和歌山県串本町で行われているマグロ養殖について教えてください

YUIME Japan編集部 / 2023.12.06

漁港

#マグロ #養殖 #和歌山県 #マーケティング

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九州で養殖業に携わっている漁師です。

和歌山県の串本町はマグロ養殖で大変有名ですが、実際にどのようなマグロ養殖が行われているのでしょうか？

マグロは世界的に人気が高い魚なので、条件が揃えばうちの地元でも養殖できるようになるのではないかと考えています。

今後の可能性を考えて、いま日本ではどんなマグロ養殖が行われているのか知っておきたいので、まずは串本町でどのようなマグロ養殖が行われているのか、教えていただけないでしょうか。

中平博史

全国海水養魚協会専務理事

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串本町は世界で初めてマグロの完全養殖に成功した地域です

串本町の環境

和歌山県串本町は本州最南端に位置し、冬でも水温が14度までしか下がらず、夏は高くても27度程度と、安定した水温であることが特徴です。

黒潮の影響を強く受けるため、本州では唯一「亜熱帯地域」に分布されるほど温かく、世界最北の珊瑚礁の海が広がっています。

串本町の漁業を管轄する和歌山東漁業協同組合は14漁港を有しており、古くから漁業が盛んな地域でしたが、クロマグロの養殖によって、さらに有名な地域となりました。

串本町のマグロ養殖の歴史

串本町がクロマグロの養殖で有名になったのは、平成14年（2002年）に串本町大島にある近畿大学水産研究所の実験場で、世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功したためです。

しかし、クロマグロの完全養殖が実現するまでには、32年もの年月がかかりました。

それまでのマグロ養殖は、天然の稚魚（卵からふ化したばかりの魚）を捕獲し、飼育していましたが、完全養殖は卵から人工ふ化した仔魚を稚魚、若魚、親魚に育て、その親魚から産卵させて、再び親魚を育てます。

このように、すべての工程を人工で行えるようになったことで、天然マグロを捕獲することなく、クロマグロを生産できるようになりました。

完全養殖の成功までには、人工ふ化した稚魚が大量に死んだり、産卵のない時期が続くなど多くの課題がありましたが、飼育環境を試行錯誤することで、完全養殖に成功しました。

また、串本町では近畿大学水産研究所以外にも、水産会社などによってクロマグロの養殖が行われており、和歌山県で唯一、マグロの養殖場を保有しています。

串本町のマグロ養殖の特徴

串本町の養殖マグロは、直径30メートルの生けすで、のびのびと育てられています。

天然のマグロは、時期によって脂が乗っていないことや、泳ぎ続けて育ったため身が引き締まり、トロの部分よりも赤身が多くなることがあります。

しかし、完全養殖で育てられた串本町のマグロは、1歳の頃はアジ、2歳になるとサバと、成長度合いによってエサの種類を変えることで品質を安定させ、天然のクロマグロに比べてトロ部分が多いことが特徴です。

また、串本町の養殖マグロは、飼育時だけでなく水揚げする際も工夫されています。

マグロは水揚げされる際に暴れて興奮すると、体温や乳酸値が上昇します。すると、身が焼けて色がくすんでしまい、見た目や味の質も落ちてしまうのです。

そのため、串本町では電気ショックを与えて即殺し、水揚げを行います。そのまま船上で神経抜き、血抜き、内臓除去などを3分以内に行い、氷水で冷やすことで、鮮度を保ったまま出荷しています。

マグロの養殖体験

串本町では、観光客向けにマグロの養殖体験を提供しています。

漁師から港でレクチャーを受け、実際に船に乗って養殖生けすに行き、マグロにエサやりをしたり、漁具の手入れをするなど、漁師の仕事を体験します。

そして、漁師からクロマグロの完全養殖の難しさやその歴史について話を聞き、最後に、養殖マグロを試食することができます。

こういった観光事業と漁業を組み合わせることで、地域活性化に貢献し、「串本マグロ」の名前をさらに広めています。

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