが、たまにニュースで取り上げられるマグロ養殖が気になっています。
設備投資などもあるので、ひとりで始められるわけではありませんが、漁師仲間たちとうちの漁協でも行えないかと話し合っているところです。
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中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
マグロ養殖は、気候条件が整い、種苗の確保やエサとなる小魚が豊富に獲れる環境が望ましいです
マグロ養殖に適した環境とは?
クロマグロ(マグロ)を養殖する上で重要になる環境は、主に「漁場環境」「種苗が確保できる環境」「エサが確保できる環境」の3つです。
また、高速道路が整備され、空港が存在するなど、インフラが整備されている地域であることもマグロ養殖を行う環境として重要なポイントです。
このように、マグロ養殖の環境には、漁場の自然環境、種苗やエサの確保、そしてインフラの整備などが複合的に作用していることが求められます。
マグロ養殖に適した漁場環境
マグロの養殖漁場は主に西日本に存在しています。それは、マグロ養殖には10度以上と比較的高い海水温が必要だからです。
安定した飼育のためには最低水温が13度以上が好ましいともいわれます。
水深は30~50メートルくらいで、北西の季節風を受けず、波の高さが5メートル以下と比較的穏やかな海域が望まれます。
また、海中に含まれる酸素が豊富で、大きな河川からの流入がなく、塩分濃度の安定した外洋に面した海域が望まれます。
養殖マグロに適している場所の条件についてはこちらもご覧ください
「マグロの養殖に適している場所とは?条件を教えてください」
種苗が確保できる環境
マグロ養殖は、一般的に天然の稚魚であるヨコワを漁獲して育てます。そのため、マグロの稚魚であるヨコワが安定的に漁獲できる海域が養殖に適しています。
種苗となるヨコワ漁に特化し、生けすに移すまで中間飼育している漁師もいます。
しかし、マグロ養殖は天然の種苗に依存しているため、乱獲の影響で、資源量の低下が危惧されています。
天然の種苗に依存することなく、安定的にマグロ養殖を持続していくには、「人工種苗」を活用することが求められています。
人工種苗の可能性についてはこちらをご覧ください
「マグロ養殖の稚魚を人工種苗にできますか?」
エサが確保できる環境
マグロ養殖では、主にコウナゴやイワシ、サバといった小魚を生エサとして使用しています。配合飼料を与える漁師もいますが、生エサを与えることが一般的です。
しかしながら、マグロは餌料効率が悪い、その他の養殖魚と比較すると、2倍から3倍ほどのエサを必要とします。例えば40キロ増やすためには、600キロのエサが必要です。
そのため、マグロ養殖では、エサとなるイワシやサバといった小魚が豊富に獲れる場所が適しています。
配合飼料についてはこちらをご覧ください
「マグロ養殖でエサに配合飼料を与えることは可能ですか?」
マグロ養殖に適した環境
最低水温が13度以上
30~50メートルくらい
北西の季節風を受けず、波の高さが5メートル以下と比較的穏やかな海域
種苗の確保
ヨコワが安定的に漁獲できる海域
生餌の確保
エサとなるイワシやサバといった小魚が豊富に獲れる場所
インフラ
高速道路が整備され、空港が存在するなど、インフラが整備されている地域
このお悩みの監修者
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。